第二章 64 イットリウムワールドの片隅で
誤字脱字あるかもしれません。
『俺はオールディを殺す。ピーク、ティディ、ムーンディーズもな。お前は協力する気はァ…ねェか』
『正気かよ?ジョニー…そいつぁヤバいぜ。お前オールディを殺せるとでも思ってんのかよ?あいつには銃も物理攻撃も通じねえんだぜ?』
『やれるだけの事はやるつもりだ。まァ…汚泥塗れの心臓も自然の輪に還してやらねェとな。』
『どこ行くんだよ!ノルマまだだろ!?』
『言ってんだろ?殺しに行くんだよ、マイ・オールディを。』
『…マジかよ』
オールディはレコーダーを再生して音声を耳元で流した。オールディは無表情のままその会話を聞き終えるとレコーダーをポケットにしまい、軽くため息を吐いた。そして再び監禁部屋の扉を開いて隙間から顔を出す。
「ディーズ、ちょっといいか」
「…?どうした?」
オールディはディーズを呼び出すと先程の音声を流した。
「…まあ…いずれ裏切るとは思っていたが…」
「どうすんだ、殺すのか?丁度いい、あいつの甘さには反吐が出るからな」
「悪いが殺さない。亜人達と共に監禁しておく。俺が相手するからそれまでは何も知らないふりをしておけよ。」
オールディはレコーダーをディーズに渡してこの場を去ろうとする。
「…おい、大丈夫かよ?」
「…何がだ?」
「お前の体調だよ。今日の昼からずっと気分悪そうだろ」
「…ああ。気にするな、少し昔を思い出していただけだ。」
「…あまり思いつめるなよ」
「…ああ。俺はホールにいるから…ジョニーが来たら伝えてくれ。」
オールディは誰もいないホールに入り、ステージ前の椅子に座る。そして携帯電話を取り出して耳元に当てる。
「…ニュート、僕だ。……ああ、元気にしてるよ。…ああ。……なあ明後日予定がないなら久しぶりに会わないか?…ああ。…もちろん他の3人にもこれから電話するよ。…うん、暫く会えなくなるからさ。…いや、ふとお前らの事を思い出してさ。…ああ。…ありがとう、じゃあまた電話する。」
オールディは電源を切るとポケットに携帯電話をしまう。通話を終えると目線はステージに向けたまま深く背にもたれかかる。体の力が抜けていき少しだけ漠然とした不安が取り除かれたような気がする。
『うん、僕は戦うよ。旧世界の人達が死に物狂いで続けてきた世界の生の為にね』
今日は、なんだか走馬灯のように思い出が蘇る。地獄のような思い出も、幸福だった仲間たちとの時間も心酔していたルザ先生との思い出も。おもいに耽るのは悪いことなんかじゃない。けれどオールディにはこの回想が生との決別のように思えて不吉でしかなかった。そして今の自分を否定されている気分で心地よくない。
深くため息を吐くと同時にホールの大扉が開く音が寂寞としたこの空間に心情の震えとして伝わってくる。
「オールディ…!」
ホールに入ってきてそうそう大男は男の名前を呼ぶ。どんな感情が主なのだろう、憎悪に塗れているようで悲しみや恐れ、そして問いかけるような混沌に包まれた言葉が響く。
『なんだねジョニー何か大事な用事でもあるのかな』なんて言葉ではぐらかして偽善に溢れたコイツをからかってやろうとも考えた。でもそんな気分にもなれずゆっくりと椅子から立ち上がった。そしてゆっくりと客席の奥に立つジョニーを見つめ、単刀直入に話をする。
「亜人を助けてお前になんの得がある?」
オールディは純粋に問いかけた。だがジョニーは荒々しく言葉を吐き散らす。
「お前は損得で人の命を弄ぶのか!!」と。
オールディはジョニーとあの犬の姿が重なって見えた。だからあの時問いたかった質問を代わりにジョニーにした。だが、粗方予想のつく模範解答を返され心に響くことはなかった。答えなんてわかり切っていたはずなのに何処か何か違うんじゃないかと期待していた部分はあった。だが結局のところそんなものなどなかったのだ。
「率直な質問に変えようか、ジョニー。全世界全ての生物の命とたかが少数の亜人の命と天秤に掛けてどちら側に傾くと思う?」
「誰かが幸せになる為に誰かが不幸になるんじゃァ本末転倒だろうが!!」
再び荒く乱暴な言葉で怒鳴りつける。そんな声量と言葉とは裏腹に手は声は震えていた。かつての僕と同じように死を恐れている。ジョニーはそうやって自らを奮い立たせることによってようやく立てている。もし、僕にジョニーのような勇気を持っていたなら僕は賊に立ち向かい、両親の運命を変えることが出来たのだろうか。
「ジョニー…僕はお前ともっと違う形で出会いたかったよ。」
オールディはそう呟く。そして呟いた後、銃を取り出して覚悟を決めた。
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「…あれー?アース?ここで何してるのー?」
屋敷へ向かっている途中で後ろから声を掛けられた。振り向くと私服に着替えたミーナが立っていた。
「友人を見送っていたんだよ。今から帰るとこさ。もう業務は終わったのか?」
「うん、ゲルが気を利かせてくれて早めに終えれたんだよー」
「それはよかった。どうせなら全員そろった状態で作戦会議をしたかったからな。」
「そ!じゃあ必ず成功する為に準備を整えなきゃねー!」
足取りが軽く、ミーナは走って屋敷へと向かっていった。アースもその姿を目で追いながら小走りで屋敷へと向かった。




