第二章 61 チール・スレア
短いですが誤字脱字はあるかもしれません
「ごめんなさいね、ホントならウィーズに先に風呂に入って疲れを癒してもらおうと思ったんだけど…」
「大丈夫大丈夫。僕よりあのミラさんの方がつかれているように見えたし、僕は先にギレオさんに挨拶を済ませておきたいから…さ」
「……ごめん、俺も少し外の空気吸ってくるよ」
「うん、あまり気を詰めないで、僕も最善を尽くすからさ」
「ありがとう」
アースはそう言って部屋を出る。そして部屋から少し離れたところの窓を開けて風に当たる。その風の音のほかに別の呼吸音が聞こえたアースは横目で後方を確認する。そこには見たこともない銀髪の男が立っていた。男はアースが何かアクションを起こす前に喋る。
「俺はステンレスだ、約束を破ってしまったことは謝る。ステラがあそこにいるとは思わなくて行けなかったんだ。」
「…そういえば事務所に来いと言っていたな。いや、いい。俺も俺で想定外の事態が起きていたんでな。」
「…想定外?」
「どちらにせよお前になど関係のない話だ。事態はいい方向へ進んでいる。…なあ、祖の神ってのは姿を自由に変えられるのか」
「お前に言われた通り俺たちは人間という理にはまっていないからな。ただこう性別姿形変化出来るのに加えちょっとした特殊能力と不老が加わった程度で殺されれば死を迎える。人間の亜種だと思ってくれ」
アースはそれを聞いて頭を少し掻いて窓を閉める。
「話を戻すが、ボルボロスとお前が戦って勝てるか?」
ステンレスは二つ返事で「不可能だ」と断言する。
「なんでさ」
「理由はシンプルだ。ボルボロスは強い。異様な身体能力を持つ上になんでもかんでも溶かしてしまうあの厄介な能力は俺と相性が最悪だ。それにあいつは絶対に勝てない戦いは行わない。そして一人では襲いに来ない。貶す様に言えば臆病なんて言葉で片づけられるが途轍もなく厄介な存在だ。」
「なんでも溶かす?奴の攻撃を避けながら本体に攻撃を与えればいいだろ。…ああ、身体能力が異常だから接近戦でも苦戦するのか」
「問題はそこじゃない、攻撃を当てたとしても殴りヒットした拳はぬるぬると液状化して大地に還る」
「じゃあ尚更間接的にダメージを継続させて当てる連鎖爆発、感染爆破系統の能力は相性が抜群じゃないのかよ?」
「祖の神というのは何かを愛することで能力を得る。ボルボロスは異様なまでに母なる大地を愛し、愛しく想い、それで得た能力だ。愛する想いが強ければ強いほど能力は高まり、奴自身も大地を愛した恩恵が大地の能力だと思っている。全祖の神でトップクラスに能力数が多い!事実俺はあいつに感染爆破を食らわせた事があるんだが、奴の周りの大地が爆発よりも早くボルボロスを護るように盛り上がり、包み込んだんだ。…あいつは能力が未知数な上にかなり厄介な戦術と行動を取る。」
「ボルボロスがかなり厄介な存在ってことが理解できたよ。」
「お前、まさかボルボロスと真っ向勝負する気じゃないだろうな…?」
「俺が考える元々の作戦ではそのつもりだった。だが察する通り俺はボルボロスに関しての情報は全くない、未知数だ。だからこそ情報を手に入れ対策を練るつもりではあったが…お前の話を聞く限り英雄が戦った所で負け試合なんだろ?」
「…悪いがそれはわからない。俺が知り得るボルボロスの情報はこの位だ…その情報を抱いて戦ってもらうにしても相性の問題もある…少なくとも俺が相性悪いのは何となくわかるだろ?」
「お前が接近戦を苦手とするし、協力して戦うのに無差別に襲う爆発は向かない。今回の戦いでお前が活躍する場面はほとんどない。逃げる時に攪乱として使う位かな。お前も交えて後で作戦会議をするが…最悪の場合……国家レベルの特大お引越しになるか、中央王都に吸収されるかだな。死ぬよりはましだが…手は尽くすつもりだ。まあもっとも、お前にとって大事なのはステラの安否だけでこの国の事なぞどうでも良いのだろうがな」
「そんなことは…」
廊下で二人が会話を続けていると小さかった声が徐々に大きくなっていたみたいでウィーズがそれに気づいて廊下に顔を出した。
「…?アース、その人がギレオさん?」
そう問うウィーズに二人は小声で会話する。
『…お前をどう紹介する?事務所で会っていないから新たな仲間としての設定は無理があるぞ。』
『…ふつうにチール・スレアと紹介してくれ。たまたま妹の顔を見に来た兄とすれば大丈夫だろう。』
「この人はチール・スレアさんだ。さっきいたメイドのお兄さんです。彼も戦力として今回の戦いに参加します。」
「チールさん、よろしくお願いします。」
「よろしくお願いします。無事作戦が遂行できるように頑張ります。」
「ささ、廊下で立ち話もなんですから行きましょうか?チール。」
「……そうしようかなアース」




