第二章 60 タイムトラベラー
誤字脱字あるかも
丁寧に、深々と、メーリアさんはお辞儀をして挨拶をする。そして優しい口調で二人を案内する。
…もう、何度も見慣れた景色になってしまった。幾度も挑戦し、何度も作戦を練り、あらゆる方法を試行錯誤して身を削ってある男の正義の幻影を追いかけ、生存ルートを模索した。それでも結果はこの様だ。予見した未来はこんなものじゃない、こうじゃあなかった。
交差する感情線の矛先は朧で、俺たちはあらゆる『セイ』に振り回されて生きて、それでも生きている。
「ギレオ様はいま不在ですので此方でお待ちください」
メーリアは扉を開き、部屋の中へと案内する。そこには先に来ていたミラがソファーに座っていた。初対面であるウィーズは軽く会釈して挨拶する。ステラが居ない事に気付いたアースは部屋を出るメーリアに声をかけた。
「すみません、ステラは今、何処にいます?」
「只今着替え中でもう少々したら…」
メーリアがそう言い掛けた所でメイド服に着替えたステラは「そんなに私に会いたかったの?」と言い、部屋に入る。メーリアはその様子を見て微笑み軽く会釈して部屋を去った。
「色々話したいことはあるけど、この人が今回の作戦に協力してくれるウィーズさんです。」
「正式な英雄ではない“名誉”ですが、よろしくお願いします」
「あ、よろしくお願いします」
「此方こそお忙しいところ本当にありがとうございます。御足労…」
「ああ、そんな畏まらなくてもいいですよ。僕、かたい空気が苦手なので…」
ミラにいたっては二度も挨拶しているけどな。ひとまず前日にやりたいことはあるが、後回しにしてきた疑問をステラにぶつけねばな。
「ステラ、ちょっといいかな」
「はい」
アースはステラと共に部屋の外に出る。
「ステラに聞きたいことがあるんだ。俺と初めて会った2回前の人生の事なんだが…そん時の話じゃあ『ステラにはこの厄介事について伝えていない』って言ってたくせにお前がミラの行方を捜す際に屋敷に来ただろう?でもお前はその厄介事について知ってたよな?なんでだ?」
「…もしかして今、それを聞きたいの?」
「まあ、他にもいろいろあるけど、まずはそれ」
「考えれば分かると思うけれど、私はそもそも兄やミラに会う為にアラドールに居たの。この殺害予告を出される前に私は休暇を貰っていた。そんな私に考慮してくれてその厄介事について伏せていてくれたのね。ところがミラと連絡が取れなくなり、亜人拉致の事件が最近はパーライドで起きていたからパーライドで探すことにしたの。その時に屋敷に連絡して、その厄介事について初めて知ったのよ。だからアースの言う「伝えていない」の言葉に嘘はないわ。それで、他には?」
「エリーって言う名前の金髪の少女に会わなかったか?」
「…ええ、会ったわよ」
「じゃあその子から俺の時間遡行の事を聞いたわけだな?」
「…ごめんなさい」
「いや、それが知れただけでよかった。ステラの行動に何か文句を言うつもりはない。まぁお陰で謎が解けたよ。部屋に戻って今日行うべきことを話そう。時間は有限だからな」
「…そうね。1日早いとは言えやれるだけのことはやっておきましょ。」
二人は部屋に戻り、ソファーに座る。
「…さて、ギレオさんが来たら作戦の話をしようと考えているのですが…ただ待っていては今日を無駄にしてしまうかもしれないので今話します。」
「敵はボルボロスら3人ってだけじゃあないんだろう?戦闘員は3人だとしてもその他の戦闘を行わない仲間たちは…」
「いいえ、その3人です。内二人のリアナとオーファンはこっちから罠に嵌めて捕縛する。さっきも言った通りウィーズやミーナには全力でボルボロスを相手してもらいます。伝え抜けていた部分がありましたが他の問題には亜人拉致を行う犯罪組織も加えてあります」
「え!?それってアラドールで活動していた犯罪組織と同じ?」
「多分そうです。個人的にメインで進めている方が亜人拉致を行う犯罪組織の壊滅です。ウィーズは俺がなんの利も得ず正義の名の元に動く人間だと思っているなら失望させてしまうけど、このメインの問題を片づけるのに圧倒的に人が足りない。何十人いる亜人を救出するのは数人ちょっとじゃあ厳しい。だからこそ屋敷陣と提携してボルボロスの対処に協力する代わりに救出作戦にも手を回してもらう。ってのが俺のおおよその目的です。」
「えっ…!?なるほど…」
「え…?」
「そうだったんですね…」
ウィーズは驚きつつも納得し、ステラは一回目からの人生を知っているだけに突然の犯罪組織メインに驚き、ミラはそういう理由でアラドールで迷子になったり東の王都でも偶然いたその解が分かったと納得した。
「まぁ…まだ交渉していませんが、巡回してる騎士数名で保護をする。そして同時に内部にいる敵の数は不明だが殲滅作戦も実施する。内部には一人腕利きのスパイと協力して行う、だが、相手は殆どが能力持ちだ。だから対能力戦で激戦とはなるだろうが戦闘区域がオークション会場内部で終わせるように努力する。」
「ああ、じゃあつまり能力持ちのボルボロスも派手な戦いになるわけだね」
「そう。その上出現場所が何処からか不明なんだ。他二名もそれは不明。まあ他二名に関しては確実に誘き出せる方法があるからさほど問題ではない。問題はボルボロス。他二名を捕縛した後すぐに奴は動き出す。」
「最悪の場合、王都ごと壊滅させるとかあったのかい?未来ではさ」
「ドンパチはやってたね。どちらにせよ出現場所は不明だから、見張る必要がある。比較的高い建物の屋根に乗る感じかな。だから明日に避難準備を計画する。バレないよう今日はそれについては何にもしない。あらかじめ不穏な空気を醸し出して、いざというときに備えさせて、何かが起こっても行動し、情報が信用されるように工作するくらいか?」
「まあそれはいいけどさ、ボルボロスの出現場所も時間がわからないなら警戒のしようもないじゃないか」
「ウィーズさん、多分他二人がやられたと知ったらすぐに襲いに来ると思います。」
「ああ、そういえば言ってた」
「まあそれでも分かるが俺には祖の神探知機機能もあるからな。ボルボロスの反応が近くまで来たら何か合図を出すって作戦も練り込んどくよ」
「…多機能便利ロボットだねアース」
「どうもありがとう、精密機械だから綿密に作戦立てて失敗しないようにな。保証書はついてねーから」
「まあやるべきことはわかったよ、ボルボロスの手下の捕縛作戦も明日するとして…今日はどうするアース?」
「…さっきの工作はギレオさんが戻って王都内の騎士が動かせるようになってからだ。今はまず、飯と風呂済まそうぜ。Xデー二日前から緊張してたって意味ないからな。さて、どうする?女性陣から入るかい?」
「あなた烏滸がましいわよ?確かに何度も過ごして慣れた屋敷とはいえ…今回はまだ来て数十分だからね?」
「じゃあこれを俺の報酬にしといてくれ」
アースがそう言い立ち上がるとステラは待ったをかける。
「お先にどうぞなんて言ってないわ。未来でご飯奢ったんだから先に頂戴するわ」
ステラはミラを連れて部屋を出る。連れられながらミラは小声で「お先に頂きます…」と呟く。
お前は屋敷のメイドだし、お前は俺を殺す事命令してるし、と色々言いたいこともあったが精神的に疲弊していそうなミラやそんな未来を過ごした好みとしてステラに譲ることにした。




