第二章 58 悉くの幣
ほぼ会話。誤字脱字はあるかもしれません。
ミーナの言った通りに地図を見ながら時計塔を目指した。確かに時計塔の前にかなり目立つ冒険者ギルドらしきものがある。中へ入ってみるとそれらしき格好をした人たちが溢れかえっていた。ある者は丸いテーブルを数人で囲み、食事をしながら大声で会話を続け、ある者は貼りだされた掲示板と睨めっこをし、俺と同じ感じに誰かを待ってベンチで座りながら本を読む者もいる。
冒険者ギルドと聞いて粗方の状態は想定していたがまさかここまで広い吹き抜けの建物でそれを埋め尽くすほどの人と声をかき消されそうな雑多声量が飛び交うとは思ってもなかった。こんなことならウィーズの特徴でも聞いておけばよかった。でもミーナもきっとウィーズに俺の特徴を伝えてくれているだろう。
入り口で棒立ちしていると一人、薄緑色の髪をした167cmくらいの小柄な好青年がアースに気付き、本を閉じて近づいてくる。そして本を台にして紙に「あなたがアース?」と書く。アースは咄嗟に吃りつつ「はいそうです」と伝える。だがすぐに自分の声が他の声に掻き消されていることを理解すると2度ほど頷く。ウィーズはアース本人であることを確認するとアースを手招く。2人はギルドの端を歩き続け、個室へ入る。
アースとウィーズは椅子に座り、アースから呼び出しの訳を説明し始める。
「老人会の者からあなたの事を聞きました。英雄と呼ばれているそうですね」
「名誉ですけどね。それに敬語じゃなくていいですよ!堅っ苦しいの苦手なんです僕。」
「分かった、ウィーズ…君」
「呼び捨てでいいですよ!」
「…単刀直入に話すと明日の深夜パーライドを襲いに来るボルボロスを討伐してくれないかという依頼です。アラドール内で暗黒龍を討伐しようとしている事自体は知っています。此方に協力してくれる希望は薄かれど、それでも協力をお願いし…」
ウィーズはアースの言葉を遮って「はい」と了承する。
「まあ僕が英雄だからってのもあるし暗黒龍討伐の声はかかってましたよ。まあ僕は断ったけどね。僕の師も治安維持のために参加する気なかったみたいだし。まあ別に僕らが行こうか行かまいが警備巡回共に通常時より強化するつもりではあったし…」
「それでは東の王都に力を貸してくれると…?」
「はい」
「ええ?そんなあっさりいいんですか!?いや…凄くありがたいんですけど」
「僕自身、ボルボロスに因縁もありますし…それにミーナさんは僕の師の妹さんなんですよ。僕としては困ってる人を放っては置けないから無関係でも了承してましたけど。まあでかい口叩いてますけど、別に僕滅茶苦茶強い訳でもないからなあ」
「ありがとうございます…本当に助かる…!」
アースは深々と頭を下げる。ウィーズは「やめてくださいよ!」と謙遜する。
「早速ですが事態の詳細を聞いてもいいです?」
「はい、先程も言った通り、ボルボロス他2名が東の王都を襲いに来ます。目的は恐らく力玉というものでしょう」
「力玉とは?」
「詳しいことは分かりませんがボルボロスはそれを奪う為に王都を壊滅させるつもりで来ています。実際俺自身ボルボロスと戦ったことがないので奴の力は未知数ですが俺やミーナ、東の王都の最高戦力をもってしてでも適わない相手だと考えてます。事実この他たった二人に屋敷陣は圧倒されました。戦場をこの目で見たわけではないのですがその二人は能力者である上に実力も確かです。」
「…もう既にその他二人とは戦った…ってことですか?」
「話がややこしくなるのですが、俺は短期間限定ですが時間遡行の能力を持っているんですよ。それで惨劇を経験してるのである程度の未来の事情は把握できています。」
「えっな、なるほど?…僕は東の王都でボルボロスとその他二人を相手すればいいんですね?」
「詳しい作戦の詳細は東の王都で話しますが、ウィーズにはボルボロスの相手に専念してほしいと思ってます。他の二人については誘き出す方法も捕まえる方法も確立してあるので」
「はい、わかりました。早速東の王都へ向かうんですか?」
「そうしたいんですが…ウィーズの知り合いでほかに東の王都に加勢してくれる人とかはいないですかね?」
「ごめんなさい…それに関しては力になれそうには…ない」
「ああいえ、問題ないです。数は多ければ多いほどって考えてただけなので。あなたが来てくれるだけで十分。…あ、中央王都って傭兵とかいるんですよね?雇えないですかね」
「…アラドールで傭兵を雇い何かに使う分には問題ないとは思います。でも…アースは知らないと思うけど東の王都含め他4王都はアラドールを裏切った形で離れていった者達だからさ。」
「…あぁ。でも傭兵なんてそんな事情気にせず金で動く奴等じゃないの」
「…たかが傭兵されど傭兵。金の為に動く連中だとしても老人会の息がかかっているのは明確だと思う。老人会ってのはさ、言うならアラドールの為に命を削って命を捧げてアラドールの命運と寄り添い、共に戦ってきたアラドール至上主義者達だからね、口を開けば他王都に対して呪いの言葉ばかり吐いているよ」
「…なるほど。…まあ傭兵を雇うことが賢明な判断ではないと理解もしたし…いきますか、パーライド。」
「はい!全力で頑張ります!」
二人はその場で握手をして個室から出た。
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「何処にいってたんだジョニー。」
「ハープ、わりィ…俺と同じ位の亜人らしきバケモン捕まえようと思ったんだがァ…人間じゃァなくてよ。」
ハープはポケットに手を突っ込みながらノロノロ歩くジョニーに苛ついた声色でそう話す。ジョニーはため息を吐きながら言い訳をした。
「ったく。ノイローゼになりそうだぜ。いつまでこんな事しなきゃならねえんだ。特にティディ…!クソムカつくぜ!雑魚の癖に粋がりやがってよ!」
「癇癪起こすんじゃねェよ。どのみち亜人拉致の強制労働も今日で終わりだからなァ」
「は?」
「俺はオールディを殺す。ピーク、ティディ、ムーンディーズもな。お前は協力する気はァ…ねェか」
「正気かよ?ジョニー…そいつぁヤバいぜ。お前オールディを殺せるとでも思ってんのかよ?あいつには銃も物理攻撃も通じねえんだぜ?」
「やれるだけの事はやるつもりだ。まァ…汚泥塗れの心臓も自然の輪に還してやらねェとな。」
そう言ってジョニーは歩き出す。
「どこ行くんだよ!ノルマまだだろ!?」
「言ってんだろ?殺しに行くんだよ、マイ・オールディを。」
「…マジかよ」
次回はステラ達視点にするかアース視点にするかジョニー視点にするか気分次第で決めます。




