第二章 50 yの世界にさようなら
他の作業する前に足早に書いたので心なしか急ぎでストーリーが進んでる気がします。
誤字脱字は多分ないです!あと微グロ注意。
あまりの静けさに嫌な予感はしていた。いざ会場内に入ってみると誰も反応すらしない。亜人達が捕らえられていた監禁部屋を覗く前からもう既にここがもぬけの殻だったことを知っている。とっくに抜け出して去ったのだろう。
何故オールディは以前とは違う行動をしているのか。簡単な話だ。ジョニーが暴れなかったから。暴れなかったことによってスケジュール通りに物語は進む。俺と言う異物がいなかったはずの正しい未来が今、描かれている…。
それも違う。
本来の物語通りであればジョニーは暴れるのだ。戦犯はこの俺で、俺は助けに行くことを約束し、正義に拳を振るうはずだったジョニーの行動を遮った。最善に向かって走っていた道を、いつの間にか最悪な形にしてしまった。
ステラが生きていたのならば俺になんて言うのだろうか。ミラを追いかける為の新たなる経路を考え未来へと突き進んでいくのだろうか。多分そうはしない。ステラは勝てないことを理解しつつ俺を殺す。殺せないことを何処かで察していながらも殺しに来る。
それが多分彼女の正しい行動。だってステラにとってミラがすべてなのだから。
アースはその場に座り込み、死について少しだけ考えた。そして今まで出会ったことも整理した。
屋敷で起こった感情の動きもおかしい事だらけだった。
睡蓮が出したアストレアに向ける漆黒の感情があの襲撃した2人の物だとは思えない。なにより先に「女王の為なら死ぬ覚悟がある」のセリフがここまでの行動に矛盾を生じさせてしまっている。
少なくとも、テアは死を恐れ生存を望み、メーリアは女王よりもステラの命を優先させた。遥かに一緒に過ごしてきた期間が女王の方が圧倒的に長いというのに。
それこそが答えだ。俺があの一瞬で抱いたアストレアに抱いた嫌悪感。メイド達も忠誠はしていながらも…少しずつ、1mmずつでも積もっていく。女王への不満が。総数6名のメイドの不信感の総量が漆黒の色だとするのならば俺は納得する。
メイド達にとって大切なものはメイドであり、女王にとって自らの命にも代えられないミーナ、そして女王の命を何よりも優先するギレオ。メイドの中、女王よりも優先すべき大切な親友がいるステラ。そのステラの為なら平気で殺人もするステンレス。
団結の文字すらかすれて見えない。どこもかしこも一致なんかしているわけがない。このまま過去を振り返って未来を進めない現状で本当にうまく成功するのか?
[失敗を恐れているのか?]
「…お前が喋れるという事はステンレスがしびれを切らして俺を殺しに来たのか?」
[この感じはボルボロスだ。考えるにオーファンとリアナからの連絡が途絶えたから様子を見に来たんじゃないか?]
「邂逅した時点であいつも記憶を維持されるんだよな?」
[…多分な。でもステラは知っていたんだろう時間遡行をさ。ならそうとも限らないんじゃないか?]
「ステラに関して言えば…一つ心当たりがあるんだ。直接ステラに聞くけど。逆行を起こしたいなら出会った時点で殺せばよかったのに。」
[それもそうだな。で?失敗が怖くなったのか?]
「正確には次の世界でうまくいくなんて保障ひとつもねえからさ。不安で不安で仕方がない」
[そういう事か。…アース、私の意見なんだが…私はこの問題から逃げたっていいと思っている。]
「へえ」
[納得はいかないだろうが…一度でもステラはお前を道具として使おうとしたんだぞ。私はそんなやつの力にならなくてもいいんじゃないかと思う。お前が女王に向かっていった言葉の手前、身勝手な行動かもしれないが。]
「お前には俺が東の王都にとって都合のいい人間に見えるか?」
[見えるさ]
「多分100人に聞いて100人がそう答えると思うよ。でもお前が知っているおとぎ話の英雄はそんなに現実的じゃあないだろう。こういう都合のいいお節介位居てもいいんじゃないか。」
アースは部屋を歩きながら静かな空間で独り言をつぶやく。
「もちろん俺が、そんな世界を救う英雄とかそういうのになりたいって訳じゃないけど。ごく自然な事だろう。『亜人達が拉致されて酷い目に会う』『屋敷の人間が蹂躙される』こういう事を知っているなら俺は行動するぜ。」
[…最初は報酬を対価にしてたろ]
「はは、多分ジョニーに感化されちゃった。あいつ、カッコいいからな。完璧じゃねえくせに…結局勝てねえくせに…メンタル豆腐なくせに…酒癖悪くて絡んでくるクソみてーな一面もあるし…言葉遣いも汚ねェし。まぁ…あいつの心はピュアだけどさ」
アースは「吹っ切れた」とだけ呟く。そして歩き回った部屋のロッカーからショットガンを手に入れる。
「よくよく、考えた。俺は俺の命を消耗して、時間を戻し、完璧じゃあなくとも最善の未来へ向かうってな。」
[おいおい、死んだら自動発動はするが態々死ぬことはないだろう。もどしてやるよ]
「必要ない、これは活を入れるためだ。未来を超える為に苦痛を超える。簡単に俺は死なないだろうから…地獄を味わうだろうが…実際先の未来、四股もがれ五感奪われても戦い続けなきゃならないんだから」
アースはショットガンを咥えて引き金を引いた。銃声と共にアースの後頭部は弾けて頭蓋を突き破り肉片やら血液やら脳味噌を宙にまき散らす。だがアースが死ぬことはなかった。今度は胸に向かって撃つ。同じように風穴は空くが脳が意識を失おうとしない。
[イカれている]
激痛だけが延々に続き、体中穴だらけにするが遂には散弾銃の残弾がなくなってしまうという異常事態に陥った。アースはすぐさまロープをつくり、自分の首を絞める。アースの異常なパワーでみるみる首の直径は短くなっていく。ロープが皮膚を破り、血を噴き出す。顔は鬱血していく。けれどいつまでたっても息苦しくはならない。
アースは全身の細胞が呼吸をしている事に気付くとジョニーが用意したであろう酒の樽に飛び込んで窒息を目指す。だがこの高い不死性を持つ体は生への執着が凄く、最小限に酸素を使い生き延びようとする。アースの身体は最早人とは言い難く化け物同然だった。
[無残な姿だアース…やめてくれ…もう…]
酒樽は倒れ、酒も零れる。アースは棚にあったライターを拾い、自身の身体に点火する。すると青い炎が燃え上がり、服を燃料としてアースの身体を焼き始める。アースは業火の炎に焼かれながら死を待つ。
拷問のような状態の中で数十秒、苦痛のない時間があった。アースはその真っ白い部屋を楽園と考えた。俺自身とただ向き合って過ぎる無意味な時間。
だがすぐに地獄に戻り、やがて意識を失うまで苦痛は続いた。




