第二章 49 心の葬儀
睡魔と戦いながら書いたので多分誤字脱字あるかもしれないです。
アースはギレオの死体を抱える。戦うべき相手は逆だったのだ。アースにとってリアナは相性がいい相手だった。なによりも小道具通じぬ体をしているから。人間はそんな外傷を受ける前提で生まれたわけではないから呆気なく、命を落とす。
貫通した穴はすぐには埋まらない。それどころか抉られた傷口が残るほどに再生能力が低い。細胞一つ一つが生へ執着せず、意思もなく脳の指示に従っている。それが通常状態なのだ。アースもかつてはそうだったのに。
アースは通信機に電源を入れる。
「誰かが聞こえるといいんだが。敵は全員殲滅した。この屋敷に敵対者はいない」
『…こちらメーリアです。一度中庭に集合していただいても宜しいですか?』
アースは返事せずギレオの死体を抱えてガラスを突き破って中庭に飛び降りる。テアが端の方で啜り泣いている。メーリアとリアスは暗い顔をしながら怪我を治療する準備をする。
「アース様…お怪我は大丈夫ですか?」
「俺はいい。」
アースは辺りを見渡すとシートが敷かれたそこには顔に布がかぶせてあるメイドの死体が3人並んで寝かせてある。アースはその横にギレオを置く。
「全員…リアナに?ステラも…ですか?」
「…はい。ステラは女王様を救出する際に針の攻撃を受けてしまって…急いで治癒をしました。女王様よりも優先して…でも…それでも…間に合いませんでした…。私メイドとして失格ですね。本来ならば一番優先すべきなのは女王様の身の安全なのに。」
「…こういう時にメイド同士で仲良くしているとあってはならない間違いが起きる。…でも今回ばかりは間違いじゃあないな。」
「…」
「…ミーナもつれて来る。あのまま放置も可哀そうだろ。」
「…お願いします。」
アースが中庭の柱を蹴って二階へと飛び移る。そしてミーナが亡骸がある女王の元まで向かった。そこではいまだにレアがミーナの傍で泣き続けている。アースはミーナを抱えるとレアは掠れた声で「まってよ」と言うがアースは無視して中庭へ向かった。そして他の4人と同じように彼女も寝かせる。
メーリアは目を赤く腫らしながらアースに深々と礼をする。
「本当に…本当に女王様を護って戴いてありがとうございます。…報酬の話は後日でよろしいでしょうか」
「一人も死なずに完遂できた場合にのみそれを受け取る権利があるんだ。…それとステラは最後になんと言っていたんですか。」
「「ミラをお願いします」と。それだけです。」
「俺は1時間だけ、外出してきます。やっぱこんな未来…本当に生きていて欲しかった人間が生きてない世界に価値はない。」
「…アース様?」
アースはそれ以上何も言わず屋敷の外へ向かった。
[アース、気を付けろ]と空欄の言葉。そんな言葉も耳に入ることなどなかった。そして外にはステンレスが息を切らしながら屋敷の前に立っていた。生きていたことに驚くこともない。生きていたからと言ってもう一度殺してやろうだなんても一切思い浮かばなかった。どうせなら死んでもいいとすら思っていた。
先にステンレスが破片を手にこちらを睨んでくる。そして叫ぶ、「屋敷の連中に何をした!?」と。アースは無防備にステンレスに近づいて「俺は女王の味方だ。」と言ったうえでステンレスの違和感だらけの存在に問う。
「なあ、ステンレス。一体なにが目的なんだ。お前は屋敷の連中とどんな関わりがあるっていうんだ」
「す、ステラは無事か…!?答えろアース!」
ステンレスは屋敷の仲間だと聞いて破片を捨ててアースの胸倉をつかみそう問い詰める。アースは逆にステンレスの首を掴んで「知ってどうする?ステラを殺すのか?おい」と、がなる。
「ステラは俺の妹だ!まさかお前…!殺…」ステンレスが言葉を発している途中でアースは遮るように「嘘だな」と切り捨てる。
「既にステラにはステンレスの話をしていた。あの時ステラはステンレスの事を認知していなかった。」
「ステンレスは祖の神の名だ!祖の神という事実は秘密にしている。表向きの名前はチール・スレアだ。ステラに確認してみろ、俺が兄だと直ぐに証明してくれる。」
[騙されるなよアース。祖の神は元が人間じゃねえ。例外なく親兄弟なんて存在ありえないんだよ。]
「祖の神は人間じゃないだろう。」
「血のつながらない兄妹だからだ。聞いてきてくれ、確証が取れるはずだか…」
「亡くなった。」
「…は?」
「ステラは殺された。ギレオさんも、ネムさんも、リレスさんも、ミーナも死んだ。」
ショックを受けてへたり込むステンレスを見て嘘ではないことを確信する。空欄は警告するがアースはステンレスの胸倉をつかんで問い詰める。
「お前はなんの目的で俺を殺したんだ。前回、何故爆破したんだ。」
「ステラに…「アースを殺して」と言われたから…てっきりお前がステラを瀕死に追い込んだものだと思っていた。」
だからステンレスは俺と初めて出会ったとき。俺を激しく憎んでいたんだ。俺がステラについてよく知らなったならこの「アースを殺して」に敵であることを確信したのだが、ステラをよく知っている俺はその真意が分かる。
彼女は何らかの理由で俺が死ねば時が戻るってことを知っていたんだ。だからステンレスにそう頼んだ。ステンレスは俺を殺し、二度目の人生でステラに害を加えぬように予め処理しようと最初に襲ってきた。辻褄が合ってきた。ゆっくりと歯車は回り始めていく。
「ステラは、俺が死ねば時を戻すことを知っていたからな。」
嘘を吐いた。その言葉を聞いた瞬間ステンレスには「あれはお前だったのか」と希望の光が満ちる。
「…ただし回数制限があるんだ。次でラスト。次が回数の上限だ。そしてこの逆行の記憶が残るのは祖の神だったり特殊な人だったりする。お前も身をもって記憶の引継ぎは体験しているだろう。未来を知ることはどんな対策を講じるより上を行く。」
これも嘘だ。残り二回の人生を、これ以上人生を引き延ばさずラストチャンスだと思わせる為に敢えてつく嘘。
「じゃあそれでステラは助かるんだな!?」
「お前さえ協力してくれればな。」
ステンレスは俺と相対した時とは全く違う態度で「協力する」と二度繰り返す。
「俺は予測の為にこれから先の未来を知りに向かう。1つの目的はこの国の守護。2つ目は亜人達の救出。俺はもうすぐ死ぬが時が戻り次第ミーナの事務所を知っているか?あそこへ向かってくれ。」
「分かった。それとアース…勘違いしてお前を襲って申し訳なかった。」
「いいよ。その怒りの質を俺はよく知っているから」
「じゃあまた来世でな」
ステンレスはステンレスでステラを弔いに屋敷へ入ったのだろう。
「死ぬ度に俺は俺を遠ざける。次に繰り返すこの物語を進める俺は今よりもずっとずっと冷酷になっていると思う。」
アースは他でもないその言葉を空欄に吐いた。空欄が答える前に会場に歩き出したアースと中庭に向かうステンレスの間に空いた距離で回答はすることなく電気信号は途絶えた。
自分なりの正義を持つ者はこぞって嘘を吐く。




