第二章 44 私リアナ!あなたの位置を教えてね!
首を痛めながら書いたので誤字脱字あるかもしれないです。
見慣れた屋敷内を隅々まで見渡す。屋敷内は眩しすぎる程豪華な明りに照らされ人という影が出来た場合すぐに異常を発見できる。ステラとメーリアは歩いてきた後方の道を何度も振り返って細心の注意を払っている。
メーリアもかなり集中しているが、ステラはその数倍緊張してちょっとした異常にも目がいく。熟知した廊下の死角なんかも注意しながら巡回をしていた。だが異変と言うのは自ら気付く感じで来るのではなく、堂々と敵は現れる。200cmは超えている長身に不適な笑みを浮かべている。
メーリアは逸早く通信機を手に取り連絡しようとするが目の前に現れた穴から通信機を奪われる。そして大男は通信機を爪で2回連続で叩く。つまりもう既に誰かの通信機を奪って秘密の暗号で連絡しているという事になる。
この状況に一番危惧したステラは敢えて通信機を取り出そうとはしなかった。もし自分も通信機を持っていると思われたら奪われるかもしれない。そしてこの能力をステラは直感で空間を短縮する能力だと悟る。それはつまり逃げても無駄と言うことだ。だが、この屋敷には相当異常に敏感な男がいる。
「…」
メーリアも同じくステラが通信機を取り出さない理由を察して大男以外に誰かいないのか周囲を警戒する。大男がゆっくりとこちらに向かってくるとメーリアはステラに小声でどうするか聞く。
「安心してください。逃げだすチャンスはもうすぐきます。」
ステラがそう言うと直ぐにオーファンの持つ通信機からアースの声が響く。『生存確認を行います。…こちらはアースです。臨時で生存確認を行いたいのですが、応答よろしくお願いします。どうぞ』
『こちらギレオαです』
『ミーナα』
『…………ネムαです』
オーファンが通信機に目線を向けた瞬間にステラは通信機に電源を入れ「ステラγ」と呟き通信機を宙に放り投げる。再びワープホールは現れてそこから手が伸びる。そこに空かさずステラは麻酔針を手に刺す。するとオーファンはその場に倒れて動けなくなる。その隙にメーリアの腕をつかみ全力で廊下を駆ける。
そして突き当りの廊下までいくと記号を書き残す。これはアースが多少の記号の意味を知っていたからである。あのまま大男と相対して激昂し本来の力を出せず冷静になれない場合を想定し、自身が安全である事を描く、『δ¬∵α』「δの状態ではなくなった。今は異常がないから。」と。
ステラは全力で逃げつつメーリアに事の一連を説明する。
「ここに誘導するのをアース個人に絞る為に敢えて「γ」と言いました。「δ」と言えばほかの人たちが異変に思うからです。「γ」と敢えて言うことで本来使うべき「δ」を使わないことに異常を感じる男が一人だけいます。それがアースです。仲間がほかにいる以上他の人は他の侵入者に警戒して欲しかった為に勝手な行動をさせて頂きました。」
「な、なるほど…さすがステラちゃんですね」
ステラの早口解説にメーリアは感心する。主力メンバーの人達はある程度戦況を保てるとして問題はネムさんたちの中庭だろう。最初にそこに合流しよう。
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テア視点
通信機から来た『こちらアース、敵は少なくとも二人以上いる。テアは今すぐ中庭に飛び込め。全員警戒態勢に入ったほうがいい。』という指示に従って中庭に飛び込もうとする。だが、中庭からは聞きなれない女性の声が聞こえたので恐る恐る覗いてみた。
そこには紫髪を自分の正面片側に髪の毛を流したサイドダウンの女性が通信機に向かって喋っている。
『リアナよぉ、バレちまったよ。もう派手にやろうぜなあ』
「いいわよぉオーファンこういうコッソリしたの合わないのよねぇえ」
そういう彼女が座っているのは息も絶え絶え血を口から噴きながら苦痛を我慢しているリレスさんだった。その横でネムさんの首にアイスピックが何本も刺さっており、呼吸をしている様子も見られない。確実に死んでいる。
彼女たちはテアとずっと過ごしてきた大切な仲間だ。それが今目の前で失われている。吐き気を催すほどのおぞましい感情が流れ込む。同時に抑えきれない程の殺意がテアに憑りつく。だけど一歩も動けない。それを超える恐怖がこの場にテアを押さえつける。
通信機の電源を切り、すすり泣こうとする口元を手で覆い、声を押し殺した。ただどうしようもない涙がただただ頬を伝う。
暫くしてそこにステラとメーリアがやってきた。テアの姿を見て二人には悪寒が走る。中庭を覗くとネムとリレスの亡骸が横たわっている。ネムの首には複数のアイスピック、そしてリレスの背中は背骨が見えるほど抉られている。そこにアイスピックが複数深く突き刺さっている。
その光景を見てメーリアはその場で嘔吐する。ステラもその光景を目にし、呼吸が乱れる。私たちメイドは幼いころに女王様に拾われてからずっと一緒に暮らしてきた。後から加入したステラだって少なくとも1年は一緒に暮らしてきたのだ。この惨い殺され方に腹を立てぬ者はこの場にはいない。
それだけに3人は自分たちの無力さを痛感する。テアは泣きながら「私最低だ」と呟く。「まだリレスは生きていたのに…私…」と。
メーリアは泣きながらテアを抱きしめる。ただ無言で抱きしめる。その悲しみに包まれた空間でステラは冷静に言葉を吐く。
「ギレオさんやミーナさんと合流しましょう…今は少なくとも女王様を守り、生き残ることを最優先に考えましょう。」
テアは涙を拭い立つ。けれどすぐに涙は零れてくる。メーリアとテアはステラを冷たいとは思わなかった。彼女の手の平には爪が食い込んで血がこぼれているのが悔しさの証なのだ。冷静にならなければならない彼女が流した赤い涙。
ギレオは警戒していると酷い顔をしている3人を見つける。先にリアスが駆け寄り「どうしたの?」?と聞く。ステラが答えようとする前にギレオの持つ通信機からアースの声がする。
『こちら、アース。オーファンかリアナの何方かの能力は2つのワープホールを出現させてその間を現時点で本体か本体の味方のみが通れる感じの能力だ。現時点ではオーファンの能力である可能性が高い。俺たちは恐らく入れない、だが、人以外は多分入れると思う。もう一つ、人の顔を被ってその本人に成りすませるっぽい能力を持つ者もいる。もし途中で合流してきた者がいたのなら気を付けてくれ。オーファンの方は戦闘途中で姿を見失った。』
リアスにギレオは下がるよう指示をして無言で通信機を渡す。ステラは通信機を受け取り話す。
「こちら、ステラ…ギレオさんたちと合流しました。私の潔白の証明をお願いしてもよろしいですか」
『今回、初めに俺が戦った相手は?』
「ステンレス」
『ステラは潔白です。ステラが相方のメーリアさんを潔白だと言っているのなら二人とも潔白です。できれば戦闘は能力が判明するまでなるべく控えてほしいです。』
「…テアも潔白です。」
「…分かった。疑ってすまなかった」
「いえ…必要な事なので」
「それより!何があったの!?こんなに消沈して…」
「ネムさんとリレスさんが亡くなりました。恐らくリアナという女に殺されたと…思います」
その言葉を聞いて全員が沈黙に包まれる。ギレオはそんな空気の中冷静に判断をする。
「バラけるのは避けて集団で行動しましょう。これ以上犠牲が出ないようにも」
力ない返事が静かな廊下に響き渡った。




