第二章 42 殺人鬼の嘲食 3
睡魔に襲われながら書いたので誤字脱字あるかも。
腹部に深手を負った状態でこの強靭な男を相手にするにはリスクが多すぎる。深淵化の回復でもこの傷の修復は時間がかかる。奴の能力自体は何となく理解できた。暗闇で数値が上がって今明りに照らされるオーファンの数字は下がり続けている。暗闇で電撃をチャージして一定の光度以上で電撃使用時間が減っていくっていうそういう類の能力だろう。
心臓の鼓動が徐々に早くなっていっている。痛みは次第に熱へと変わっていく。オールディと戦ったあの極限状態になりつつある。傲慢だった俺の精神に体の狂気さが添おうとしている。傷口が塞がりさえすれば強引にでも奴の首を捩じ切ってやる。この部屋には再生薬はなく、妙な懐中電灯しかなかった。今は、逃げて回復を待つか…再生薬を探すしかない…!
アースは部屋の扉を蹴破り廊下へと飛び出す。だが飛び出す際に5つの雷の矢がアースの身体を貫く。アースは吐血しながらも全力で廊下を走り続ける。
「俺の指先分だ!逃げたって無駄だぜアース!」
アースが走る廊下の先にワープホールが現れる。そしてその穴からも雷の矢が飛び出してくる。アースはその矢に被弾しながらも銃に弾丸を込めて穴に向かって引き金を引く。だが再び外に出現していたワープホールによって今度は眼球を撃ち抜かれる。
「クソ…!」
外のオーファンの前に出現したワープホールと外の上空にあったワープホールは繋がった同じ『α』だと認識していた。人は穴の間を制限なく移動できるが物質は同じ文字列だけだったはずだ。だから逃走した部屋のワープホールが『β1』としても人が通る分にはこの『α』と『β』にはなんの制限もない。ここまでは理解が出来る。
理解できぬのは今出現した廊下のワープホールが何故外の『α1』から『β2』につながるんだ?もしかして俺はまた勘違いをしているのか?この廊下のワープホールは『α3』なのか!?
考察する間もなく再び電撃がワープホールから放たれる。明らかに俺の腹部を狙って集中的に狙っている。ここでもアースは考えることを止めなかった。腹部に被弾するのは避けつつその場に留まり思考を続ける。
思考を続けるのは、この廊下からライトニングボルトを放つのが謎でしかないから。俺なら間違いなく死角である外のワープホールから電撃を放つ。
…まさか、それができないんじゃないのか?逃走部屋であるワープホールから今、電撃を放っているのだろうが『仮定α3』からα1α2へは出来るくせに…β1からα1とα2からは物質移動をショートカットできないのか?さらに考えていけばαとβのほかにも…γがあるのか?
…この廊下のワープホールがγ1なら…外にあるワープホールがα1α2のほかにγ2があるとするならば…可能だ…外からの銃撃が戻ってくるっていうのも…それに暗黒に包まれた外は穴の数を判断できない。そしてそれは同時に廊下のγ1と外のγ2の存在で逃走部屋にあるβからαに移動できないっていう証明になる。
問題はそうなるとβからγへ移動が可能になっているという事だ。だが…そこの謎を突き詰めていく前にγの存在を証明しよう…さっきの部屋で見つけていた懐中電灯を…使う時が来た。もう一度放たれる雷の矢を無視してアースは外へ向けて懐中電灯のスイッチを入れる。
…紫色に淡く光るそれは暗黒の闇を振り払うにはあまりにも弱々しい物だった。だが、アースの思考を加速させるのには強力なものだった。淡い紫色は外にある球体を照らす。球体には雑に触られた指紋が残っていた。アースの指紋だ。これは懐中電灯ではなく、ブラックライトだった。
穴の種類と数…そしてそれを見分けることの出来ない事が難点だったこの能力を制することの出来る最高の弱点。差別化が可能だという事だ。確定移動が発生していた。外の二つはαで間違いない。アースはワザとらしく「暗く成ればよォーー!俺に正確に当てれねえよなァ!?」と叫んでやった。そして暗黒へ再び飛び込む。
暗闇の中へ飛び込んで初めてワープホールが4つある事に気付く。丁度狙撃できぬように死角になっていたんだ。もし死角ではなく俺を撃っていたならこの答えにたどりつくことはなかった。そして仮定通りならこれもγとβだ。
こっそりと、差別化が出来たことを悟られぬように俺だけの不盲点。確実にαであるものだけに印をつける。α1球体にαとなぞってやる。そして他の2つのワープホールにはβとγの両方を描いておく。後で正確に判断をして指紋でアルファベットを消すためだ。この穴は許可された者しか入る事が出来ないんだ…俺の指紋も同じように入れない。消えてもなお、指紋は残り続ける。
俺は追いやられる演出を続け、消滅時間5分であるこのα2に同じように印をつけてやることが今の最大の目的だ。多分もう3分は経っている。早くしなければ消滅してしまう…悠長に階段を上っている暇はない。悟られぬように都合のいい状況を演出してαを完封する。
想定通りオーファンはワープホールβγの手前からライトニングを放ってくる。アースはそれをオーバーに避けて上空へと飛ぶ。そして壁を蹴り、消滅前のαに大きく手形を付けてやる。α2と描くのは次回でいい。それで問題ない。
「間抜けが!外に出る方が愚策だってわかんねーのか!?クズが!」
α2からオーファンは姿を現し、二階に上ろうとするアースの足を掴んで電撃を流そうとする。アースは咄嗟にブラックライトを二階の窓に投げ込み、足を掴むオーファンを殴ろうとするが穴から出ている体の個所は腕のみだ。アースは落下に加えた威力のある拳を大きく空振る。そして為す術もなく前進に電撃が走る。
「ちょうどいい、そのまま腕を出していろ。」
アースは電撃で肉を焦がされながらブラックライトを投げたことによって割れて落ちてきたガラスをキャッチする。そして全力でその右腕にガラスを突き立て腕を引き裂こうとする。オーファンは慌てて穴の中に身を隠そうとするが両者の力が拮抗していることは先の戦いで両者とも十分理解しているはずだ。
アースは穴が自分を拒むという弱点を利用して両足で穴を陸として立ち、それを支点にしてオーファンを引きずり出す。同時行動でアースはオーファンの右腕を切り落とす。屋敷の方からオーファンの激痛の叫びが聞こえるとともに穴は穴として活動し、アースは穴の中に吸い込まれる。
逃走部屋に入ると右手首を抑え涙目になっているオーファンの姿がある。アースはすっかり治った脇腹の所をさすりながら銃に最後の弾丸を込める。
「畜生…!!眼球に次ぎ手首までもォォ…!!!」
「左眼球右腕ときたら…最後は左に位置する心臓か?」
アースはそう言いながら銃口をオーファンに向ける。これは言わば脅しの銃。α、β、γのほかに穴の種類があるかどうかの確信を得るために行う行動だ。まだαの消滅までは30秒はある筈だ。アースは躊躇いもなく、脳天に向けて引き金を引いた。
アースが考える穴の想定位置
α1外
α2外上空
β1逃走部屋
β2外
γ1外
γ2廊下




