第二章 41 殺人鬼の嘲食 2
朝食昼食抜きで書いたので誤字脱字あるかもしれないです。
つまり、まだ対人戦も対能力戦もそれほど行ってきてないから極端な判断になるがこの空間移動できるワープホールを出現させる能力は最高に難易度が高い。本体にしてみりゃあαもβも別に見えるんだろうが俺達には見分けがつかないってことが一番困る。今のところ2種類しか確認していないがもしこれ以上種類が増えていくなら難易度は乗算で高くなっていく。
外に出たら分かるがワープホールは一つしかない。ここから見る屋敷の明かりに照らされ割れた窓ガラスがあるのは俺がオーファンを殴り飛ばした箇所だけだ。つまりオーファンは屋敷の外にいる。逃げたいならワープホールで逃げればいいだろうに…わざわざ逃げずにここに留まる理由がわからない。
深淵化を持っているとして回復で隠密行動をするほど奴の体に傷は刻まれていない。ステンレスなら簡単に突き破れるほどの腹部もオーファンならではの筋肉量と頑丈さで風穴開けずに済んだ。蹴りで内臓が破裂しているなんて反応もない上にさっきの殴りも外傷としては薄い。
「なるほどオーファン。お前には何か時間を掛けなければならない何かが有るようだな」
アースは暗闇の中でそう呟く。外の穴も廊下にあった穴も消滅する。約5分穴を維持していられるらしい。いや、5分経たないと消せないといった方が賢明か?
暗黒の中で、数メートル先の朧の玄関の明りに照らされて人影が現れる。身長とガタイの良さからあれがオーファンと言うことが容易に分かる。敢えて姿を現せたようにも感じる。オーファンはゆっくりと近づいてくる。
何故今更わざわざ現れるくらいなら奇襲でも仕掛ければいいというのに。再び奴はルールを提示するつもりなのだろうか。だがそんな感じではないことをすぐに悟る。奴の右腕から青い雷光が時折チラつかせている。つまりあれが奴の能力だ。
帯電する時間を要し、何らかの電撃を繰り出す能力。能力を複数持つ者もいると空欄は言っていた。だがしかしそれはオーファンではなく、ワープホールと顔を奪う能力と共に複数持っているのはリアナの方だ。確証はないが勘がそういっている。リアナの能力を考察するのはまず後だ。今はオーファンに集中しよう。
「今更能力を披露したのは自分の肉体を見せたいが為にか?実に浅ましいな」
「浅ましいだと?てめーは俺を苛つかせる天才だな。楽に殺してやるつもりだったが気が変わったぜ。てめーの血液を沸騰させてやるッ!!」
オーファンは電撃の籠った拳を大振りする。だがアースはいとも簡単に避ける。だが大振りした線に電撃が残留し、矢となってアースの肩や胸を貫いて消滅する。アースはよろめき、裏拳でオーファンを殴ろうとするが受け止められて接触面から電撃がアースの身体に走る。その電撃は凄まじく、1分と浴びていたら全身が丸焦げになってしまうだろう威力だ。
「俺流のライトニングボルトだ!無様だなぁああ!アース!なんかいう事はねえのかよ!?おい!」
「なら俺を沸騰させてみろォーーーッ!!」
憎たらしい笑みを浮かべるオーファンにアースは拳を緩めて腕を引っ張り顔を近づける。そして右の手の人差し指と中指を眼球に突っ込みつぶす。オーファンは叫びながらアースの脇腹を全力で蹴り飛ばそうとする。それを避けようとするが結局は当たってしまう。
「クソがァァァ!!俺の眼がァあぁぁ!!!!」
「うぐぅぅぁぁあああ!!!!」
オーファンは対人戦で言えばアースとほぼ互角の力を持っている。拳よりも蹴りは数倍も破壊力がある。完璧な体勢で蹴りをかましたわけではない。…だがアースが避けてしまったが故に足の鋭いつま先で蹴られてしまい、アースの脇腹からは腸が飛び出した。
今まで戦いでは言うほど痛みを感じてはいなかったが腹を破られ内臓に傷が付くと想像絶する激痛が全身を駆け巡る。まさに体に稲妻が走ったような感覚だ。
アースは何度も何度も両手で腸を腹部に押し込もうとするが飛び出てしまう。そうしている間にもオーファンは痛みを痛みで塗り替える為に顔を5つの爪で裂き、歯を食いしばってアースに向かっていく。
「どうしたよぉぉ!!てめーの腸は温まってるかァーー!?」
アースは深淵化の修復力を信じて腸を握り潰す。そして時間を稼ぐためにオーファンに向かって銃弾を放つ。が、放った弾丸は何故か自分の肩を上空から貫いていた。上を見上げると二階の窓辺りにワープホールが見える。
「おいおい…随分盲目的じゃあねぇか。俺の目の前にある滞空線が見えなかったのか?暗闇だからか?間抜けがッ!」
「クソ…」
オーファンの方に目をやるとワープホールが現れていた。アースはオーファンを撃つとき3回引き金を引いていた。だがしかし1発しか銃弾が出なかったのは先ほど1発しか弾丸を込めていなかったから。結果的にそれが幸いとなった。
アースは窓枠に残ったガラスで体を傷つけながら屋敷の中へ戻る。そして入ってすぐある扉の中に身を隠す。重傷を負ったが収穫もある。
奴の手の甲には数字が刻まれてあった。「688」と。これが時間が経つにつれて数字が増えていった。つまり帯電することによる体の負荷の数字だろう。奴は恐らく限度である999まで行かぬうちに俺を倒さなければならない。落ち着け、今焦っているのは向こうの方なのだ。
アースは血が噴き出す腹を抑えながら傷口を覆うものを探し始める。だが10秒もしないうちに部屋の中にワープホールが出現する。アースは壁を叩き、崩れた破片を手にして戦闘態勢に入る。
鬼の形相をしたオーファンが雷光を迸らせながら現れる。その稲妻に塗れた手の甲には「641」と刻まれてあった。大体、最悪な想定を第一に考える場合は自分が落ち着いて思考することができる状況でのみだった。俺はこの数字が『電撃を使用できる時間』という事を頭の隅に置いてあったのにも関わらず、都合のいい、電撃の限界数表示だと勝手に仮定してしまっていたのだ。
そしてそれはつまり、今この状況で一番焦って追いつめられていたのは俺だった。




