第二章 39 唾液塗れのノイズ
誤字脱字多いかもしれないです
次回から戦闘
夢は見なかった。夢が見れなかったという事はそれほど疲れていたのだろう。次に眠るときはもう目が覚めないかもしれない程に…これからの日程は地獄のように過ごすことになる。その現実を受け入れたくないのかは知らないがヤケに23時のライトがまぶしく感じる。
女王が死ぬってのが24時以降ってだけで俺たちは普通に死ぬんじゃないのか。とかいう考えが今更襲ってくるが若干…ほんの若干考慮したから23時から巡回開始なのか。体を起こして軽く体をねじり、骨を鳴らして扉を開く。開いた扉の横に体育座りをしたテアがいる。
「…おはよう、いや「こんばんは」か。」
「…」
「テアさん?」
返事のないテアを不審に思い、肩を揺すると力なく倒れる。既にやられたと察知して咄嗟に武器を用意するために部屋の扉を突き破り、穴から力いっぱいに外側に引っ張って扉を裂く。そして歪な鈍器の武器を手に入れる。
その音に驚いてテアは飛び起きる。そしてアースを見て絶句する。自分がこれから殺されるのだろうと確信したような目で怯える。逃げようにも腰が抜け、悲鳴を上げようにもあまりの恐怖に声帯が震えない。その姿に呆れるのと同時に安心した。
「はぁ…テアさん殺されたのかと思ったよ返事しないから」
「…ぇ…へ?……え…?」
テアは情けない声を出してきょとんとする。そしてアースの言葉の意味からアースの取った行動の意味を察する。アースが敵ではないと感じ取ると怯え切った顔は安堵の表情に変わる。
「よかったぁ~~~…てっきり寝てる間に私を殺すつもりだったのかと思ってしまい…ました…怖かったぁ~~~~」
腰が抜けて立てない情けない格好でそう言う。忠誠を誓い、ともに死を迎えると覚悟をしている人間の反応とは思えないな。実際問題敵と遭遇したら間違いなく無意味な死を迎えるんだろうな。
アースはテアに手を貸して立たせ、手に持つ歪な扉を「使います?」と渡そうとするが「いやその武器はいいです」とテアは断る。でもアースは強引に「武器じゃなくて盾として使ってね。」と淡々とした口調で渡すと静寂にも響くことない「はぃ」が薄らに返事する。
「なんで部屋の前に居たんです?」
「死にたくなかったので襲われたら助けを求めようと思いました…」
「死にたくないんだ」
「すみません…わたしだけ女王様に死をささげられなくて…」
「女王に死を捧げる方が頭のネジぶっ飛んでるけどな。忠誠の完成形は死の献上なぞではない。死は華やかでなんてことはないからね。テアさんは仕えたいっていう想いを大切にしておくことが大事ですよ。」
「なにか…すみません」
「…まあ巡回に集中しましょう。本番は24時を超えてからです。屋敷を髄まで知っているメイドである貴方はこの作戦においてとても重要なのですからお願いしますね。じゃあ…俺が先頭歩くんでテアさんは違和感を後ろから探してください。異変があればすぐに教えてください。」
「はぃぃ…あ…それとこれ…銃なんですけど渡しそびれてしまいました…」
「あ、どうもありがとうございます。」
戦闘開始は銃声が合図ともなり得る訳か。俺が最初に敵と出会って戦う場合に俺がギレオさんからもらった通信機を持ってても連絡できないな。
「テアさんは通信機貰ってます?」
「あ、はい。一応貰ってます…」
「あ、はい。じゃあテアさんがギレオさんからくる30毎の生存確認の応答をしてもらってもいいですか?」
「はい…分かりました…」
そりゃあ全員に配っているか。連絡を心配する必要もなかったな。…しかし巡回範囲を密かに増やす上でも恐怖に意識を向けているテアさんが一緒だと楽だ。こうも範囲を外れて巡回していても疑問の一つも感じていないようだ。
24時を過ぎて午前3時に差し掛かるところだった。テアさんも次第に緊張が解れてる、他愛のない雑談を交えれる程には。だが、異変は起こった。廊下を歩いているときに静寂だからこそ聞こえた無線からのノイズ。
「テアさん。何をしゃべる訳でもなく無線にノイズが走った。電源が入った可能性がある。言うなれば今現在進行形で襲われている…ことはないという事だ。」
「え…?」
「銃声が聞こえない。幾ら屋敷が広いとはいえこの静寂のなかで発砲音が聞こえないってことはもう既に襲われて死んだ可能性もある。仮に発砲していて既に交戦しているなら比較的近い中庭と二階全体と一階右側ではなく、一階左側かもしれない。これは最悪の想定の場合ですが。」
「えっ…えっ…?」
「生存確認を行います。…こちらはアースです。臨時で生存確認を行いたいのですが、応答よろしくお願いします。どうぞ」
『こちらギレオαです』
『ミーナα』
『…………ネムαです』
『ステラγ』
『ステラγ了解、引き続き警戒を維持せよ』
「ああ…ついに異常が…!でもよかった…全員生存していますね!」
「…最悪もう死んでるかもしれない。」
「え…?でも」
「ステラはγとは言わないんだよ。ステラには敵と遭遇した場合や異常があった場合はこっそり俺だけに伝わるようにδと言えと言ってある。つまり今、敵がステラのトランシーバーを所持している可能性がある。だが最悪の想定が死んでるってだけだ。強引に無線機を奪われただけかもしれないしな。」
「ど、どうしますか?」
「助けに行く。ステラやメーリアさんが怪我を負っている可能性が高い。できれば再生薬か救急パックを持って中庭に置いてほしい。テアさんはギレオさんかミーナと合流するか俺とついていくかどうする?」
「…えっえっ」
「俺についてきたとして出来る限り守るが命の保証はできない。他部隊と合流する場合その道中がほかに敵がいた場合は通信機で合図すればすぐに助けに行く。敵と遭遇したら兎に角逃げる事に専念してほしい。」
「え…逃げられなかったら私、死ぬんですか…?」
「逃げられそうにないなら怪我覚悟で中庭に飛び込んでくれ、間違いなく俺はテアさんが殺される前にたどりつける。幸い中庭は一階全体とつながっているからギレオさんがたまたま中庭の方を見ていたら俺よりも早く駆け付ける。じゃあ、俺はいくから」
「…ぃ…はい…」
テアの表情は一気に暗くなる。俺の予想だと敵は恐らく一人だ。多分襲われる心配はない。
アースは扉を投げ捨て廊下を全力で走り、階段を駆け下りて誰にも会わず、一階右にたどりつく、そこには大男が一人立っている。身長は…ジョニーくらいあるだろう筋肉質の男は血の付いた無線機を二つ手にしていた。
『こちらアース、敵は少なくとも二人以上いる。テアは今すぐ中庭に飛び込め。全員警戒態勢に入ったほうがいい。』
「困ったな…バレるのが早すぎるぜ…まぁいいか。女を殴るよりも詰まらないけど、ちょうどいい、俺も戦闘がしたかったんだよな」
『リアナよぉ、バレちまったよ。もう派手にやろうぜなあ』
『いいわよぉオーファンこういうコッソリしたの合わないのよねぇえ』
『全員、襲撃に備えよ。』
「おい、その無線機の持ち主はどこへやった」
「おう、心配すんなよ数分後には会えるぜ」
「お前が会いに行くんだよ、その薄汚れたデコを地に擦り付ける為になァァァ!!」
アースは大男に銃口を向け、銃弾を3発放った。




