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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 37 奥歯でナツメグを噛み砕く襲撃者

会話多め

 

 屋敷へ戻ってから先にステラがメイド達に外に出歩かないよう伝える為に速足で二階へと向かう。既に屋敷の内装や構造を知っているアースは記憶の再確認と不審者がいないかどうかを調べる為にステラとは反対側の廊下を突き進み、一つ一つ部屋をノックしつつ入る。朝食を共にする食事場は特に念入りに違和感を探した。


 どの部屋も見たが人影の姿は見当たらない。やはり侵入経路はメイドの皮を被って化けて来る事だろう。少なくとも一人はそうだ。一度皆と集まる前にステラから襲ってきた女の攻撃方法を聞くことにしよう。


 アースはメイド達の部屋へ行き、そこでひとり一人外出を控えるよう話をしているステラを遠くから手招いて部屋から出す。


「どうしたの」


「お前が敵の女に殺された経緯を聞きたくてな。」


「大層な殺され方なんてしていないわ。追いかけていたと思っていたらいつの間にか後ろから撃たれたの。死に際に顔を見たけど追いかけていた女本人だったわ。推測するに彼女の能力だと思う。」


「それか、女は双子で別の女が後ろからやった…とかいう感じで二人とも能力持ちならきついな。それにそれが能力だった場合は空間自由移動とかそういう系統の能力だろうから部屋が広いだけ不利になる。まあ今回始める作戦には上手くマッチした能力だ。問題はあまりない。」


「…まあ常に最悪の想定をしていきましょう。何が起きても動じぬように。」


「そうだな、その通りだ。一人で襲ってくるのなら強者複数人で襲うなら弱者の集まりとかいう単純な考えではなく、ひとりひとりオールディの様な強さを持った敵が集団で襲ってくるとか…その方が絶望に一々打ち拉がれなくて済む。」


「…」


「悪い悪い。話はそれだけだ。夕食まで俺にとって戦いやすい部屋を決めて想定もしておくよ」


「ええ、期待しているわ。夕食になったら呼ぶわね」


 ステラは再びメイド達に外出を控えるその旨を伝えに戻る。


 メイドのメーリアさん、リレスさん、テアさん、ステラ、この4人は亜人ではなかった。まだ会ったことのない残り二人のネムさんとリアスさんが亜人だろう。特にこのネムさんとリアスさんを狙ってくるのではないだろうか。女王も既にメイド服を着ているし作戦をさらに信じ込ませるのなら亜人メイドを優先的に守ったほうがいいだろうか?…とりあえずその話も皆集まった後でするか。


 アースは夕食までずっと屋敷を徘徊し、ステラに呼ばれると10人全員集まる。雑談を交えながら食事を済ませ、少し落ち着いてから話は始まった。最初にギレオさんからアースに説明が入る。


「先ほどの作戦の変更の内容を決めましょう。昼でやった概ねの会話はメイド達に伝えてあります。」


「えー?変更するのは確定なの?内部侵入を防ごうよー。内装を把握されるのは絶対不味いってー」


 作戦変更の話はミーナが納得していないようだった。


「殺意の総量が睡蓮の色かもしれないと言っただろうミーナ。」


「だからこそじゃない?アース。複数人で弱者を襲ってきても私とギレオさんで撃退できるしー。大体そういう万が一の為に私が来たんだからさ。内情を知られ頻繁に襲われた方が問題じゃない?私だって毎度は守れない。だから最初にギレオさんがやってた亜人を女王と思わせる作戦が最終防衛線でしょ?最後の保険。」


「そうだな。ワンルームのアパートなら俺だってそうするぜ。でもここは屋敷だ。大事なのは改装費やこれからじゃない。いまだ。今の命が最優先だ。ミーナは確かに強い、俺はその実力を間近で見た、保証しよう。だが、弱者が複数人で襲ってくるなんて保障はどこにもない。ミーナ程の実力者が数人で襲ってくることだって有り得る。」


「…多くてせいぜい5人以下だねー。東の王都の警察は4交代で一日中巡回している最近で怪しい姿は見かけていない。立て続けに起こったあり得ない暗殺にこれ以上似ない程ここの王都の警備は強くなっている。目立たった影はいない。そういう報告はすぐ来ることになっている。屋敷内は手薄に感じるだろうけど外は剣山に眼球押し込んで無傷でいろって位警戒状態は最高位なんだよ」


「それでもその警備を掻い潜ってたどり着いた人間が来るかもしれないことの保険にミーナが来たと?」


「そう、二つ目の保険が女王が亜人と思わせる云々ね。襲いに来る者が最高が5人として戦闘経験豊富な私とギレオさんで屠れる。ネムさんやステラさんだって他のメイドを守るくらいなら出来る。それにアースだって自分で言う位だから戦えるんでしょー?」


「ああ、戦える。不意打ち以外で死ぬ姿が想像できない」


「なら、どこに負ける要素があるのー?確かに屋敷は広いよ?だから見回りをして、異変を察知して情報を共有しながら明日を乗り切るんだよー。それを屋敷の一部に固まり完全防衛体制をとっても屋敷を把握されてまた後日襲いに来るなんてなったらそれこそ地獄になる。今回の襲撃は言わば次回の襲撃を予防する行為ともなるしー。複数で襲ってきた場合でも屋敷の内装を知っている私たちの方がずっと有利なんだよ。」


 結末を知っていなければ間違いなく俺は同調していただろうな。実際に最初の案を納得できる形で上回る案を出せていないからこういう批判も起きるのも納得だ。どう…納得させるべきか。


「…」


「でもあくまで私は部外者だからねー。最初通りの作戦を採用するのかアースの提案を受けるのかはアストレア女王様の判断。もしどちらの作戦になっても私はもちろん全力を尽くす。ただ最初の作戦を強く推奨するって事ぐらいかなー」


 ミーナの怒涛の考えの展開の末、女王に判断を委ねられ女王は慌てている。一斉に女王に視線が向かい、さらにあたふたする女王は横目でギレオさんに助けを求めるがギレオは目を伏せる。仮にも一国の女王なのだ。こういう大事な場面で誰かに判断を任せるのは間違っている。これから国を背負っていく者として第一歩を踏み出してほしいものだ。だがしかしその前に。


「判断の前に、私の話の作戦もお話しさせて頂いても宜しいでしょうか。」


「ええ、勿論です。」


「確かにごもっともな意見です。ミーナの肯定する最初の作戦は私の作戦よりも遥かに合理的であります。国を転覆させる力の持ち主が襲いに来るならば。私、アースを含めこの屋敷全員が集まって攻撃しても歯が立たない相手ならば…一対一の方が不味い。そのために第三の道、逃走経路を用意してあるのですよ」


「それだけ強い者が襲ってくるならまずコソコソ屋敷にしのび込まないし、万が一堂々と警備を蹴散らし此処に向かってくるとなれば何れかの警備している者から連絡が入る。それこそそこで逃走を図ればいいでしょー?それにソイツが慎重でコソコソ乗り込んだのならバラけて巡回していた方が逸早く逃走の事を伝えられるんじゃないのー?確かにアースの言う作戦は防御だけには向いている。でもほかのリスクが多すぎる。それぞれ作戦の利点を挙げていって考えても最初の作戦を上回ることはないし、それに即興で立てた作戦がうまくいくとは思えないしねー。」


 ミーナの言葉が女王が悩みが吹っ切れる事につながったかは分からないが、アースが反論をする前に女王は「さ、最初の作戦で行きましょう」と小さな声で言った。



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