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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 36 大男の本懐

短いです。


 ジョニーはどこかやるせない顔で拳を強く握りしめている。


「…お前…」


「そう、暗くなるな。ある程度調べた。俺はお前が敵だとは思っちゃいないよ。」


 アースのその言葉を聞くと少しの沈黙の後に口を開く。


「どのみち…誰かに話さなきゃァ爆発しちまいそうだったからなァ…丁度いい。俺はなァ…正しいことをする為にこの組織に入ったんだ。でも現実は全く違うものだった。狙われる亜人達を拉致して強制保護するものではなかった…亜人達の持つ獣化の力や驚異的な自然治癒力を利用としていたァ…。」


 そういう理由でジョニーはこの組織に入っていたのか。酒癖が悪く、それで問題を起こし、善行の為に…って感じだったりするのだろか。


「すぐには抜けなかったのか?」


「俺は目を背けれる程、この罪悪感とはうまく付き合っていけない。だが、抗えるほど俺は強くねェ。だから亜人達を目的の為に使う消耗品のように思っているあいつ等から最低限守る為に残っていた。でもな、アース。もうそれも限界なんだよ。」


 俺に相談をせずともジョニーは最初からオールディに盾突くつもりだったらしい。勝ち目がないと分かっていても立ち向かわなければならない時があるのだと。そういう心があるから…俺はジョニーを心から尊敬できる。ジョニーの自己犠牲精神だけ直してほしいところではあるが。


「そうか、じゃあ最後の晩餐と、酒を飲みにか。」


「お前は能力の存在を知っているか?」


「知っているよ。」


「俺の能力は既存のアルコールの度数を自由に変えることができる。でも大して強くねェ、体に最大限貯めることの出来るアルコールも致死量に達しない程度だからなァ。」


「なるほど戦闘準備か。」


「俺はこれからオールディと戦う。奴は戦いを軽視してまるで不死身であるかの様な無防備さだ。一発試してやるのさ、アルコールから順次燃えていく木造の会場に、染み込んだ亜人達の怒りの熱量を受け止めさせんだよ」


「そう…か」


「お前もこの後オールディ達をやりに行くんだろ?だったら亜人達を逃がしたらすぐにお前らも逃げた方がいいぜェ…オールディは…これは勘でしかないが…勝てない強さだと思ってる。」


 ここまでジョニーの覚悟を聞いたうえでアースは重い口を開いて喋る。


「俺はオールディの能力を知っている。だからこそジョニーがこれから行う火炎による焼死が、無意味なものだということもよくわかる。あいつはあらゆる外傷や物体を体内に入れ、無害化して攻撃手段へと変える能力だ。打撃も斬撃も毒もアルコールも炎も弾丸も全部無害化する。」


「それじゃァ…もう…」


「でも、血は取り込めない。人間を生かす為に必要不可欠である液体が奴には取り込めないんだ。」


 ジョニーは半ば諦めの表情を崩し目を見開いてアースを見つめる。いつの間にか固く握られた拳は緩くなって、立ち上がり、アースに顔を近づけていた。


「つまり…血の付いた拳だと殴れるし血のついたナイフで刺すと確実にダメージになるという事かァ…?」

 

 希望の答えを聞くためにジョニーは震えた声でそう問う。それにアースは静かに頷く。


「正確に言えば、取り込むことは可能であるが、取り込む事によって自分がいままで受けた苦痛の総量を味わうことになる為、精神的に苦痛だから取り込まないんだ。あいつにとって血は恐怖であり、能力を唯一発動させることの出来なくさせる最大の弱点となる。…俺は本気でオールディを殺そうと思っている。俺達は翌日作戦を実行する。だからそれまでジョニーは亜人達を守っていてほしいんだ。」


「……そうか、何も動きが見えないように見えて…実際はもうここまで追いつめていたんだなァ…」


 ジョニーは力抜けて椅子に座り、しばらく無言でいた。それから5分ほどしてから口を開く。


「…信じるぜ、お前のその言葉を…俺は亜人を守る。お前は亜人達が全員無事であるように最善を尽くしてくれ。」


「ああ、分かっている。この盗聴器は上手くごまかしてくれ。じゃあ、無事を祈っているぜジョニー。」


「おう。…勝手なことを言うようだがァ………死ぬなよ。」


「死んでも蘇るぜ。」


 アースはそう告げ、その場を後にする。食堂を出ると腕を組んで電柱に寄り掛かって此方を見つめるステラの姿があった。


「どうして入ってこなかったんだよ」


「一応個室の前で聞き耳を立てていたわ。でも…私が入ってどうこう…とか、そういう雰囲気でもなかったでしょ?」


 あの場に部外者が入るべきではないと判断したのだろう。声だけでわかるジョニーの覚悟にステラは疑う素振りも見せない。それどころか話を聞いて逸早く亜人達を救おうと躍起になっている。


 お互いにそれは分かっている。二人はその想いを抱いて再び屋敷へと戻った。





 





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