第二章 30 騙り者
急いで書いたので誤字脱字あるかもしれないです
俺の宣言に空欄からの返事はない。本当にステンレスが死んだかどうか確かめにも行こうかと思ったが空欄と話すことができないとなればつまりそれはステンレスが死亡しているということだ。しかし戦いであまりにも傷を負い過ぎた。深淵化…といったな。どういう仕組みかわからないがこの深淵化の高速自然治癒を待つにしても時間がかかりすぎる。
まあでも…相手はミーナだし多少の言い訳は効くか。まあミーナだしな。
「喧嘩でもしていたのですかな」
アースは気配なく背後から喋りかけてきた人間に警戒し、咄嗟に距離を取る。姿は老人であっても態々この屋上にまで登ってきて惨状に驚くことなく淡々とそう言っている姿に警戒せざるを得ない。だが老人はすぐにアースが警戒していることを察すると落ち着いた声で話始める。
「ここ最近なにか面倒ごとに巻き込まれる事件が多発しています。こういう惨状を目の当りにするのも日常茶飯事…とまではいいませんが結構あるのですよ」
「ああ、俺はあんたもそれの一人だと思ったよ、危うく過剰防衛するとこだった」
「私は老人会というグループの一員でしてこの辺りを見回っているのです。もし面倒事があるなら名誉英雄のウィーズという方に頼ってみてはどうでしょう。彼ならなんでも動いてくれますよ。正義感あふれる素晴らしい人間だ。」
「そうか、次はそうするよ」
「…見た目ほど重症でもなさそうですが一応病院にいったほうがいいですな」
「アドバイスどうも。……なにか?」
「いえ?」
「…」
老人は帰るアースを見続け動こうとはしない。よろめきながら帰るために早く歩けないのでこの時間が妙に気に入らなかった。アースは階段に足を掛けてから老人の方を見て今更ながら名を訪ねる。
「親切な御老人、あなたの名前は?」
「ルザ・キルライフです。」
「俺は、アースだ。英雄のことは恩に着るよ」
「ええ、気にせずに」
「…」
なんとなく気まずい中階段を落りて行き、散歩を終えることにする。
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「…なにその怪我ー。全体的にグロいよー」
さすがに散歩して転んだじゃあ済まなさそうだ。かといって「襲われたー」なんて言えば俺がトラブルメイカー認定されてしまう。そんなやつを俺なら女王の屋敷に招き入れることは絶対にしない。
穏便に済むような小競り合い等、阿呆らしく、惨状を笑える状況を、けど俺を余り失望させないような事情を考え、且つ、再生薬を使用、紛失したの理由を作り出さなければならない。
そういえばミーナは俺がある程度戦えることは知らないはずだ。不良に襲われた感じにするか?ただ俺が雑魚過ぎるってのも問題だよな…。
「いやさ、呆れるかもしれないけど、チンピラとトラブってあんまそういう争い避けたかったから逃げたら足踏み間違えてさ…階段転がり落ちちゃった。そん時に再生薬も壊してしまったよ。やっぱ詳しく知らない土地を一人で歩き回るもんじゃあないね」
「えー!再生薬こわしちゃったのー!?…まあー…その怪我の時点で察してたけど」
思考一秒間。まあまあ悪くない言い訳だと思う、咄嗟にしてはな。
ミーナは棚から瓶を取り出すと丁寧に机の上に置く。心配そうな口調で「まったく」と言い、若干低い声で話す。まあそれなりには貴重だという再生薬を2つもおしゃかにしてしまったんだ、この十数分で。(実際はステンレスの爆発に耐える為に役目を果たしたけど…)
「…アースは体が大きいんだからシャワー室で裸になってから浴びてねー。結構しみて痛いとは思うけど。」
「はぁ我慢できるとはいえ痛いものは痛いんだよなぁ」
「自分の運を恨むのねー」
「…」
アースはトボトボとシャワー室に入り、全裸になって再生薬を頭から被る。思ったよりも傷の再生は早くない。俺の深淵化より若干早いくらいだ。
…しかし、この程度の回復力を何故オールディは欲しがったのだろうか。それとも味方なら誰でもよかったのだろうか。実際面子を見てもロクに戦えそうなやつはいなかった。オールディこそ強かったがそれは痛みを克服した状態での話だ。一度巻き戻されたこの世界じゃあ奴を奮い立たせる前に殺せばいい。
アースは傷口が塞がってないにも関わらずお湯を出して全身に水を浴びた。激痛は走る、だが死を超える度にこの痛みが薄まっていく気がしてならない。…あと2回死ぬことが可能だが…そう考えると命が惜しくなる。実際残機として考えれば5個あった命はすでに2個しかないのだ。
結局ステンレスが俺を攻撃してきた理由もわからず仕舞いだしこの先も正体不明の敵が複数襲ってくるのならば…あえて対抗せず東の王都を脱出っていう手もあるのか…だけど屋敷の連中はそんなことは許すまい。
アースがお湯を浴びながら考え込んでいると外で会議らしき事が始まった。アースはそれに参加するべくシャワーで口を濯ぎ、急いで体を拭いてボロい服を着る。丁度支度が整った所でミーナと数人の団員との話は終わったようで皆各自行動を始める。
「なにかあったのか」とアースはわざと話しかけてみるがミーナから帰ってきた答えは「なんでもないよ」
おかしい。本来ならば『仕事』の話を持ち掛けられるはずなのに。もしかしたらステンレスの戦闘にて破壊された建物についての話をしていたのかもしれない。と考えた矢先ミーナは「私はこれから仕事でちょっと出かけるから」と時計を見て奥の部屋へと入っていく。
ミーナからここで伝えられた言葉は「私が帰ってくるまで暫く待っててね」だった。つまり運命は変わった。俺への仕事の話はなかった事になっている。
時計を見るとまだ6時10分。起床から戦闘、帰宅までで約2時間。出発の時間の6時半位までには間に合っていた。苦しい言い訳ではあったが疑われる様子はなかった。回収が足りなかったものといえば亜人についての回答と、多少なり交わした他愛のない会話ぐらいだ。
…まさかこの会話で好感度が相当違うものとなっていたのか?好感度を落としてしまったのは再生薬を無駄にしてしまったからか?要注意団体や組織や人物お資料を渡されたのは俺への好感度が高かったからなのか?それとも彼女には嘘が見抜けるから?嘘を吐かれたのが気に食わなかったから?嘘を吐いてしまったことで信用を落としてしまったから?
この短時間で何故?どうして?が頭のなかで渦巻いてしまう。
このルートだと、つまり俺は屋敷へ入れず、屋敷の中からは護衛ができない。強引突破は言語道断だ。秘密裏に入り敵と邂逅し戦闘になったとしても俺は敵認識され一度根付いたイメージは払拭できるはずもなく、その後のオールディ及びボルボロス&ビシブルとの闘いはどうする?協力なしじゃあ無理がある。
つまり俺は今、出発までの20分間でどうにかミーナを説得しなければならない。




