第二章 26 感染爆破と流転の塔 3
アースは同じようにして建物の上へと昇っていく。すると今度は上空から無数の破片が降ってくる。アースは建物のガラスを突き破り、建物内部に侵入する。そして奥のほうへ全力で走る。そうしなければ奴は窓ガラスの平行地点で爆破を行うはずだから。
アースは爆発を見届けず建物内の階段を使用しながら上へ上へと昇っていく。その途中で階段の手すりを引き抜く。
『奴の爆弾は着弾をしてから爆発するのではなく。奴の意思によって爆発が起こるものだと理解した。そして同時に時限爆弾を作ることも不可能なんだろう。』
[確かに、さっきのガラス。爆発音が聞こえなかったな。サイレントって可能性もあるんじゃないか?]
『俺が最初に奴の姿を見つけた時、奴はコンクリートを投擲して爆破させただろう。その時の連鎖爆発の数発は地面に落ちてバウンドした後爆発した。あれは間違いなく自然的に爆発するものではなく意思決定による爆発だ。』
[そういうことか。]
アースは屋上を開く扉の前まで来ると開けずに少々距離をとる。
[どうした?]
『探知してこないなあいつ。俺がビルの隙間に飛び降りた際は間髪入れず探知してきたってのに。それとも探知爆弾は永続的なのか?どうせ音の反響で人の姿をとらえたとかいう能力なんだろうが…音は永久には続かない。探知できるわけがないんだ。あいつは俺の居場所を知らないはずなのに。』
[おそらくだが、奴はお前の逃走経路を完璧に把握していた。お前が探知から追撃の連鎖爆発から逃れるために1つしかなかった窓ガラスに飛び込んだだろう?あいつはその窓ガラスに誘導していたんじゃないか?最初から奴はなぜか距離をとっていた。それはつまり起こり始める連鎖爆発に逃れる距離が建物の隙間の人がギリギリ入れるスペースの個所に今までの流れが丁度そうなるように全てを仕組んだ。だとしたらさっきお前があのガラスを避けるのに都合よく建物にガラスが付いていたのも納得がいく。運がいいのではなく手のひらで踊らされていると]
『おいおいその理論なら俺がゾンビの挟み撃ちを回避して建物を無理矢理上るのも飛び降りた時建物に穴をあけ入ったのも全て計算尽くめっていいたいのかよ?』
[アースは今、保険のルートを突き進んでいる。最初の挟み撃ちも阿呆ならばどうすることもできなかった。建物間の隙間だって地に落ちていたらパイプに行動を阻まれていた。全てお前の行動は回避した体での保険の道を歩いて行っている。こう考えれば今、扉を開けるのは確かにまずかったかもな。]
『…なるほどな。だったら考えるべきだぜさらに。奴は俺が保険のルートを進み続けるからそういう保険のルートを今度はメインに考える。探知せずとも…俺は「この扉を開けずに一度隣の建物に移動してから屋上へ出る」と考えてるんじゃないかね。だとしたら俺がとるべき行動はそうじゃあない。』
[そうか、敵は線の先を読む訳か。でも念のため扉を開けるなら蹴破ったほうが安全かもしれない。]
アースはその言葉に不適な笑みを浮かべる。
『通常ルートの扉は開けない。でも保険ルートの隣の建物にも入らない。』
アースは全速力で階段を駆け下りる。そして入ってきた窓ガラスから建物の外に出て手すりを外壁に刺しながら屋上へと昇る。屋上へ到達すると隣の建物の上でコンクリートの破片を握って佇む姿が見える。
「…大当たり」
ステンレスはその言葉にゆっくりと振り返り、アースの顔を見る。その眼光はあまりにも鋭く、アースをまるで親の仇かのように睨む。
「お前が何のために俺に攻撃を仕掛けてくるのかはさっぱり知らねぇが。どうやら俺に昔からの恨みがあるようだな」
ステンレスはその言葉に更に激昂し、握りしめたコンクリートは握力に耐えられず、飛散する。そして数秒後、アースの方へと飛んだ滞空時間の長いその破片は爆発する。再び連鎖爆発の始まりだ。アースは手に持っていた手すりを全力で投げ、轟音の中、粉塵の一部が赤く染まったのを見て被弾しただろうと考える。
これをチャンスと考え、もらった再生薬を頭から被り、アースは爆発の中に突っ込む。想定通り、爆発で体中彼方此方肉が欠け、衝撃波に重い体もよろめくほどに。だがそれでもまっすぐ進んだアースは連鎖爆発のエリアを抜け、ステンレスの元にたどりつき、対峙する。
「よう、大した能力だな。作戦を制された気分はどうだ?」
「…」
[おかしい。ステンレスはなぜ動こうとしない?腹に突き刺さった手すりも抜こうとしない…]
アースは早々に決着をつけようと手すりに手を掛け、引き抜こうとした時だった。ステンレスは低く唸るような声で淡々とそう呟く。
「そう、易々と死ねると思うなよ」
ステンレスはアースを蹴り、連鎖爆発の中に戻す。そして自分の髪の毛に手を添え、引き抜こうとする。アースは焦り、距離を取ろうとするがこの爆発の衝撃波でうまく態勢がとれず、地面に倒れる。アースは仕方なくビルの隙間に飛び込むと同時に抜けた髪の毛は風に乗り、爆発を起こす。
アースは逆様に落ちつつ、右腕からわき腹にかけて得体のしれない衝撃を受けたことを実感する。そして何かを考える暇もなく勝手に右腕はアースの顔を壁に押し付けて耳を焼きながら落下していく。
「ぐぁあああ!!」
[アース!不味い!!このままじゃ間違いなく敗北する!!腕を切り落とせ!!]
「馬鹿かテメェー!切り落とした瞬間に全身が感染爆破に呑まれんだろうがァー!考えたら理解できんだろ!!」
[違う!!いっただろう!!奴の意思がなければ爆発しないだろ!だから一度逃げて隠れながら切り落とすんだ!!]
「そもそも…!切り落とさなければ爆発しないなんて保障ねぇだろうがよ!!」
[あいつは一度たりとも人間そのものを爆発させていない!最初のゾンビもコインから右手に広がり全身へと広がった!人体を爆破できるならあの時点で右手を爆発させておけばよかっただろ!?だからおそらく人体は爆発しない…!だが!切り落としたものはわからない…!!だから一度距離を取らねば!!]
アースは呼吸を乱しながら上を見上げるとステンレスが突き刺さった手すりを抜いてそれを壁に押し付けながら降りてくるのが見える。俺を感染させたから最早彼方が炙り出す必要はなくなったのだ。
アースは剛腕の右手が眼球を抉り出そうとしているのを無視して無策に街に駆けだした。




