第二章 25 感染爆破と流転の塔 2
『おい、空欄。ステンレスについての情報はそれ以上はないのか?!』
[ない。だから慎重に戦わねばならないんだ。さっきの男の財布の小銭の一つに爆破ピンを混ぜたんだろう。だから拾っている数枚では爆発せず対象の物を拾ったから爆発した。男が「またかよくそ」などといっていたからどこかで落とした時にステンレスに小銭を拾われたんじゃないだろうか]
『多分それで間違いない。被弾したこいつはまったくもって無傷であるのは謎だが。この爆発音で誰も騒がずに日常風景化しているのも謎だ。』
アースたちが考察を始めた辺りでゆっくりと被爆者の右手が動き、小銭を拾い、気づかれぬよう地面で肉を擦りながら近づける。
「気づいてるぜ。なあおいステンレス。お前が俺に小銭をぶつけて爆破させようとしているのはよォ」
アースは被爆者から離れ、辺りを大きく見渡す。すると建物の屋上に影がちらっと見え、隠れたのを確認する。今、見えてない状況で無理矢理爆発させる可能性があるのでアースは速やかに細道に避難する。案の定数秒後今度はコインが爆発する。同じように被爆者は無傷のまま。
『空欄、祖の神って複数能力が持てんのか?それか多機能で複雑な能力なのか?』
[おおよその祖の神は複数能力を所持し、且つ多機能で複雑なものだ。ステンレスも私がしっている情報が感染爆破ってだけでそれ以上はわからない。]
『それだよ、それ。感染爆破なんだ。感染爆破…それに寄生爆破があると考えている。あの青年…俺にピン付き小銭を触れさせようとしてきたが間違いなく意識はなかった。呼吸はあったものの意識のある人間としてはあまりにも奇妙な行動だ。あいつはその爆弾コインを右手で取ったから右手が寄生される爆弾に侵されているんじゃないか?まるで殺すというよりかは生け捕りのほうが近い。』
[その理屈で行くと音を消すサイレントな爆弾が存在するということか。いやでも音はしっかり聞こえたし…というか生け捕りならばなぜ前回お前を殺す必要があった?]
『実際にその時は俺の中に『空欄』がいることを知らなかったのではないか。あいつは明確な殺意で俺を殺し、だけど空欄がいるからいつまでたっても何度殺しても復活する、と。』
[だから生け捕りにしてアースから私を引きはがす作業をするか、将又監禁拘束し、生きたまま行動不能にするためなのかもしれない。なるほど。]
『お前も祖の神だったな。まあまあ便利な能力だと思っていたがよく考えれば俺の枷が能力を縛っていたわけで本領発揮すればステンレスやボルボロスに匹敵する能力なんだもんな。そりゃあそうだ。相手にとっちゃ厄介な訳だ。』
アースはそのまま細道を進む。だがしかしあることに気付き、一度立ち止まった。もしかしたらさっきの爆発で感染が全身に広がっているのではないか。だとすれば奴は歩く人間爆弾となる。さすれば奴は彼をゾンビとして俺を追いかけさせる。しかも都合のいいことに俺はいつまで続くかわからない細道に入ったわけだから必然的に反対側もそういうゾンビを用意する。
俺は間抜けなことをしてしまったのだ。そして考察通り、項垂れながらゾンビのようにしてこちらに向かってくる。もうすでに脇を通り抜けることはできない。奴の姿は上方向には見えないが確実にどこからかは観察している。もしかすれば感染者の視界をジャックできるのかもしれない。
「なめるなよステンレス…」
アースは壁を殴り、コンクリートを抉ってそこを足場にして上へと飛ぶ。さらに飛んだ先で今度は足で壁を蹴り抉り、そこを足場にする。それを繰り返して挟み撃ちの作戦を打ち消した。アースが上へ上り終えると遠くの建物の上にいる。
銀色の髪で風に髪を靡かせている青年は手に持っているコンクリートの破片をアースに向かって投げる。アースはそれが瞬時に危険だと察知し、着弾予測地点から離れる。だがしかし地に触れる前に爆発を起こし、近くの鉄骨を抉り破片を飛ばす。破片はさらに爆発を起こす。この連鎖爆発は人間の走る速度よりも速く広がっていく。
[このままじゃあダメだ!アース!建物から飛び降りろ!落下速度のほうが連鎖爆発よりもはやい!]
「わかってんだよ!!」
アースはビルの隙間に落ちる。今度は細道なんてもんじゃなくほんとにパイプが犇めき合う本来人の通るべきではないところに着地する。だがそれではだめだ、間違いなく奴に殺される。
落下中に全力で壁を蹴り、壁に穴をあける。小さな穴から壁を一つ一つ取り払っていき、なんとか建物内に侵入することができた。だが間髪入れずに爆音で不快な音が鳴り響く、アースはそれに怯む。そしてその2秒後に頭上から爆発音が連続で聞こえ始める。
「クソ!!あいつまさか音の爆弾や探知するなにかも持ってんのかよ!?」
アースは部屋に一つだけあった窓ガラスに突っ込んで突き破り、外へと飛び出す。だが飛び出した外世界の地面には小銭が散らばり、ゾンビも上を見上げて待機している。しまった。そう思ってももはや地面とはほとんど距離もなく、仕方なく建物を蹴ってなるべく遠くのほうに不時着する。
[まずいな…逃走経路がすべて読まれて先回りされている…]
『この感染爆破…かなり厄介だ…近づけさえもできない…!』
[客観的な意見だが…無傷で奴に攻撃するのは不可能だ。感染する炸裂弾と感染する人体支配爆弾…そして音を消す爆破と音で探知する爆破。これがすべて個別の能力であればかなり倒せる見込みはあるんじゃないか…?]
『ああ?あの殺害目的の爆弾とゾンビみたいにする爆弾が併用でなければ炸裂の時に突っ込めってことか?』
[ああ。じゃなければ奴に近づくのは無理だ]
『上等だよ…俺はいつだってこういう苦痛を乗り越えながら戦い続けてきたんだ。命さえ吹き飛ばなければ爆弾なんぞいくらでも浴びてやる…』




