第二章 23 虚ろの星
短いですがキリがいいのでここで。
僕等は戦争孤児だ。ある革命が起こった事で大昔に見た大戦争が再び行われた。今からもう60年以上前の出来事だが皆が鮮明に覚えている。各地で土地の争いは起こり、あらゆる負の感情が蠢いていた。
妬み、嫉み、絶望の淵に立たされ尚も生き残ろうとする者は賊となり、まだ備蓄がある村を襲う。襲われた村で孤児は生まれ、孤児たちは傷を慰め合い、賊として同じように村を襲う。絶ち切れない負の連鎖だ。
当時の大人たちは旧時代を物凄く憎んでいた。その大戦争から40年たった時代でも各地域は安定しているというのに南方だけ荒んだ紛争が絶えず行われている。僕はその、荒んだ紛争によって孤児になった者だ。
唯一救われた点とすればルザ・キルライフという老人に拾われた事くらいだろう。
彼に拾われてからは知るべきことを知れたのだ。本来知らなければならない歴史を忌むべき物として旧時代と共に葬ってしまったのだ。ルザ先生はその時代を生きてきた人間。だからこそ彼の言葉には生々しさがあった。
僕はルザ先生たちと別れ、中央王都アラドールに行った際には驚いた。僕の知っている時代とはさっぱり違っていたのだから。皆、笑顔で幸せな感情が漂っていたからだ。
僕には笑えない。この世界がある一人の男の手によって終焉を迎えようとしているのに…だがこれが葬られた歴史の残骸なのだ。何の対策もせず、情熱に、死に抗おうとした旧世界の人間達を踏みつけ、今ある幸せだけを貪っている。何千年と続いてきた世界の歴史が終わろうってのに。これを白痴と呼ばず、なんとあらわす事が出来る?
それからというもの、僕は只管抗う為に活動を続けてきた。そうしてようやくその元凶に繋がる組織に入り、幹部になるまでに至った。
幹部になってからは動きやすくなった。そうして対抗手段を増やしていた時に害虫が現れた。
名はアース。良心という名の正義のマリオネット。これまでもそういう害虫は取り除いてきた。今回だって同じこと。いつだって僕のほうが覚悟の質が違うのだから。
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アースは起き上がり、止めを刺そうと横たわるオールディの隣に立つ。しかしもう既にオールディの呼吸はない。肋骨の隙間から少量の歯と木片が飛び出させて、仰向けのまま光の無い虚ろな目で空を眺めている。
オールディは間違いなく死んでいる。ダメージの蓄積といった所か。体を見ると所々傷が治っている。私物化を発動したからだろうか?謎なのはさっきまでなかったのにオールディの手の甲に見知らぬの紋章が浮かび上がっていることくらいだろうか。
…あのまま戦い続けていたらどうなったか分からない。何手先も上を行かれた。
アースはオールディの上に乗っかってある木片を掴む。
しかし、死んだまま私物化を解くとまだ中にあった物体はこうして皮膚を突き破って出て来るんだな。生きたまま解除してもそうなるのかどうかは知らないが。
それよりも…今は何者かの戦いで町全体が火炎と悲鳴に包まれている。ボルボロスがもう既に暴れているのだろう。
[アース、選択を間違えたんだお前は]
「…なんだ、急に喋らなくなったと思ったら今度は説教かよ」
[お前の戦いの邪魔をするべきじゃないと思ったから口を開かなかった。…アース…オールディは味方にするべきだった。奴の手の甲を見たか?あれは英雄の証だぞ…お前との戦いで覚醒したんだ。]
「どちらにせよ。オールディと俺とじゃ分かりあえない。何度時を戻そうがな。」
[…]
アースはそう言い、立ち上がる。
[近いッ!警戒しろアースッッ!!]
空欄がそう叫んで間もなくアースの木片を持っていた手は爆発する。そしてその爆発によって飛び散ったアースの肉片が更に連鎖爆発を起こし、最終的にアースの周辺は木端微塵に跡形も残らずに消えた。
『紛争は終わらないんだよ。双方に我が主張を通すまで。「戦いに妥協点はない」、それが故に』




