第二章 21 大地に穿つ者 3
深夜に書いたので誤字脱字があるかもしれないです。
『メイデイ』
僕の名だ。生みの親から名づけられたものではない。生みの親はもっと別な名前をつけていたが5歳の頃外の様子を見て来ると言い残して僕の名前と共に去っていった。
『メイデイ』
ただ、単純な名前。「メーデー」「メーデー」飢餓の中、助けを請いながら荒野を歩き続けた。僕を拾った命の恩人が僕があまりにもずっと助けてくれと呟いていたものだから『メイデイ』と名付けた。
『メイデイ』
その当時僕はどんな名前か知らずに再び与えられた名に喜んだ。同じく年老いた命の恩人『ルザ』に拾われた4人の子供達に自己紹介すると嘲笑われた。
『メイデイ』の意味を知った僕はルザ先生に何故こんな名前をつけたのか聞いた。理由はやはりそのままの意味だった。でも先生の名前の『ルザ』もルーザーからもじったものだと聞くとなんだか急に親近感が湧き、メイデイはこの名を気にいった。
常に先生に憑いてる優等生、エスト・オーバー・クロニクル
無策に無謀に行動する子供、ニュートラ・マンアレイ
無愛想で自己中だった子供、アルデル・セヴァー
真面目で優等生だった子供、チープ・キャロット
どいつもこいつも僕よりも持っている人間達だった。僕は先生等と別れる時、生まれ変わるのを意識してmy all dayに改名した。僕の一日、そして全てが僕に。請いから奪へと変化させるべくして。
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アースが外の空気に触れた時、後方から木片が飛んでくる。アースはそれを掴み血をつけて投げて返してやった。オールディはそれをガードする。案の定木片が私物化される事はなかった。
「いったい何がしたい、これ以上なり下がるつもりかよ?おい」
「僕の……指を見ろよ…!!切断したんだ…激痛だったよ…でもそれよりも遥かに血を取り込む事は苦痛なんだ…痛みにも精神的にも…」
「…」
「クソがぁぁぁ…てめェ………ェェェェェ……!!知った様な……口をききやがってよォォ……!!」
「指を切断するよりずうううううっと痛い?で?なに?それで?なんだよ、おい。知って欲しいのか苦痛を、なら与えてみろよ俺に!!」
アースは情けなく吠えるオールディに向かって走る。向かうアースに我武者羅に殴るも容易く避けられアースの鉄のような拳がオールディの顔を歪ませ壁に殴り飛ばされる。
「俺をここに落とした時、お前はもっと偉大な奴に見えたよ。残念でならない。」
「くそ!くそ!くそ!くそ!くそがぁぁぁあああ!!」
なにも出来ずにただ癇癪を起こす。アースがいつ血を体内に入れて来るかといつまでたっても私物化を使う事が出来ない。今度は容赦なくアースは殺すつもりで殴りかかってきている。生きる価値もないのだろう。
『メイデイ』
また脳内で僕をメイデイと嘲り呼ぶのを感じる。僕がこの能力を使う度に僕の歪んだ貪欲な感情をそのまま映した感じがした。完璧なようで穴だらけの能力。血と酒精の弱点、僕が知る限りではそう…他にももっとあるのだろうけど。
自分の能力を知りつくそうともしなかった。そこまでこの能力を愛してはいないから。僕がメイデイの頃に手に入れた能力はもっと別な能力だった。ただ物体に自分の印を刻むだけの能力。居場所すらなかった僕の強烈な想いが具現化したのだ。今よりもずっとずっと使いどころのない能力ではあるけど…それでも僕はこの能力を愛した。
メイデイの脱出を考え始めた辺りから徐々に能力も変わり始めた。僕は請うことをやめる為にオールディになった…のに。その為に僕は僕を捨てたんだ。いつしか印をつけるだけの能力はなんでもかんでも私物化しちゃって苦痛や痛みも遠ざけた。
それもまた中途半端で…強気なのに、弱気な『僕』が抜けなくて完璧な筈の『私物化の能力』も体現するかのように硬く結ばれた決意の紐が綻んで穴が生じる。
『メイデイ』
「クソ………」
アースの猛攻撃は収まる気配もなく、血の付いた骨剥き出しの拳で殴り続ける。オールディは子供のように頭を抱えてずっと妄言を垂れ流している。それは第一印象の姿から遥かに遠く、憐みの声すら向けられる。
『オールディ…とでも、よんだらいいのか?』
名前如きで変わるかよ。僕は俺と言えば変わるのか?違うだろ。もう腕もボロボロだ。骨も木端微塵だ。でもそれでも血を受け入れる方がもっと苦痛なんだよ。やっぱり、アースに掴まれたあの時に…首を絶たれていたらどれだけ楽だったのだろう。
そう思う度に固かった決意は軟化していく。
地に立つことも止め、壁に体を預けていた状態も終わりを迎える。猛攻により壁もオールディ越しに破壊され、最早体から何かが放出される事もないのに内出血の斑点模様を描いている。体が威勢を張っているんだ。
弱々しく倒れ、寝息の様な呼吸で死の淵を彷徨っている。癇癪による言葉すらも出てこない。アースはオールディの頭を掴もうと手を伸ばす。僕の脊椎を引っこ抜いてやるつもりなんだろう。血液が沸騰するほど僕のことが嫌いみたいだし奴の頭のネジもぶっとんでるから間違いなく行うだろう。僕は無駄な死を迎えるんだな。
…
アースの手はオールディの皮膚表面で止まる事はなく頭部に侵入を始める。オールディは血の侵入によって絶叫する。そして私物化に驚いたアースが手を引っ込める前に背中に突き刺さった無数の木片達をマシンガンの様にアースの体を撃ち抜いていく。アースは余りの衝撃に空中に浮いて木片の放出が終わると同時に地面に叩きつけられる。
諦めた筈なのにどうしても体は死を拒絶する。体はどれだけ無様に泥を被ろうが生を止めたりはしない。どれだけメイデイのように為り下がっても請わないお前は、オールディなのだと、そう体が答えてくれている。僕が能力を愛さなくなってもそれでも能力はこの体に合わせて付いてきてくれる。
僕の意志に反して僕の身体は心を置いてけぼりにしてとうに腹を括っている。後は心だけなんだぜ、オールディじゃないのは。血を受け入れろ、大地を蹴れ、脆弱を殺せ、俺はまだ生きている。




