第二章 20 大地に穿つ者 2
疲れて書いたので誤字脱字あるかもしれないです
訂正しました
祖の言葉をきいて→その言葉をきいて
辛うじて…激痛に耐えさえすれば視界は見える。歪んでこそいるがまだ色の判別は可能だ。硝子を高速で回転させながら俺の手首を絶ったのか…あいつの首を切った感覚がなかった時、流石に焦りはしたが…手の傷を変な液体で覆っているって事で徐々にわかってきたぞ。
コイツは血を私物化できないのに加え血を取り入れる事が毒なんだ。最初にミラを逃がす為に撃った血の銃弾を奴は体で痛いと表現をしていた。俺の拘束から逃れる時、態々自分の指をもぎ取って俺に撃った。俺が撃った弾丸が一発あるのだからそれを使えばいいというのに。この能力は血に濡れた物質を使う事ができないのだ。
同じ理由で血が付いた手で首を切られると瞬時に再生できずそのまま死んでしまうから最初にてのひらで受けて俺の傷を塞いでから首を絶ち切らせた。そうする事によって首を切断されたとしても一時的に俺の手を私物化させて無害なものとして通過させた。眼つぶしをしたのはその能力を知られたくなかった為だ。
だが俺は気付いた。余りにも急に処理すべき事が多すぎて俺が考えに至る事を頭の隅にも置けなかったんだ。余裕ぶって落ちたオールディは誰よりも今、俺にいっぱいいっぱいであると、今優位に立っているのは俺だ。俺は「知っているのだぞ」とわざとらしく余裕を出していればいい。自ずと尻尾を出す。
「どうしたアース…僕を超えるんじゃないのか?」
「…お前なんで攻撃してこないんだ?絶好のチャンスだろう?眼も見えない手首もない…おまけに炎に囲まれて血も焼ける。攻撃手段もクソもない俺に…なにをのうのうと佇んでる?まさかお前、この程度で捩じ伏せたと思っているじゃないだろうな。」
「僕はお前に今チャンスを態々与えてやっていたっつうのにさぁぁ…」
アースはその言葉を聞いて不敵に大笑いして右の手の甲を食いちぎり、皮膚を抉り捲る。骨が見えるまで抉ると流石に炎の中でも血が止まる事はなかった。その様子にオールディは目を見開き、絶句する。
「強がるなよ、俺はたとえ足をもがれ腕をもがれ脊椎を砕かれ全身の皮を剥がされ脳髄吹き飛ばされようがお前を敵と認識し、殺害の意志が完全に消失するまでお前に向かうのを止めないからな。」
アースは血を流しながらオールディに向かって拳を振う。オールディはかなり警戒していた為余裕を持って攻撃を避ける。ただ拳を振った時に宙を舞った血飛沫が降り注ぐ。肌に触れる分には問題ないのだがそれを体内に入れるだけで悶える程の苦痛を感じるのだ。
それを恐れて万が一血が入ってしまってもいいように一度能力を解除する。仕舞いにはパニックに陥りたくないというパニックに陥り、片手で顔を覆い、指の隙間からしか見えない状態を作ってしまう。血は確かに入りにくいだろう。だが当然死角が多すぎて、瞬間的にアースを見失う。さすれば当然アースはオールディが退いている線の先に回る。そこから何も防御もしていない頭部に強烈な一撃をくらう。
派手に地面に叩きつけられて炎に突っ込む。本来ならば炎など何でもなかった筈のオールディも能力を解除してしまったせいで叩きつけられた顔全体を焼いてしまう。立ち上がるのに手を使うにも手を焼くという地獄の環境。幸いなのは手で目の部分を覆っていたので其処にダメージがなかったことだ。
この地獄の環境を奴は常に感じている筈なのに。
「…痛覚のない化物め……ッ!!」
「誰がないと言った。俺だって焼ける肉の苦痛を感じている。だがそれが何だというのだ?俺にはそれを上回る使命と憤怒の感情が覆い尽くしているんだ。お前は嬲られる者の気持ちを感じた事があるか?」
「僕は…ずっと非道な者どもに虐げられて生きてきたんだ…僕が!最も!苦痛を味わって来たんだッッ!!!」
「悲惨を決めるのはお前じゃない回りの者だ。俺から見てお前はぜんぜんそうには見えねぇよ」
「お前如きに僕の何が分かる……ッ」
「俺はテメーの理解者じゃねえから今、この場で、敵対してんだろ。お前は血を恐れた。戦いの上、被害を恐れる者に、リスクを省みる事の出来ない物に…戦場と言うこの大地に穿つ事なんかできない。」
アースが喋り終えると同時にオールディの体から一発の弾丸が放出され、アースの心臓を撃ち抜く。だが、アースは倒れる事なく淡々と喋り続ける。してやったという表情を浮かべていたオールディの表情は曇り始める。
「なんだ、お前血が付いた物質でも血を取り除けないだけで私物化出来るんだな。ありがとう、俺にお前の能力を色々教えてくれて…お陰で俺は悠々と対応が出来る。…それに、一番の臆病者はお前じゃないか。ノーリスクで勝つことばかり考えていたからこんな状態に陥ったんだぜ?能力を見せすぎたんだよお前は」
黙ってこそいるが今、オールディは燃え上る炎よりも熱い怒りを俺に向けている。ここまで散々煽られ、怒りに喚き散らし…最後には無策に飛びかかるもんだと思ったが。
…拳から奴の血が垂れている。やるせない怒りが出ているのだろう。奴は思い知っている筈だ、俺との肉弾戦の実力差を。かといって能力を使って戦おうにも俺に弱点を突かれまともに戦えやしない。『勝てない』と分かっているからやるせなさに血眼に睨み続ける事しかできない典型的負け犬。こんな奴を相手にしていても無意味だ。殺す価値もない。ボルボロスの能力でも探りに行かねば。
「何だお前。『無策に攻撃する馬鹿』にもなれず『いち早く逃走し生存を選択する利口』にもなれない。結局お前は『勝ちたいけど勝てないから何もできない餓鬼』じゃねえか。そうさ、文字通り餓鬼なんだよお前は餓えた子鬼だ。」
アースはそう、捨て台詞を吐いて壁を蹴り破り、外へ出る。




