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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 8 玩具の目が見る世界は盲目なのか

 


 明るみの大通りから離れ、一度路地の樽に手を突っ込んでからふらふらと路地裏を進んでいく。突き当たりには若干大きく、古い建物がある。ジョニーはその建物の正面玄関からではなく、裏口の方から鍵を開けて入る。鍵は閉めずに扉の前にワザと音をたてて落とした事を気付かせておく。


 入ってすぐの所に大量に亜人達が手を縛られて呻いて横たわっている。ジョニーは心を痛めながら広場を抜けてオークション会場らしき所に出る。


「…オールディ」


 ジョニーは薄暗い無人のオークション会場で緑色の目をしたスーツを着た男、オールディに話しかける。オールディは乾ききった玩具の眼球に目薬を差して光のない眼に潤いを持たせる。しっかり潤いが全体に行き渡ったのを感じるとようやく返答をする。


「なんだねジョニー、そんな真剣な表情で…僕に大事な用でもあるのかな?」


「俺は…ッ!」


 ジョニーが喋り始めた時にオールディはスーツの内ポケットから変な小型の機械を取りだし、ジョニーの臍辺りを指差す。ジョニーは血の気が引き、服を捲るとそこには盗聴器が臍の中に入れられていた。


「テメェ…いつのまに…!!」


「僕は人を信用しないんだけど…しかし裏切られた時は悲しいモノだなあ…君の選択は間違っているんだよジョニー……『正しい事をしようぜ』…ジョニィー……はは…馬鹿を見るぜ!これからなぁ」


 オールディは大声で両手を広げて笑う。ジョニーはそれに露骨に嫌悪感を示し、癇癪を起こす。


「俺はもう、我慢の限界だ!!」


 ジョニーは目の前の固定座席を引き抜いてオールディに向かって投げる。オールディはそれを避けて全速力で此方へ向かってくる。


「馬鹿を見るのはテメ―だオールディ!!」


 ジョニーは無防備のまま走ってくるオールディに対して回転式拳銃を取り出して2発撃ち込む。見事に全弾オールディの額に命中する。奴は頭を反り返し、仰向けに地面に倒れる。…が、ものの数秒で立ち上がる。額から血は出ている筈なのに…脳天をぶち抜いた筈なのに…


「なんで死なねえェッッ!!死ぬどころか!何故苦しみもしねェんだァァッ!!」


 ジョニーは慌てて心臓付近を狙って1発撃つが同じく血は少し滲みでるが死にはしない。オールディはその銃口を掴んで顔面を右拳で地面に殴り飛ばす。そして地面に落ちた銃を拾い、一発のみジョニーの腹部に撃つ。


「うぐぅぅぅ……ッ!?」


「おいおいジョニー…慌てるんじゃあねえぜ。みっともねえ…間抜け面しやがって…お前はこんな銃弾如きで死ぬかも知れねえがなあ…僕は死なねえんだぜ。銃を幾ら撃とうが剣で俺を串刺しにしようがなァ…」


 ああ、何と無く分かっていたよオールディ。お前が何故そんなに自信過剰で武器も持たず無防備なのか…絶対何か裏があると分かっていた!


 ジョニーは倒れ込んだまま両腕を全力で振り、立つオールディの足を薙ぎ払って転ばせようとするが、まるで手応えがない。


「無駄だ無駄だ!全てはマイ・オールディ…僕の物だからなァ…!」


 オールディはジョニーの右腕を踏んで笑い続ける。そこに一発分の銃声が轟く。ジョニーは性懲りもなくオールディの右の足首に銃弾を放ったのだ。やはり少しだけ血は出るが掠り傷程度だ。


「学習しないんだな君は!血が出るから効いているとでも?」


「いいや、だが…それでいい。」


 ジョニーは左腕でオールディの右足首の傷に触れ、傷口を探し、見つけるとそこに指を突っ込む。オールディはなにか違和感を感じて振り払おうとするが踏みつけていた右腕が足を放そうとしない。


「これが俺の秘策だぜ…オールディ…!!」


 ジョニーは勝ち誇った顔をして遂にオールディの足を押さえつける力が尽きてしまった。ジョニーは奥へ蹴り飛ばれる。それでも頑なに残り一発の回転式拳銃をその身から放そうとはしない。一瞬焦ったオールディだったが数秒経ってもなにも身に起きない事から安心する。


「そういや忘れてたなあ。僕の能力は遥か高みに存在している事を!ははははは!いやー顔が熱いぜ!!」


 オールディは壊れた椅子に座り、髪を掻き上げて喋り続ける。


「いやあ僕の悪い癖だなあ…つい『裏切り行為』に逆上しちまってたが…なあジョニー俺もお前を脅して従わせてたのを忘れていたよ。お前が思ったより臆病で従順だったからつい…なあ」


 ジョニーは倒れたまま意識を朦朧とさせ、撃たれた腹部を押さえて必死に止血を試みる。


「お互い悪いんだ。こっからはノ―カンにしようぜ…お互い水に流そうぜ。若干ジョニーの裏切りのが重い気がするが…僕ァ裏切りで人を殺す程鬼じゃあない。あ、やっぱなしだ。お前へんな正義マンっぽいことやってたろ?」


「ハァ…ハァ…」


「それにさ、亜人とかを大量に助けてたりしてたろ?部下の情報を把握しとくのは上司の努めだからさ。教えてくれよジョニー…別に亜人を殺そうとしている訳じゃないんだぜ…」


「…テメェ…は…嘘ばかりだろう…がァ…テメェは狂ってんだよォ…」


「おいおい、狂わず人を殺せるか?何を当り前な事をいってんだジョニー。それになジョニーお前のそのちっぽけな正義より僕の目的の方が遥かに…遥かに正義に近いんだぜ。」


「………」


「だんまりかよ?まあどのみち時間切れだ。お前らは所詮一発撃たれたぐらいでくたばっちまうからな。生への執着が足りないんだよ。」


 オールディは倒れるジョニーを回収しようと屈んで手を伸ばす。するとジョニーは拳銃の引き金に指をあてて最後の銃弾を地面に向かって撃った。


「助かったぜオールディ…ハァ…ハァ……テメェ―が長ったらしく話し続けてくれたお陰で…全体にアルコールが行き渡らせる時間が稼げた…」


「…あ?」


 銃口から炎が噴いてみるみるオークション会場全体に広がっていく。アルコールがステージから扇状に座席が広がりその通路の坂の地形通りに下に下へと流れていく。その液体から燃え移り、勿論オールディの全身にも火がつく。


「な、なんだこれは…燃えている…!僕の体内から!僕の傷口が!火を噴いているッ!?ジョニーテメェ―!!僕の体内にッ!アルコールを注ぎやがったなァァーーー!」


 ジョニーはオークション会場の上の座席の方で体からアルコールを流しながら燃えるオールディに向かって指を射す。


「マイ・オールディこれが秘策だ。此処に来る前に念のためにアルコールを摂取しておいた…お前が用意した祝いの酒をな……それにお前は与えられる全てになにかと耐性を持っているようだからなァ…お前の体内から奪ってやるぜ…酸素をよォ…窒息しろッ!オールディ!!」


 燃えるオールディは会場全体を震わせるような叫び声を上げて自らの爪で体中を引っ掻いて血や肉片を彼方此方へ飛ばす。そして次第に動かなくなる。ジョニーはオールディの死姿を確認すると張り詰めていた緊張を解く。


「ハァ…ハァ…勝った…勝ったぞ…!」


 ジョニーはそれを見届けると血が噴き出す腹部を押さえながらゆっくりと立ち上がり、オークション会場を後にした。


「………アースに伝えねえと…」





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