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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 5 愛しき彼女の殺害予告

 

「…は?どういう事です?お…わ、私は…亜人拉致から女王様の身を守る為だと…」


「表面上はそういう事だよ。ただ私は明確に「女王が亜人」だとは言っていないからね。この部屋が防音だから今の今まで本当の作戦内容を言えなかったんだよ。フィストレア様を暗殺した者は既に処刑されている。そして女王の存在は外部には一切漏れていない。だから女王を殺す者が女王が亜人か人間か分からないよね?」


 ミーナはにやりと笑い、アースはその言葉すらまだ理解できない。意地悪なミーナに執事は呆れた表情で髭を一度触ってから口を開く。


「そういう事ですな。これは所謂保険と言うものでして、もし既に我々の作戦が外部の人間に漏れていた場合の気休めです。あなた方の会話を盗み聞きしていた者はきっとアース殿と同じ結論に至る所でしょう。女王様の姉フィストレア様のように暗殺という形で殺しに来るなら目立った行動はしない筈、余計な事はしないで亜人だけを殺すでしょう。我々の屋敷には亜人の召使いが2人程いる。これは最悪の場合だが彼女らにも犠牲になってもらう可能性はあります。」


 女王の命が掛かっているとは言え執事が非道なことを言いだすのでアースはあからさまに嫌悪感を出す。執事はそれに気付いて少しだけ表情を軽くして喋る。


「ははは、悪いね。私の悪い癖だ。勿論そうならない為に我々は全力を尽くすし、君らはいるのでしょう?」


「私も女王様の為に全力を尽くしますが…そもそも最悪のシナリオの犠牲者…彼女達にはその話は伝わっているのですか?」


「勿論、当然です。私、ギレオを始め、この屋敷にいる召使いのほぼ全員が女王の為に命を捧げてもいいと考えている。気持ち悪く見えるでしょうが我々はアストレア女王の母、メアリー・リゲイル前女王に命を救われた身です、私共は彼女の血族の為になら命など惜しくはないのです。それも拾われた命をメアリーの娘アストレア女王に捧げ、死ねるのなら本望です。」


 アストレアが照れ始めて執事ギレオがまだまだ熱く語りそうになるとミーナは大きく溜め息を吐いて大きく手を叩き、ギレオの話を無理矢理終わらせる。


「話がずれてるよ。そんな忠誠心を語る時間じゃないでしょー」


「…失敬。これも私の悪い癖だ。本題に戻ろう、まず君がこの作戦をしっかり理解すべきだと私は思っているのです。なにか疑問に思った点などはありますかな?」


 その言葉を聞いてすぐアースは二本指を立てて回答する。


「何故女王が殺害されると分かったのか、女王を守る作戦の具体的な指示。この二つです。」


「これは『スイゲツオオスイレン』別名『予言草』といいます」


 執事は黒いケースから小さな睡蓮を取り出して皿ごとテーブルに置く。


「このスイゲツオオスイレンは名前の通り月の影に向かってこの種が多く集まる植物です。この植物自体は古くから存在していたのですが、最近ある書物によって『特殊な効果』がある事を我々だけが知りました。」


「その特殊な効果が予言と?」


「ええ、その通りです。「馬鹿げている」そう思いでしょうが理屈はあるのです。」


 そう言うと執事は睡蓮に指先を触れる。すると睡蓮は青く妖しく光り出す。


「ふむ、アース殿は素直の様ですな。これっぽっちも私を疑ってなどいない。」


「なるほど。その色で思考を判断するわけですね?」


「ははは、思考とはまた違うもの、人間特有の『感情』です…この睡蓮が表す色は感情の方向。」


「…しかし、どうやってそんな作用が起こるのです?魔法か能力なのか…」


「我々人間の体にはだれしも『マナ』という物質が体内にあります。そして空気中にもマナはあります。上手くその睡蓮は触れた人間内のマナと空気中のマナを連動させ、触れた人間に対する感情をその睡蓮に映し出す事が出来るのです。」


「ほう、この青色は疑いのないという色ですかな?」


「まあ少なくともそうでしょう。…と言ってもそこまで細かく見れる訳ではないのですよ。負の感情を抱いているか抱いていないかだけ。疑惑や不信がある程度含まれているならば黄色に変わります。それが重くなるにつれ敵意などハッキリした負の感情が抱かれている時は赤く染まる。この敵意の強さが強まるほど赤色は黒く変わっていく……女王アストレアはこれを触った時真っ黒の睡蓮にかわりました。瞬間的な殺意でさえ淡い赤色で済むのに真っ黒とまでなると最早疑う余地はないでしょう。」


 アースは大凡納得した上で最も気になる部分である、ある疑問をぶつける。


「…しかし何故明日に殺されると?」


「これはこの睡蓮の優秀な所です。この部分は私達にもさっぱり解りませんが1分間触れ続けると色が変わる。これは書物によると次の日の向けられる感情の色だそうで最大2日後まで見る事ができるのです。昨日女王が触れた睡蓮は今日まで黒く、明日は黒から白へ変わりました。白というのは肉体の死を表すものらしく、日にちを特定する事が出来ました。」


「書物にその未来予知が何故出来るかは書いてないのですか?」


「書いてはいるのですが…古い書物故、文字が擦れて読めないのです。もしこれが嘘だとしても…女王様に死の可能性が1%でもあるならば我々は全力で阻止します。」


「…分かりました。次に作戦の具体的な指示をお願いします。」


「具体的な指示というと明日のアース殿の行動についてですかな?」


「はい、そうです」


「そもそもが貴方がたに来てもらった理由は「中央の王都から作戦を聞かれていた」という最悪事態が万が一起こった場合です。女王様は亜人ではないので狙われはしないのですが屋敷への侵入を防いで頂きたいと考えております。単独行動は避け、なるべく二人以上で屋敷内の身回りが主な仕事内容となります。」


「分かりました。」


「なんだ意外にきっちりしてるんだねー」


 ミーナはけらけらと静かに笑い、アースは気にしない様に「私からは以上です」とアースは礼をする。ひとくくり話が終わると執事は立ちあがり、扉の前に立つメイドに指示を出す。


「さて、お二人ともお疲れでしょう。メリーアさん風呂や部屋の案内をお願いしますね。私は警備体制を再確認するのでまた夜に会いましょう」


 そう言われ、全員が立って部屋の外に向かおうとするとアースただ一人がその場に突っ立ったまま親指と人差し指で眉を触っている。三人はアースに注目する。


「アース?」

「?」

「アース殿?」


「メリーアさんは何年ここで働いているんです?」


 その質問にも「何を言っているのか」という表情で女王はアースを見るが他の全員はその言葉の意味を理解して足を止める。


「大丈夫大丈夫、メリーアさんは女王が生まれた頃に来た古株だからねー」


「ふむ、アース殿は「もし既にメイドとしてこの屋敷に侵入していたら?」というのが心配なのでしょう。それもそうだ…フィストレア様が殺害された頃から犯人が屋敷の警備をものともしないメイドならば…と。」


「ええ、そうです」


「でしたら安心して下され、フィストレア様が亡くなったのはもう5年前、その上メイドの変化はここ10年殆どありません。二人だけです。一度メイドになって止めた者、彼女は今は西の王都で暮らしています。突如東の王都にくる可能性は王都の関係上あり得ません。もう一人は1年前に入ってきたステラという者です。勿論彼女には悪いですが今回の件は伝えておりません。少し休暇を与えて屋敷から離れて貰いました。裏切りの可能性は皆無かと。」


 アースは安心すると同時にメリーア本人の前で無神経な事を言ってしまった事にハッと我に返り申し訳なさそうに頭を下げる。その姿にメリーアは慌ててギレオは感心する。


「すみません…配慮が足りませんでした…申し訳ないですメリーアさん、ギレオさん」


「そんなとんでもないです!頭を上げてくださいアースさん」

「いえいえ、アース殿が今回の件に非常に真剣だという事を改めて感じさせて頂けましたよ。」


「あのう、話は終わりましたか?」


 女王がギレオの顔を覗いてそう聞く。すると場の空気は和やかなものに変わり、ギレオも頬笑み、笑いながら「そうですな、アース殿達も早く風呂に入りたいでしょうし」と皆、部屋を出て散開し、アースとミーナとアストレアはメイドに案内されて風呂場に向かう事にした。



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