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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 2 蠅の王

 

「申し訳ないね。まだ脳味噌が微妙に寝ている状態なんだ。まだ起きるような時間じゃないし…どの道東の王都までいくのに車とか電車とかで行くんだろ?ならそこで色々話を聞くよ。」


 アースの言葉を聞くとミーナは拍子抜けした様な顔をして更にアースの真面目な顔を見るといきなり声を出して腹を抱えて笑いだす。


「あっはっはっは!面白い事言うねー?そんなのとっくの昔になくなっちゃったよー!どうしてそんなこと聞くのさ!腹筋壊れちゃいそうだよー!」


「おいおい、静かにしろよ、後ろで皆寝てるんじゃないの?大体車とかじゃなかったら何でいくんだよ」


「そんなの馬車に決まってるよー!ああそれとも乗用車とかじゃなくて軍が保有してるオフロード車とかの輸送車とかの話してる?それならあるけどさーそもそも外の世界を見ればとても車なんかじゃ走れないことくらいすぐわかるよー。だって道悪いし!!」


「そんなボリュームじゃみんな起きちゃうぞ?」


 でもなんとなく乗用車がない理由は分かったが…それじゃ消えたとはどういうことなんだ?この世界には道路もあってもっと近未来的な世界だったのか?全く信じられないくらい…ていうか見た感じでは想像もできないな…まだ町の外へは出た事はないが気になる所ではある。


「コールドスリープでもしてたんですかー?って、あはは」


 …まだミーナは笑ってるのか、笑いのツボがおかしすぎる。


 それを見てアースは溜め息を吐きソファーに座って先程の書類に目を通す。しかし…要注意団体なんて山ほどあるじゃないか…『アルザント』『α』『刻印』『神』以外にも…『祖の神』『幻魔獣』『八龍』『鬼族』『DE』『キングB』『デウスの信者達』…組織だけじゃなく単体でも恐ろしい奴がいるのか、要注意人物…『ジスト』『ボルボロス』『ビシブル』『拷喰』…四人か。


「…うるさいですよミーナさん」


 先程の笑い声だろう。数人の団員が目を擦って欠伸をしながら寝間着姿で奥の部屋から出てくる。ミーナは注意されてから声のボリュームは落としたが相変わらずクスクス笑っている。団員等はアースを見ると各自おはようございますと挨拶する。こうしてみると男女の比率は五分五分だ。その上スリムな体型をした人が殆どだ。イメージ的にはむさ苦しい筋肉自慢共が集う組織だと勝手に思っていたが力自慢でも技術的な意味が強いのか。


 ミーナは笑い涙を拭き、アースを別室へ誘う。此方は先程の部屋より快適だ、いや…全然違うななにもかも。空気は澄んでいるしソファーは柔らかい、おまけに心地よい光が入ってくる。快適すぎる程に快適だ。そんな興奮を隠せないアースを尻目にさっきとは打って変わって真剣な表情をしてソファーに座り対峙する。


「馬車はあと2時間もすれば来るからそれまでちょっと重要な話をするよー。」


「そういえばまだ仕事の内容を聞いてなかったな。何をすればいい?」


「アース、君がやる仕事は実を言うと「戦う事」じゃないんだー。一番重要なのは王女を監視する事。本格的に始めるのは明日からでいいよ。質問は東の王都でもう一度詳しく説明する時にお願いねー。そしてこの約束はかならず守って欲しい。『ちょっとした異常があった場合でも報告する事』と『単独行動を絶対にしない事』…この二つは絶対に守って欲しいんだ」


「ああ、とりあえずは了解…ああ、馬車が来るまでに2時間時間があるんだろう?なら仮眠してもいいかな。今日は朝早くに起きた物で体調が余り良くない。此処はファンが回ってないし快適だからさ」


「ああうん、いいよ。行く時起こすね」


 アースは遠慮なく人に見られればドン引きされるほど満面の笑みを浮かべながらソファーに横たわり、快眠を迎えた。

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

『何が起こったんだ?人形を破壊する事は出来たのか?』


『…人形を分解する事には成功した。』


『…成功だろう?じゃあなんでそんな顔をする』


『分解という意味では間違いなく成功だろう。だが、問題の能力は今も尚継続したままだ』


『いいや、まだだ。もう一度分解すれば…』


『これが…我々が手を尽くして作ったチャンスだった。だが失敗したんだよ我々は。あの人形は我々が考える程甘くは無かった。私が人形の姿を目視しただけで呪いは始まった。セレシア…私ももうすぐ終了する。影響を受けてしまったんだ。姿を、認識するだけで。』


『………アビス…。』


『影響は空気すら侵す……我々は敗北した。最終の壁である我々がだ。事実上人類の敗北だ。』


『…』


『三日もすれば存在すらなかった事になるだろう。それでもお前は少しでも生きるべきだ。リリアと共に遠くへ逃げてくれ。』


『また…私を一人にするつもりか…?』


『…セレシア…この事件は起こり得ない…起こってはいけない事件だ。生を望むが故に…醜く退化を加速させる。奴らは幸福を履き違えている。だから…二度と繰り返す事のない様に…何巡後の世界に残さなくてはならない…この悲劇を…惨劇を…そして答えを。もうすぐ人形は空気に触れる…もう私も曖昧になってきた…はやく…逃げろ…』


『…クソ………必ず……必ず解決策を見つけるからな…アビス…』

 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


 アースは目を開く。意識は先程まで眠っていた状態とは考えられないほどかなりハッキリしている。だが今回の夢は俺の記憶なのかどうか曖昧だ。あれだけハッキリと夢を見たのに記憶と結び付ける事ができないのだ。夢に一度もアースの名前が飛ぶ事はなかった。ならば何故俺はこの夢を鮮明に覚えている?目覚めても謎、起きても謎だらけ。考えてるのが馬鹿みたいだ。


 アースが体を起こすと同時にミーナが子機を持って部屋に扉を蹴って入ってくる。


「なんだ、起きてたんだ。派手に起こそうと思ったのに」


「なんだ…もう二時間経ったのか?」


「経ったよ、それになんか君指定で電話来てるけど?知り合い?」


「いや…どうだろう。貸してくれ」


 アースは子機を受け取り、一度深呼吸をしてから耳に当てて「もしもし」と口にする。


『二度逆行したな。私は直接お前の事を知らない』


「お前は誰だ?俺がどういう存在か知っている奴がいるのか?」


『私は君と会話をする為に話している訳ではないのだよ。これは最高位の親切であり、お前の人生最高の警告だ。派手に暴れまわるのはいいが私の邪魔はするなよ


 警告と同時に電話は切れる。本当に一方的に何か文句を言ってきただけだ。しかしなぜ俺が二度逆行した事を知っている?もしかして記憶に残る逆行なのか?それにまた教授…か。いよいよ勘違いじゃ済まされなくなってきたな。あの化物達は確実に俺の命を狙っている。


「大丈夫?」


 余りにもアースが目を見開いて真実を抉り取られたように汗を大量に掻いて呼吸を荒くしていたものだからミーナが心配そうな表情で俯くアースの顔を覗き込む。


「悪い、大丈夫だ。自分を知る者がいて少し安心しただけだ」


「安心したっていう感じではないよねー?」


「まあ驚きもあるさ。馬車が来てるんだろ?待たせちゃ悪い」


「…」


 ミーナは真顔のまま少し沈黙して「じゃあ行こうかー」と部屋から出ていく。今の電話のせいかは分からないが開けっぱなしの扉の影が少し恐ろしい。なにか得体のしれない化物がそこから出てきて命を狩られる感じがする。この現象は廊下に足を踏み入れてからも変わらなかった。その深い底の見えない深淵から常に監視されている。きっとそんな事はないのだが確実ではないという不安に押しつぶされている。


 そんな状態のアースに気を使ったのかミーナはもう一度戻ってきて「ボサっとしないで早く行くよ」と腕を掴み、外まで引っ張られた。アースは気遣いに心を落ち着かせ、呟くように感謝した。










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