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キルライフ  作者: 沼郎
第2章 嘘を吐いた自己正義達
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第二章 1 現実と夢の境界線にて

忙しいので遅いペースで更新

 


 心地のいい睡眠の中、夢なのかは定かではないがしっかりとした意識があるのに辺りが暗黒に包まれている。もしかしたら夢と現実の狭間にいるのかもしれない。


[こんにちはアース、お疲れ様。]


 なんだ…?なんの声だこれは?


[まともに会話するのは今回が初めてだったな。私の名前は空欄だ。意識体だけの存在だから姿を探す必要はない。]


 …………。


[しかし、お前が人の為に行動するとはな。…正直驚きを隠せないよ]


 ……なんか、それよく聞くな。俺の過去を知っている人間はみな口を揃えて俺の事を知った様な口を利く。お前が知っている俺の過去はどういう物だ?


[至上最低で仲間すら自分の目標の為に犠牲にして最期には何から何まで奪っていって勝手に消えたクズ野郎だった。]


 聞く限りはそうだろう。…だが、それは過去だ。俺は何も覚えちゃいないしそんな腐った人格ももう存在しない。聞きたくもない思い出話はもういらないよ。そして…お前は何の為に俺に話しかけているんだ?


[理由は無いし私も実際の所何がどうなっているかなんて分からないんだ。ただ一つハッキリしているのはお前の意識が曖昧になっている場合に私とコンタクトが取れるという事ぐらいだな。]


 …そうか。


[ああ、そういえば。お前記憶がないんだよな?能力やら魔法の事を教えておいた方がいいな。この世界の知能を持つ生物の五割以上が多種多様な能力を持っている。そしてこの世のすべての人間が少なからずマナを貯める事ができる器官を持っている。お前はマナを貯める器官は人より多いが肝心な魔法を使う事ができる器官がない。だから今回は能力だけの説明をする]


 …俺にも能力はあるのか?


[…それは分からない。能力や魔法に最も詳しく、仕組みなどを全て解明したのは昔のお前なんだがそれを公表する事はなかった為に結局今も謎に包まれている。現状分かっている事では能力は記憶と深く結び付いている事と死んだらそれを失ってしまう事だな。昔じゃ世界樹に能力が還元されるとかいう説もあったが実際そんな事はないだろう。それに能力は基本一人ひとつなのだが中には複数の能力を持つ物もいる。真実を知るのはお前の過去のみ、だな。だが、今後発生する可能性は十分あるだろう]


 独占欲が強かったようだな。ああ、だがありがとう。空欄?だったか?


[…名前はもうどうでもいい。空白でも空欄でも名無しでもなんでもな]


 じゃあお前が名乗った空欄で名前を呼ぶ事にするよ。


[そうしてくれ。じゃあそろそろ目覚めの時間だ。また会おう。]


 ああ、また明日。

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

  手足が痺れている。人生の中で指十本に入るほど目覚めが悪い。体の至る所に鈍痛が響き、この天井のファンが体の体温を奪っていき、ソファーに寝転がり、しかも酷い体勢で寝たものだから手足が圧迫されて血が通っていなかった。おまけに喉が渇いている。珍しくまだ寝ていたいと思わない起き方だ。しかし昨日事務所の風呂を借りたが…何から何まであの世界と同じだった。一体なにがどうなっているのやら…。


「おはよー」


「…おはよう…テレビが好きなんだな」


 目を開いた瞬間に挨拶が飛んでくる。ミーナはテレビの前のソファーに寛いで細長いパンを齧りながら見ている。挨拶を済ませたミーナは質問に答えることなくアースが起き上がったのを確認するともう一つのパンを投げる。アースはそれをキャッチして礼を言い、直ぐに口に運ばずにキョロキョロと辺りを見渡す。


「まだ他の連中は帰ってきてないのか?」


「…ああ、今事務所明るいし外も眩しい街灯で照らされているから8時くらいにみえるけど今4時ねー。みんな仕事終わって奥の部屋で寝てるから静かにしてねー?…あ、一様全員に寝顔と一緒に紹介したから大丈夫だよー」


 アースは目を擦って視界をハッキリさせてパンを一口食べてから口を開く。


「なんか変な事言われた気がしたけどまあいいや。それより…ごめん、飲み物何かないか?」


「適当に冷蔵庫の中の飲み物のんでいいよーそこの棚にコップ入ってるから」


「ありがとう」


 アースはコップを取りだし、冷蔵庫にあるペットボトルの水を汲み、喉を潤す。そしてテレビの近くの椅子まで移動して飯を食べながら映像を見る。ずっとニュースばかり見ているのだろうか?明らかに娯楽ではなさそうだが。


 アースはミーナの許可を貰い、洗面所で使い捨ての歯ブラシを使って朝の支度をする。そして居間に戻った時にミーナに話しかけられる。


「亜人拉致事件…ね。アースのいた世界でもそういうのあったの?」


「…亜人か」


「?」


 忙しい昨日を終えて、今一度記憶を振り返ってみると…冷静にまとめてみると…実はあの世界の方が夢でこの世界が元からいた世界なのかもしれない。此方の世界の情報が余りにもすんなり入ってくる。おまけに記憶すら蘇っている始末だ。なんらかの理由で記憶喪失になり、それと夢が重なった所為で俺はもう一つの世界を勝手に作っていたのかもしれない。


「それについての話があるんだ。実は記憶がないっていうのは本当なんだよ。ちょっと今は俺自身が混乱しているから夢と混ぜてしまっただけなんだと思う。少しだけだが記憶も若干ある。だから昨日は混乱させ…」


「いいよ別にー。まぁそんな事だろうとは思ってたからねー。じゃあ質問を変えるよ…亜人を拉致してなにをすると思う?」


 ミーナはテレビを一旦消してアースの方に完全に体を向ける。アースはそれに対して真面目に意見を述べる。


「人身売買って所だろう。この世界の亜人の希少価値をしらないものだから…でも目が覚めてからの町並みには人と同じくらい亜人がいた。だからコレクション目的とかじゃなくて性処理の奴隷や労働目的に使う使い捨てじゃないかな。今の知識で言えるのはこれくらいかな」


「ふーん、案外普通な事を言うんだねー。でもこの事件、不思議な事に中央王都でしか発生していないしそういう売買の情報が一切ないの。可笑しいよね?個人で収集しているには有り得ない速度の拉致数。しかもこんなにも巡回騎士や警備騎士が警戒しているにも関わらずさー。でも最近になってやっと…情報が出てきたの。東の王都でも発生したってね」


「それを何故俺に話すんだ?」


「君の腕を見込んでだよ。昨日はその厄介事を招いた君の腕をだよ。君はやはりそんな仕事で生涯をくだらなく費やす人間じゃない。此方の方が絶対に合うよ。今、仕事がない上に住居もないでしょ?ならこれから仕事を与えるからどうかな?」


 アースはほぼ即答で答えを出す。


「え、本当にいいのか?多分俺は全く役に立たないと思うけど…それでもいいなら是非」


「決まりだねー…それじゃあその上で知っておきたい要注意組織とか教えておくねー」


「要注意組織?亜人拉致とかに関係あるかもしれない組織ってことか?」


「そうそう」


 ミーナは棚の上の段ボールを一度床に降ろして一枚一枚書類を確認して目的の物を見つけるとそれを持ってソファーに座り、内容を読みつつアースの目を見て喋る。


「えっとね、まずは『アルザント』ね、北の王都は今この組織に占領されていたんだけど今はキュリーワ―リーっていう組織が出てきて冷戦状態だね、アルザントは前に数人拉致した事があるから一様。次は『α』っていう組織。この組織は名前がないんだけど此方の方でαと付けておいたよ。この組織は多種多様な犯罪を行っているし未だに正体を掴めていない要注意団体だね。他にはー…ああそうそう『刻印』。情報自体は皆無に等しいんだけど私が生まれる前の戦争で最低最悪な殺戮集団だったらしい。今はもう殆どいないみたいだけどね。これは…いやわからないか。アースが少しでもこの世界を知っているなら知っていると思うけど『神』っていう団体があるんだけど様々な犯罪行為を行っているよ。まあ言ってしまえば全ての組織が怪しいっちゃあ怪しいんだけど有力なのは『α』かなー?あとは…」


「ごめん、とりあえず組織名だけ覚えておくよ。」


「…ゆっくりでいいよ」


 ミーナが更に喋ろうとしている所にアースがとても申し訳なさそうに謝る。するとミーナはそれ以上書類を読み上げるのは止めて小さく溜め息を吐いて目的の書類だけ机に置いて段ボールを棚に戻した。



訂正 勝手に消えた奴ようなクズ野郎だった。→勝手に消えたクズ野郎だった。

   機関、期間→器官

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