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灰色の冒険者  作者: 水室二人
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愛しい猫にさよならを

 私は、今悩んでいます。

 組織が大きくなり、これからの事を考えると、色々と決断をする必要があります。

 仲間を、失うという経験をしました。

 付き合いは、浅かったとはいえ、仲間にした存在を失うというのは、結構ショックでした。

 今日まで、異世界に来て多くの命を奪った存在の、その重みを、再確認できました。

 組織の長として、今後部下に死ねと命令する日が来るかもしれません。

 裏切り者には、死あるのみと言う掟は無いですが、作る必要が出来る可能性もあります。

 そう考えると、恐ろしくて手が今更ながら震えます。


「滑稽ですね」

「その通りかな・・・」


 一緒に寝ていた十色が、目を覚ましそういいます。

 今の彼女は、十色ではないみたいです。

 守護獣の意識が強く出ているのでしょう。先日、十色だけが表にいたので、その反動かもしれません。

「貴方の、その姿を見て、私の正しさを実感できました」

「正しさ?」

「貴方を殺さずに、復讐する方法。貴方を殺さないと言いましたが、復讐を止めたわけではありません!」

 彼女のから、強い思念が流れ込んできます。少し触れ合っただけの、気弱な青年への強い感情。

私には、無い感情なので少しうらやましいです。十色との関係は、ここまで情熱的ではないと思っています。

「貴方の大切なものを、私が奪う。貴方と同じ事を、すれば良かったのよ!」

 そう言って、十色は、何かを召喚します。

「これが何か、わかる?」

「眠りの棺ですね」

「そう。貴方の可愛い妹が、入っている物よ」

「・・・」

 私には、妹はいません。でも、彼女はそう信じています。

「貴方は、この子が寝ていると思っているけど、それは間違い。私が細工をして、既に目覚めています」

 守護獣は、語ります。


 十色が深く眠っている間に、勇気に細工をしたこと。

 亡者を取り付けて、中の本体は別の所に封印しているとの事。

 眷族を利用して、メトロ・ギアに複数の仕掛けをしてあるとの事。


「私の命令で、このメトロ・ギアは大爆発を起こす。貴方は無傷でも、他の人はどうかしら?」

「はぁ・・・」

 それを聞いて、ため息が出ます。

「それくらいの事に、私が気づいていないとも?」

「強がっても無為だです。僕よ、爆破装置を作動させなさい」

「了解しました」

 館内放送で、返事が聞こえてきます。その声は、にいでした。

「精霊猫は、私の僕。どんな命令でも、実行します」

「これより、自爆装置を作動します。各院は、マニュアルの5ページ目を参考に、行動してください」

「5ページ目?」

 守護獣は、放送を聴いて、不思議な表情をします。

「面倒な方法を試すな・・・」

 それを聞いて、私は素早く酸素ボンベを加えます。小型のもので、各部屋に常備してあります。

「え?」

 その行動を、動かないまま見ていた守護獣は、次の瞬間苦しみだします」

「「ぎゃぁぁぁぁっ!」

「一応、体は十色だから、あまりきついのは、無しでやってくれ」

「十色様だかえらこそです。私達の事を思う気持ちはありがたいけど・・・」

「自分で行動するから、余計な事言わないでって、お願いしたのに・・・」

「そうです。もう少しで、私達進化できそうだから、その時お願いするつもりだったのに!」

 三姉妹が、無線で文句を言っています。先日の会話を、聞いていたみたいです。

 メトロ・ギア内の会話は、ほとんど記録されています。場所を考えなかった十色が悪いですね。

「な、なんですか、これは・・・」

 苦しみながら、守護獣は呟きます。

「避難訓練のしおりの5ページ目。空気中に有害ガスが発生した場合の対処法。読んでいないのですか?」

「そんなの、知らない!」

 守護獣が、好き勝手夜中にやっていたのは知っています。

 だから、逆に守護獣が眠っている間に、十色が好き勝手やっていただけの事です。

「いくらお兄ちゃんでも、お姉ちゃんをいじめるな!」

 眠りの棺から、勇気が飛び出します。

「っく、こうなったら、自決しなさい!」

「はい」

 勇気は、守護獣の命令を、なんの躊躇いも泣く実行します。

「あれ?道具が無い・・・」

 それ用のものを、持っていたのかもしれませんが、今の勇気は何も身に付けていません。

「と言うか、なんで裸?」

「偽物だからね。本物と間違えないように、そうしました」

「偽物?」

 勇気は、私の事を小父様と呼んでいます。

 これは偽物。以前、無名が作ったアンドロイドを、改良したものです。

「でも、私は、私は・・・」

「嘘です。さあ、これを使って、自決しなさい!」

 守護獣は、隠し持っていたナイフを手渡します。

「うん」

 限りなく、人に近い存在なので、守護獣の暗示にかかっているみたいです。

「あれ?」

 勢いをつけて、ナイフで自分の体を刺したのに、それは体に傷一つつける事は出来ませんでした。

「ほら、君は勇気がいなくなった後の癒し要員だから、今はもう一度寝なさい」

「はい」

 私がそう言うと、大人しく眠りの棺に戻ります。

 私が切りつけても、彼女に傷をつけるのは難しいです。それくらい、頑丈に出来ています。

「わ、私を、馬鹿にしているの?」

 守護獣は、かなり怒っています。

「馬鹿にはしていませんよ。原因を作ったのは私です。出来れば、貴方の望みをかなえたいと言う気持ちはあります」

「なら、いま直ぐ、死んでよ!お兄ちゃんを、帰してよ!」

 あの青年のことを、守護獣はそう呼んでいたのですね。偽勇気が、そう呼んだのは、彼女の意思が影響していたのかもしれません。

「私の力でも、死者は元に戻せません」

「なら・・・」

「残念ながら、私は死ぬつもりはありません。今死んだら、色々と無責任ですからね」

「そう言って、私みたいな存在を作るのですよね?愛しい人を殺されて、悲しむ存在を、作るのですよね?」

「えぇ、そのことに関しては、否定はしません」

「何故?」

「生きたいから」

「そんな理由で、貴方の行いが許されると思っているの?」

「思っていませんよ」

 別に、誰かに許されたいとは思っていません。

「狂っているの?}

「残念ながら、それも否定できないです」

 私が、正気なのか、正直自信がありません。まともな、精神ではないのかもしれません。

「なら・・・。これで、私が見れないのが残念だけど、少しでも貴方が苦しむ事を、願いします」

 そう言うと、落ちていたナイフを拾い、自分の胸に突き刺します。

「おに・・・」

 最後にそれだけ呟いて、守護獣はあ倒れます。その体は、十色のものでもあります。

 十色を巻き込んでの、自殺と言う感じになってしまいました。

 混ざり合った魂は、今、この瞬間分離しました。

「むぅ・・・」

 こうなる事も、予測していました。

 事前ポーションのおかげで、傷は回復しています。ただ、死を望んだ結果、守護獣の魂だけが、それを受け入れて体から抜けてしまったのです。

「お疲れ様です」

「にゃっとく、いかにゃい」

「影響はあると思っていましたが、こうなるとは・・・」

「にゃ~!」

 守護獣が抜けた十色は、以前より小さくなってしまいました。

「その姿も、可愛いですよ」

「この、にゃりこん」

「褒められたと、思う事にします」

「褒めてにゃい。褒めるわけにゃい、褒められにゃい!」

 少し小さくなった十色の叫びは、この後しばらく続くのでした。




 3日に1度のペースで更新予定です。

 アルファポリスさんでも投降しています。



 第7回ネット小説大賞に参加中です。

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