黒い月 その2
カオス・ブリンガーはゆっくりと浮上しました。
これだけの質量のある物体が、衝撃を発する事も無く浮上するとは、魔法と科学の混ざった力と言うのは、恐ろしいものです。
この要塞の動力は、太陽炉と名付けました。
強引に、魔法の力でミニ太陽を再現した物を使い、それを変換してエネルギーとしています。
それを利用した、植物工場なども生産する予定です。
現状、この要塞にはそこまでの施設はまだありません。
作戦司令室も、中心部に仮の状態であるだけです。
巨大な建造物なので、空間は色々とあり、後日何を作るのか、相談して決める予定です。
「星を、回るのじゃないのかにゃ?」
「・・・」
現在、大気圏をゆっくりと突破しています。この速度で、大気圏を突破できるとは、やはり凄いとしかいえません。
「何処か、具合が悪くなったりはしませんか?」
「大丈夫にゃ」
「もう少し、遠くまで行きますよ」
「星から、離れるのかにゃ?」
「確認したいことがあるので」
カオス・ブリンガーは、大気圏を越えた後加速して、ある場所を目指します。
「もう直ぐ、目的地になります」
「・・・」
その場所に接近すると、十色は無口になります。先程から、監視していますが、体調に異変が出ています。
「もう少しです、頑張ってください」
「にゃぅ・・・どうして?」
「私を殺そうとした、理由を知るためです」
過去に十色は、2度私の命を狙っています。何か考えがあると刃思っていますが、理由がわかりません。
もう直ぐ、大事な日が来るので、それまでに白黒付けておきたいのです。
「私が死んだら、どうするつもりだったのですか!!」
ある場所を越えると、十色が元気になりました。口調が変わり、表情も若干変化しています。
「死んでいたら、多分私も死んでいましたよ」
「心中するつもりだったの?」
「それもいいかなと、思っていました」
「もう・・・」
異世界に来て、色々と命を奪っています。その重圧に、ちょっとつぶされ掛けていました。
「宇宙に来て、何がしたかったの?」
「人類の、革新の可能性を感じるため」
「本当に?」
「冗談ですよ。ここまでくれば、あの星のサイコフィールドの影響がなくなります。そうなった時、私達がどうなるのか、確認したかったのです」
「無茶をするのね」
「十色ほどじゃないよ」
「私の、何処が無茶ですか?」
「いきなり自爆して、精霊猫と混ざったでしょ?」
「あれは、成功すると知っていたからで、無茶じゃないわ」
「無茶だと思うよ・・・」
「成功したから、いいの。それより、ここだとあの子の声が聞こえない」
「精霊猫と意思疎通していたのかな?」
「そう言う、約束だからね」
「なら、聞きますが、何故私をあの子は殺そうとしているのですか?」
「もしかして、それを聞くために?」
「折角のチャンスですからね」
「理由を話すなとは、言われてないからいいけど聞きたいの?」
「理由によっては、貴方と敵対する可能性もありますよ?」
「私は、敵対したくないけど、あのこの気持ちも少しわかるから。もっとも、貴方が殺されるとは思ってないから、3回だけチャンスをあげることにしたの」
そう言って、十色は精霊猫のことを話してくれました。
「敵討ちですか・・・」
「結果的にだけどね」
「確かに、該当する人物を、私は殺していますね」
この世界に来て、殺した相手の中に、精霊猫の飼い主がいたそうです。猫も、この状況を知っているので、恨むつもりは無かったと言っていたのに、幸せを感じるほど、私が憎く思えてきたそうです。
「しかも、あの人でしたか・・・」
小説を書いていたと言って死んだ青年。あの出来事は、私の心の中でくすぶっています。
異世界に来て、力を手にして、調子に乗っていたことは認めます。
死にたく無いと、必死だったと思いますが、余裕はありました。
殺さないで相手も無力される方法も、あったのかもしれません。
秘密を保持するために、命を奪わなくても、他にやり方があったかもしれません。
色々と、後悔ばかりが浮かびます。
「癒してあげようか?」
「今は遠慮します」
「むぅ」
小さく膨れる十色、その姿は中々癒されます。
「ここでは、刈谷さんとあえて呼びますが、刈谷さんの目的は何ですか?」
「目的?」
「はい。私は、元の世界から逃げられれば、それで良かった。私の事も、この世界に来て偶然判明しました。魅了の力がなくなるなら、今の状態が一番良いの」
「私も、まさか元の世界で異能の力が眠っていたとは思いませんでした」
「それで、刈谷さんは何がしたいの?」
「もう直ぐ40になるおじさんの野望ですよ」
「野望?」
「色々と、人生に疲れて、無駄に過ごしていた時に訪れたチャンスです。やりたい事が出来ると思ったのです」
「世界征服とか?」
「あれは、面倒でしょう。影の支配者なら憧れますけどね」
「人類を、正しい方向に導くとか?」
「私は、自分がそこまで正しいと言う信念がありません。何より、正義と言う言葉が嫌いですから・・・」
「なら、この力で何をするつもりなの?」
「最初は、生き残るための手段が欲しかった。異世界という事は、化け物だらけです」
「魔物が、怖いの?」
「異世界人が複数いて、それぞれが特殊な能力を持っている可能性がる。それだけで、恐ろしく眠れなくなります」
「そんなに、怖いかな?」
「チート能力を馬鹿にしてはいけません。相手の能力を奪とか、無限に強くなる存在とか、怖い連中がいる可能性があります」
「確かに、主人公系でその手の話はいいよね」
「私も、その手の話は好きですし、憧れますからね。でも、それらが敵になったと思うと、恐ろしくなります」
「・・・そうかも」
「実際、ギルドの情報で、能力を奪う異世界人は確認できてます。聖王国に、3人いますよ」
「そんなにいるの?」
「お互い、牽制しあっていて、動きが鈍くなっています。瞬間移動に関しては、持っていないので、動向だけはマークしてあります」
「強くなる系のは?」
「そちらは、いませんが、最高のステータスを持っているのは、現在始穣香です。その次が私ですね」
「あの人も、色々と謎ね。それにしても刈谷さん、いつの間にそこまで強くなっていたの?」
「今の私は、半分機械の人間ですよ」
「知りませんでした」
「これは、最重要の機密事項ですからね」
「むぅ、私にも秘密で、そんなことしていたなんて」
「精霊猫対策ですよ。この後、この会話は共有されますか?」
「多分」
「なら、いいでしょう。十色がどれだけ頑張っても、私は殺せませんよ」
「日輪さんを使っても?」
「あれと戦うなら、こちらも切り札を使います」
「試作機ですか?」
「これですよ。このカオス・ブリンガーがある限り、私に負けはありません」
「ロボット相手に、要塞をぶつけるのですか?」
「一応、これもロボットですよ」
「えっ?」
「そのテストも、かねてここまで来たのです。ここなら、誰にも見られません」
「あっ!もしかして、これってユニク・・・ろ・・ん?」
「それを、再現しようとしていたあの星の人たちは凄いです」
「悪の支配者になりたいの?」
「微妙に違いますね。私は、結構漫画やアニメが好きで、色々な作品を見てきました」
そうです。その中には、主人公側に共感できない作品も数多くありました。
やり方が違っているかもしれないけど、その考えは否定できない敵もいました。
主人公が甘すぎて、ピンチになったのに、敵を悪く言っていて、それは無いんじゃないの?と思うこともしばしば。
最初は好きだったのに、徐々に嫌いになって、ある作品見たら評価が入れ替わった歴史上の人物も存在します。特に劉備と曹操。
私も、出来ることが増えて、守るものが増えた今、最初に自分だけでこの星から出て行くと言う計画は止めました。
星の現状を知って、改善したいと言う思いも出てきています。
「今の私は、失敗した敵役の人が、出来なかったことを実現したいのです」
「ん?」
「時間はあります。私の横で、見ていてくれませんか?」
「はぁ・・・男の人って、理解不能なのね」
「他人なんて、理解できるものではないですよ」
「むぅ。私は、これでも刈谷さんの事大好きなんだけど!」
「私も、十色の事は好きですよ。年齢差はありますけどね」
「それは、この世界ではどうでもいいことでは?」
「そうですか?精霊猫と混ざった分、十色の年齢は100歳を超えているのでは?」
「そっちですか!私のほうが、年上ですか!」
「あははは、その姿では、説得力無いですからね」
「こんな姿の私に、手を出したくせに!このロリコン」
「褒められたと、思う事にしておきます」
「何で、それが褒め言葉になるのよ!」
「一度、言ってみたい台詞の一つですよ」
「何か、前も聞いたことあるような・・・」
「言ってみたいせりふは、山のようにありますからね」
「むぅ・・・」
「そうですね、もう一つ言ってみましょうか」
「今度は、何よ?」
「戦闘準備、これは、訓練ではない!繰り返す、訓練ではない!」
「何?」
センサーにギリギリの範囲で、移動する何かを確認しました。
熱源も感知しています。
「敵なの?」
「どうでしょう?」
異世界に来て、異星人との遭遇。ややっこしい状況になってしまいました。
機神の組織の可能性もあります。
対応は慎重に、でも、デートの邪魔をした報いは、受けてもらいましょう。
3日に1度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投降しています。
第7回ネット小説大賞に参加中です。




