入れ替わるもの
「一つ、聞いてもいいでしょうか?」
「ん?」
更に地下へと向かう途中、大石君が問いかけてきます。
「死者の復活が無理なのに、何故機神は死体を集めるのでしょうか?」
「多分、まだ死んでいないけど、体がなくなったんでしょうね・・・」
「体が無くても、生きていけるのですか?」
「それは、実験済。私は一度、体を再構築していますよ。十色に後で物凄く起こられましたけどね」
「えっ?」
「異世界人の館にいた、壊れた偽の私は、本来の私の体です。自分を解析して、人を材料に、自分を再生してみました。自分でも、悪魔の所業と思っています」
「・・・」
「もちろん、ただ再生するだけでなく、機械的なアシスト機能をつけたり、筋力を増やしたり、骨格を強化しています」
「それで、魂は移動したのですか?」
「なんとなく、出来ると確信したのですよ。自分がここのいる、ならこっちに行こうと思ったら、移り変われました」
「外見は、変わっていないようですが?」
「いじり過ぎると、魂が移らなかったんですよ。試しに顔だけ有名俳優にしてみましたが、駄目でした。まぁ、今更モテタイという気持ちは薄れていますから」
そう言って、私は笑います。
「同じ体を、二つ作ったら、どうなるのですか?」
「同時に動かす事は、出来ませんでした。交互に移る事は出来ましたよ。予備の体は、メトロ・ギアに保管してあります」
「それは、俺でも出来ますか?」
「多分、無理でしょうね。私には、御魂と言う不思議な力が宿ってしまいました。その影響は大きいです」
「それなら、機神の連中は、御魂と言うのを持っているのでしょうか?」
「似たようなものを持っている可能性はあります。可能性があるから、死体を集めているのでしょう」
「阻止、するのですか?」
「今は、まだわかりません・・・」
「何故?自分達が体を失ったからといって、違う場所の人たちを殺してその体を奪うというのは、酷いと思いませんか?」
「酷いと思いますよ。ただ、解らないことが多いので、現状では何もしません」
「何か、気になるの事があるのですか?」
「一度この迷宮で、無名と話した時、彼は入れ替わりをしていると言っていました」
「それが?」
「解りませんが、引っかかるのです・・・」
他人の体に乗り移る。その影響が解りません。既に失った者を、取り返す事は出来るのか、疑問に思います。
「死んでしまったら、それまでです。後に残る人は、それを受け入れるだけです」
「ドライなんですね」
「ひねくれ者ですからね。嘘だといってよと思っても、変わらないことだらけです」
「そうかもしれませんね」
「そう言えば、大石君は前世の記憶が、あったのですよね?」
「可能性の、一つかもしれませんよ?」
「その根拠は?」
「今に伝わる話と、違う事が多すぎます」
「たとえば?」
「切腹の時、立派だったという事。無駄にさけび、死にたく無いと見苦しく泣き喚き、上様に殺されました」
彼が前世といっているのは、大石倉之助の息子です。最年少の、討ち入り人。享年16歳の青年です。
「思えば、良金の存在が、忠臣蔵を美化の強化につながってます」
「親子揃って、君主の仇を討ち、見事に切腹ですからね。1人の君主のために46人が切腹。単純な数だと、割り切れませんね」
「老人1人のために、過剰な戦力に、深夜に襲撃。最初の事件も、大事な儀式の最中に後ろから切りつける。この部分だけなら、何処に大儀があるの?と思ってしまいます」
「討ち入った側の人間が、それを言いますか?」
「記憶はあやふやで、思い出せない部分もありますが、最初の原因を作ったのは浅野側だと薄っすらと思い出しています」
「どんなとこです?」
「火消しです。浅野の殿様は、火消しをしながら色々と火事場泥棒をしていたみたいなので・・・」
「吉良邸の時も、何か盗んだ可能性があると?」
「恐らく・・・。一番大事なものは、さぞ恩を売って手渡したのでしょう。消失の失態も、それを手渡す事で、お咎め無しにしたみたいですし・・・」
吉良邸が焼けた時、浅野は火消しの立場でそれを停めるべき人でした。ですが、屋敷は消失。責任は重大でしょう。ただの家ではなく、公家の屋敷です。それを消し止められなかった罪と言うのは、大きいはずです。
「この辺は、思い出したら、教えてください」
「はい」
こんな事を話しながら、迷宮を進んでいきます。
途中、最初にあったのと同じ保管場所が3つほどありました。
大きさが違うだけで、機能は同じでした。この迷宮は、維持と保管のために作られているのは確定です。
維持するためのエネルギーを、星の地脈から取っているので、地脈のエネルギーが全体的に不足している様です。使用する量と、バラつきがあり、余剰エネルギーで魔物を作り、それを利用して、人のレベルを上げ、丈夫にして、素体を作る、そんな気がしています。
「ここで何をしている!」
「迷宮探索ですよ」
ある進んだとき、他の探索者と遭遇しました。事前に、探索球で調べているので、今までは出会う事はありませんでした。
「動くな!」
目の前には、3人の冒険者風の人達がいます。
「お前たちは、魔物ではないのか?」
「そう見えますか?」
「見えるから、聞いている!」
「聞かずに、攻撃すればいいのでは?」
今の私達は、鋼鉄の装甲のジェノ、怪しい猫仮面と中型のロボットです。普通の人から見れば、魔物です。
「そのつもりだったけど、こいつが攻撃砂と言うんだ」
3人は、戦士2人と魔法使いです。男2人と女1人。
「だって、攻撃したら私達、負けます。この人たち、強さがわからない・・・」
魔法使いの女の子は、鑑定の能力があるみたいです。
「話し合いで、どうにかなるなら、それで終らせたい」
慎重な冒険者のようです。
「そちらの希望は?」
「出来れば、見逃して欲しい。敵対するつもりはない」
「私達も、最初から敵対するつもりはありません」
「そうか・・・」
「ただ、一つ聞かせて欲しい事があります」
「貴方たちは、いつから一緒のパーティを組んでいますか?」
「ん?俺たちは、4ヶ月くらい前から一緒に行動しているけど、それがどうかした?」
「今まで話していない人。それは、本当ですか?」
「・・・」
三人の内の1人から、人ではない何かの反応を感じます。だから、接触したのです。
「違う」
「嘘・・・」
今まで黙っていた人が、答えを否定して、魔法使いの子は悲しそうな顔をします。
「ほら、ギルドで一緒になって、それからの付き合いだろ?」
「黙れ!!」
そう言って、男が切りかかります。虚を疲れた冒険者は、あっけなく倒れます。
「俺たちは、ずっと一緒だった。お前が、迷宮で行方不明になったと聞いて、探していたのに、見つかって喜んだのに、お前は、何者だ!」
「何者なのでしょうね・・・」
切られた男は、何事も無かったかのように立ち上がります。最初から、殺すつもりの無い攻撃です。
「アルと、ベルですか・・・。なるほど、なんとなく、心地よかったのはこのせいですか」
切られた男は、何か呟いています。
「実験は、ここまでですか。そこのいるのは、あの時の人ですか?」
「あの時が、いつか知らないが、お前は無名なのか?」
「その一部ですよ。入れ替わっているだけの存在です」
「入れ替わりか・・・。その人の記憶は、そこにあるのか?」
「どうでしょう。今まで色々と入れ替わっていましたが、なんとなく何かあった気がします。今は、近くに知人がいるので、今までに無い感情を感じています」
「そこの二人、頼みがある。お前たちしか知らない、そこの人間に関係する事を聞いてみてくれ」
状況は、混乱しています。仲間の1人は、入れ替わった人を怪しく思っていたのでしょう。
「あの時の約束は?」
「抜け駆けはなし。正々堂々、勝負して・・・」
その問いかけに、途中まで答えて、動きが止まります。
「っく、混ざっては不味い。忌々しいが、これでお別れだ。そこの奴。俺の邪魔をするつもりなら、容赦はしない。溜め込んであるエネルギーを暴走させ、終わりにするだけだ!」
「邪魔をするつもりは、今の所無いですよ。ただ、一度話がしたいだけです」
「なら、先日の場所まで来い・・・」
それだけ言うと、その男の体が崩れ始めます。
「すまない、アル。俺がミスをした。最後に、迷宮の地下で寂しく消えなくて良かった」
崩れながら、その男が笑います。
その様子を、仲間の二人が見つめています。
「艦長、今のは?」
「私の仮説ですが、体の記憶、乗り移った無名の影響でしょう。あの人の本心であり、仮初の記憶の残照だと思います」
仮に、体に記録が残っていて、底に別の魂が入ったら、その時の魂はどうなってしまうのか。
気になっていたことが、少し解った気がします。
泣き崩れた魔法使いと、もう1人に事情を簡単に説明します。
二人は、仲間を弔うために戻るといいました。
その後姿を見送って、私達はまた進みます。
迷宮探索は、そろそろ終りになりそうです。
3日に1度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投降しています。
第7回ネット小説大賞に参加中です。




