裏切り者には・・・
「あの、よろしいのですか?」
アンディで移動中、奄美が問いかけてきます。
「何がです?」
「ニャウのことです。久賀という娘、信用しても良いのですか?」
「ある程度、信用しないとこの先やっていけませんからね。これは、素の為のことです」
現在、ニャウには久我さんと、白百合隊のメンバーが揃っています。
ライトは、戦闘能力はありません。シーリアは駄目勇者なので、こちらも戦闘は期待できません。
アニマルロイドの二人は、白百合隊よりも戦闘力なら上回っています。
あの二人、見かけは可愛らしいですが、全身金属製です。パワーもあり、岩なら拳で砕くことができます。ライトとシーリアの護衛を、お願いしてあります。
「もしかして、この状況を意図的に作りました?」
「予定より、速いですけどね。色々と考えていても、予定通りいかないのは困ったものです」
今回の遠征中、このような状況を作る予定はありました。
ただ、もう少し時間を掛けて懐柔する予定だったので、作戦の成功率が低下しています。
出来ることなら、仲間は増やしたいです。
今回の事は、今後のためには必要だと思っています。
裏切り者には死を。
これくらいの気持ちが無ければ、組織を運営するのは難しいでしょう。
久賀さんには、辛い選択を迫る事になるかもしれません。
「隊長、ご決断を」
「私は、隊長じゃないですよ・・・」
「この、白百合隊の隊長は、莉花様です。私ではありません」
私、久賀莉花は、異世界人です。5歳のときに、この世界にやって来たそうです。その辺りの記憶は曖昧で、異世界人としての知識はほとんどありません。
ただ、異世界人の異能として、軍師と言う能力を持っていました。
私は、悪巧みが上手ぐらいの認識です。色々と、戦略を考える能力らしいのですが、上手く使えていませんでした。
私がお世話になっていたのは、聖王国のある貴族です。その私設治安維持組織、白百合隊に所属していました。
聖王国の名家で、歴史があり、力もあった一族でしたが、先日大失態をしてしまい、取り潰しになりました。
元々、王位継承関係で国内が荒れていて、その流れで先代は処刑されてしまいました。
何とかしようと焦った頭首様は、ある作戦に参加しましたが、それすら罠だったらしく、現在敵の捕虜となっています。
色々と、探ってみましたが、まだ接触できていません。
私がお世話になっていた、姉のように慕っていて、私を妹のように可愛がってくれた姫様。
「今なら、私達だけでこの船を占拠できます。あの機神があれば、姫様の復帰は叶うはずです」
私達の姫様、ユーナ様は現在メトロ・ギアで捕虜になっています。ロードスさんもたまに存在を忘れてしまうと言っていましたが、機神を使ってメトロ・ギアを攻撃しようとした貴族が姫様です。
捕虜として、聖王国に対応を待っているみたいですが、返事が無いので仕方なく、幽閉しているそうです。
「一応、メリアムに任せてあるから、大丈夫」
と、ロードスさんは言っていましたが、メリアムというのは、聖王国でも危険人物として有名な存在です。国の暗部に所属して、色々と暗躍していた人なのに、何故ここにいるのか不思議です。
そんな危険人物が、姫様の側にいると思うと、作戦を実行しなければという思いもあります。
私達が、ここに来たのは姫様のため。
それは、絶対に変えることの出来ない思いです。
「貴方たちは、ここをどう思いますか?」
「恐ろしい組織だと思います。これだけの戦力、独自に持っているのは、脅威です」
複隊長の言うことは、もっともだと思います。
自在に動かせる機神を所持する組織なんて、恐ろしいです。
現状、聖王国の軍隊では太刀打ちできません。
可能性として、異世界人を中心とした、特殊な異能を持つ勇者なら、ある程度対抗できると思います。
勇者は切り札なので、ここに投入する事は無いでしょう。
内部に入り込み、制圧する作戦を立てたのは私です。
この手の組織なら、中に入れば簡単に制圧できると思っていましたが、考えが甘すぎました。
「今の状況は、完全に用意されたものです」
私達の動きを、見極めるつもりなのでしょう。ここにきて、色々なことを学びました。
ここにある知識は素晴らしい物です。一度知った以上、もっと知りたいという欲求を抑えられません。
ロードスさんと敵対したら、その願いは潰えてしまいます。今の私に、その選択は出来ません。
ただ、白百合隊のメンバーは、そこまで危機感を持っていません。最初の案で、成功すると思っています。
敵対して、失敗した場合、私達は処刑されるでしょう。彼は、裏切り者には死をといっていました。
内情を知っている私達が逃げ出したら、絶対に逃がさないでしょう。
私の中の軍師が、そう言っています。
姫様が幽閉されていると聞いたとき、酷いと思いました。しかし、下手に動き回られて、内情を知った場合、開放できなくなる¥ります。なので、その為の配慮だと、今は理解しています。
「聖王国に戻っても、姫様の居場所はありません。私は、姫様を解放してもらい、一緒にメトロ・ギアでお世話になりたいともいます」
これが、私の出した結論です。姫様に関しては、正直能力的には微妙です。ちょっと我侭ですし、胸は小さいけど、顔はかなり可愛いです。
愛玩動物とまでは言いませんが、目が離せない存在です。ただ、姫様の魅力は男性受けが悪いです。
ロードスさんは、猫派みたいですし、犬好きな人なら姫様の貞操は奪われていたでしょう。
猫の多いメトロ・ギアなので、犬は受け入れてもらいにくいかもしれませんが、犬派だって悪くないはずです。
「しかし、この機体があれば、私達だけで姫様をもう一度聖王国の、本当の姫に戻せます」
「確かに、それは出来るかもしれません・・・」
何とか、敵対せずにこの機神を持ち帰る方法は無いのか、必死に考えた事もあります。
「ああ見えて、この組織の安全対策は徹底しています。機神も、外部から動きを止めることぐらい出来る仕組みがあるはずです」
外部から進入できないように、常に警戒しています。
一見無防備に置かれているニャウも、警備は万全です。
アマテラスと言う、空から監視するという恐ろしいシステムで、見られています。それ以外も、センサーと言うもので、常時外を監視しています。
監視している人が、疲れて眠っている、もしくは薬物などで行動不能にするという事も考えました。
この船の監視は、アニマルロイドと言うロボットがしています。彼女は、眠りませんし、毒物は通用しません。
「姫様の事は、どうするのですか?」
「・・・」
私は、考えます。白百合隊のメンバーを失いたくありません。彼女達を、説得する材料は無いのか。姫様をどうすればいいのか。
「仕方ありません。考えるのは、止めます」
私の能力、軍師というのは、最善を導くものだと、ロードスさんが言っていました。
その最善にたどり着くためには、犠牲が必要だとも言っていました。部下をおとりにして、死ねと命令して勝利を演出する。それが軍師だといわれました。
それは、間違っていないと思います。だけど、私はこの子達を犠牲にしたくありません。
素の為の最善は何かと考えた結果、素直になることにします。
「私は、ここに来て、色々と知る事ができました。もっと、いろいろなことを知りたいと思います。貴方たちは、ここに来て、何か得られましたか?」
そう問いかけると、彼女達は少し微妙な顔になりました。
「どうしました?」
「正直に言います。十色様に見せてもらった、漫画と言うものの続きが気になります・・・」
「私は、アニメと言うのが」
「アニメ、見せてもらったのですか?ずるいですよ!」
「それは、よんさんと一緒に仕事をしたご褒美で一緒に見ただけです」
「私だって、まだ見てないのに・・・」
「ここを裏切ると、続きが見れないというのは、確かに辛いです。隊長は、何か良い方法があるのですか?」
これでいいのかとお思いましたが、敵対しないのであれば、いいのかもしれません。
「素直に、姫様との面会を希望しましょう。まずは、姫様の現状を知りたいです」
みんなの意見をまとめて、アニマルロイドさんにお願いしました。
「いいですよ。艦長には言われてましたから」
あの方は、こうなる可能性も考慮していたみたいです。
「ユーナお姉さま・・・」
映像で、ユーナお姉さまと会話の許可が出ました。
「太りました?」
「最初の一言が、それですか・・・」
「だって、可愛らしいお姉さまが、ふっくらとしてもっと魅力的になっているんですと?やせ細って、苦しんでいるのかと心配していた私の気持ちは、どうすればいいのですか?」
「ここの、食事がいけないのです。美味しいから、食べ過ぎてしまいます。太っても、仕方ないです!」
「元気で、良かったです」
「元気ではないですよ。残してきた貴方たちのこと、ずっと心配で、食事ものどを通らない日が、続いていましたから・・・」
「その割には?」
「貴方たちが、ここに参加したと聞きましたから。メリアムさんが、教えてくれました。あの人は、聖王国の内情に詳しいですからね」
姫様の心配事を知っていて、それが解決したと伝えた後、ご飯攻めになったそうです。
「私の事は、心配しなくてもいいです」
「姫様は、今後どうするのですか?」
「しばらくは、国からの返事待ちです。戻るつもりはありませんから、どうすればいいのか、貴方が考えなさい。それが、貴方の仕事ですよね?」
考えるのが、私の仕事。姫様がいつも言っていた言葉です。それを聞いて、私は、嬉しくて、泣けてきました。
「まったく、最初から私の事を、伝えておけばいいのに、あの男は油断できませんね」
回りくどい方法ですが、なんとなく、ロードスさんの狙いが解った気がします。
恩を売るというのは、言い方は悪いですが、信頼関係みたいなものを作りたかったのでしょう。
時間が足りていない気がしますが、予想外の事が起きたのかもしれません。
今後は、私が支えて、予想外の事がおきても何とか対応できるようにしたいです。
「少し、考え直したほうがいいかしら?」
「何をです?」
姫様が、不穏な気配を纏っています。
「解らないなら、今はいいのよ。もう少し、私はこの幽閉生活を続けるから、貴方はメトロ・ギアの為に、頑張っていいわ」
「はい」
姫様が、ここにいるというなら、ここは私の場所です。
そうなった事が、物凄くうれしい。
この世界は、色々と不可解な事が多いです。
この場所を守るために、私は一生懸命頑張ります。
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アルファポリスさんでも投降しています。
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