VS勇気 その3
力の流れる場所を追跡すると、広い場所に辿り着きました。
「まだ、来るには早すぎる・・・」
そこには、勇気がいました。外見は、そっくりですが、恐らく別人でしょう。
「お前が、無名ですか?」
「そう、僕は無名。この果て無き迷宮の管理人」
「その管理人が、何故勇気の姿をしている?」
「もちろん、君を殺すためだよ」
「私を殺す?」
「僕は、ここでこの世界を監視している。危険な存在を消す必要がある」
「管理者と言うのは、お前の事なのか?」
「あれとは、ルーツは同じだけど、組織は違う。僕は、僕だけが助かれば良い。ここまで来るのに、およそ500年。時間が長すぎた・・・」
「勇気に成り代わって、私を殺すつもりだったと?」
「それは、違う。迷宮に来た人間は、定期的に僕と入れ替わる」
「成り代わりか・・・。他にも、成り代わったやつが地上にいるのか?」
「教える必要は無い。君は、ここで死ぬ」
次の瞬間、100人を越える勇気が姿を現した。
「君みたいな異世界人は、同胞を殺す事を、嫌う。僕は、人を殺す事を躊躇わない。だから、君はここで死ぬ」
「・・・」
果て無き迷宮で、何かを企んでいるのは予想できましたが、成り代わりで地上に兵士を送っていたとは思いませんでした。
「魔法陣を作っていたと思ったのですが・・・」
三姉妹達にお願いして、地図を作成していましたが、つなげて見ると、魔法陣になる気配がありました。
「エネルギーがないと、素体が作れない。魔力を作るのに、あの形が必要」
こちらの問いに、律儀に答えるのは、何故でしょう?
「それは、時間稼ぎ。君の運命は、これで終わり」
気がつけば、勇気のコピーが、私を取り囲んでいます。
「こういう武器も、当然ある」
それらが、いっせいにライフルを構えます。
「さようなら」
ライフルがいっせいに火を噴きます。
「無駄ですよ」
火を噴く直前に、剛炎の機能を開放します。
「赤い色には、意味がありますよ」
真っ赤の鎧は、ある剣士をイメージしています。日本鎧とは違う世界観の戦士です。
「世界から、半分ずれて相手の攻撃を無効化する・・・」
初期の赤い剣士は、これを使って多大な成果を上げています。膨大な魔力を消費する事で、数秒間攻撃を無効化できるようになりました。
「しかし、お前は馬鹿なのですか?」
取り囲んで、一斉に中心に向かっての攻撃。かわされたらどうなるか、考えないのだろうか?
私が、半分ずれたせいで、攻撃は素通りしました。その結果、同士討ちになり、最前線が崩壊しました。
「しろとら」
後方に控えさせていた、しろとらを呼びます。
「太刀!」
太刀を受け取り、勇気に構えます。
「・・・」
別人とわかっていても、手が震えます。
「元帥、解析が終りました。それは、アンドロイドです」
「・・・」
それに関しては、予想できた事です。500年近い時間と言うことは、機神の関係者なのでしょう。
「いざ、参る!」
自分に気合を入れて、突撃を開始します。
「散開!囲んで、攻撃、魔力を使い果たせ!」
先程の攻撃で、魔力が減ったのを確認したのでしょう。消耗戦を仕掛けられると、こちらが不利です。
「相手がアンドロイドなら!」
躊躇う事もあるけど、確実に数を減らしていきます。
「きゃぁぁ!」
切られる瞬間、わざとらしく悲鳴をあげます。地味に、心にダメージがあります。
「はぁはぁ・・・」
相手の数は、半分は減らしたと思います。それでも、まだ多くの敵がいます。
「これ以上、無駄な抵抗しないほうがいいですよ。速く楽になりなさい」
「私は、諦めが悪いですからね」
「それなら、こうしましょう」
目の前の勇気が、どろどろに溶けていきます。機械の素体になり、その骨格が変形します。
「・・・」
「これで、どうでしょう?」
今度は、目の前に私がいます。赤い鎧の武者が、100人姿を現しました。
「どうです?貴方がいてです。数も、戻しました。勝てますか?」
「しろとら、弓を!」
太刀を預け、弓を受け取ります。
「姿形は、同じですが、能力はまねできないみたいですね」
「能力は、僕のほうが上だからね。弱い相手に合わせる必要は無い」
「勇気が相手だと、やりにくかったけど、私だと楽ですね」
「え?」
次の瞬間、100人の私が姿を消しました。
「何をした?」
「教える必要、ありますか?」
弓を使って、矢を放つ。この弓は、特殊な弓で、魔力で矢を作って攻撃します。弓を引く時に、魔力を込め、矢にするのですが、矢にしないで魔力だけを放出する事もできます。
単純な魔力だけで、アンドロイドを破壊しました。もっとも、探査球でアンドロイドを調べたとき、弱点らしい部分もわかったので、有効に使わせてもらいました。
「しろとら、勇気をつれて、先の戻ってくれ」
「・・・」
「心配は要らない。あれは、敵ではない」
「にゃ」
小さく一鳴きして、しろとらは先に戻りました。前の場所で倒れている、勇気の回収もしてくれるでしょう。
「これが、本体かな?」
「そうです。私は無名」
「機械だからかな?」
「機械になった時、名前を奪われました。だから、無名です」
広い空間の中に、長方形の物体が姿を表しました。モノリスと言うものでしょうか?
「今のも、訓練なのでしょうか?」
「最上級の、訓練です。この果て無き迷宮は、入ったものを訓練するための施設です」
「死亡した連中もいたが?」
「力なきものでは、ここにくる資格はありません。その辺の判断も、試練の一つです」
「お前の目的は?」
「私の役目は、ここにきたときに終っています」
無名が話した、長い話をまとめると、こういう感じになりました。
・異世界の星が、滅びかけている。
・色々な手段で、滅びを回避する計画が進行。
・無名のいた部署では、異世界転移で、星の危機から逃亡する計画を進行。
・過去の遺物から、異世界転移の可能性があり、研究中だった。
・この世界では、およそ500年前、向こうの世界で5年前に最初の転送実験が成功。
・無名は、この星とのつながりを残すために、精神を機械に詰め込まれ、魔法陣の基点とされた。
・1年ごとに転送が出来る状態になり、侵攻を開始。
・時差があり、こちらの世界には100年のずれ。
・人が世界を超えると、異変が起こり死亡する事例が多発。
・200年前の侵攻で、この世界の半分の地域が汚染され壊滅している。
・100年前の侵攻で、この大陸以外のエリアが、無人兵器で破壊された。
「予想以上に、酷い状況ですね・・・」
「無人兵器は、エネルギーの関係で、活動を停止しています」
「それで、お前は、この大陸の人を鍛えて、どうするつもりです?」
「鍛えているのは、ついでです。魔法陣を作るのが目的です」
「やはりこの迷宮は、巨大な魔法陣なのですね?」
「これに、気づきましたか。そうです、元の世界に復讐するための、必要な準備です」
「恨んでいるのですか?」
「解りません、500年と言う時間が過ぎ、最初の感情も死にました。時の流れは、色々と狂わせます。私は、何がしたかったのか、今ではほとんど覚えていません」
「機械なのに、記録が消えているのですか?」
「機械でも、記録の容量がオーバーすれば、前の記録は上書きされます」
「管理者と言うのは、お前の世界の人間ですか?」
「そうです。詳しい事は、まだ知らないほうがいいでしょう」
「何故?」
「現状、貴方に勝ち目がありません」
「現状ですか?」
「これから次第です。私は、期待していますよ」
「・・・」
「これを、持って行くと良いでしょう」
私の手前に、小さな金属片が落ちてきます。
「これは?」
「世界の記憶です。私の世界が滅んでも、誰かに知っておいて欲しい。こんな星があったという記録を、私のくのの1人の博士がまとめたものです」
「滅びるのは、確定しているのか?」
「計算では後8年でした。宇宙から、災害がやって来る。残りは3年のはずです。次の侵攻は、今までの反省を生かし、過酷なものとなるでしょう」
「共存と言う手段は、駄目なのですか?」
「大気成分が、大きく違うのです。それを変える装置で、この世界に魔物が溢れています」
「最低だな・・・」
「否定はしません。私は、自分で死ぬ事ができません。役割を果たすための機械ですが、少しの嫌がらせぐらいは、やる資格があると思っています」
「その、根性は、凄いと思いますよ。無名さん」
「はい」
表情は見えませんが、私には彼が笑ったような気がしました。
これ以上、ここにいても意味がありません。
これからの事をもう一度考え直す必要が出来ました。世界の記録と言うのも、調べなければいけません。
勇気を救出するだけの予定ですが、またやる事が色糸と出来てしまったようです。
ただ、これで少し時間が出来ました。
やるべき事と、やりたい事が見えてきましたので、少し自重は辞めて、色々と頑張る事にします、
気がつくと、再び手が震えています。
それを、抑えながら、拠点であるメトロ、ギアへと戻るのでした。
3日に1度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投降しています。
オーバーラップWEB小説大賞に、応募してみました。




