VS勇気 その1
準備は完了しました。予想外の事が色々とありましたが、その結果こちらの戦力は大幅に向上しました。
果て無き迷宮の中は、特殊な転移魔法陣が必要になるのですが、伊藤さんの強力で製作する事ができました。
十色に頼んで、先行してもらい、勇気を閉じ込めてある場所の側に設置が完了しています。
「では、いって来る」
私の装備は、戦闘強化服で身を固めています。この服は、装着した人の身体能力を引き上げ、防御に関してはかなりの強度を持っています。
オリハルコンが無いので、魔法陣を組み込む事で、似た性能を引き出す事に施工しています。
基本武装は、コンバットナイフです。銃は、今回は使いません、果て無き迷宮の中は、色々な組織の目があるので、いろいろと制限ができてしまいました。
にいに頼んで、しろとらになってもらい、一緒に行動しています。しろとらには、色々な武器が乗せた鞍を装備しました。
刀、太刀、槍、大筒などがバランスよく配備してあります。
「探査球の操作は、任せます」
「任せてください」
メトロ・ギアの司令室には、モニターがあり、そこにさんとよん、十色もいます。
彼女達は、探査球を捜査して、こちらをサポートしてくれる事になっています。
その後ろで、虹色小隊のメンバーも、勉強のため見学しています。
「さて、色々と邪魔者がいるYみたいですね・・・」
転移魔法陣を抜け、勇気の場所へと向かう途中、色々な反応を見つけました。
「賢者の国の騎士と、黒の国の傭兵団です」
探査球から、よんの声が聞こえてきます。
「何をしているか、解りますか?」
「不明です。結界を破壊するという形跡はありません」
「敵対している様子は?」
「ありません。どちらかと言うと、協力している感じです」
「あの二つの国、敵同士ですよね?」
「賢者の国は、聖王国の表面上は独立自治区扱いなので、黒の国と通じる可能性はあります」
「ここで、悪巧みする理由は、不明か・・・」
考えても仕方ありません。解らないのなら、聞いてみるのも良いでしょう。
いったんしろとらから降りて、徒歩で近づきます。一応、武器として槍を選び持っていきます。
「何をしているのでしょうか?」
「冒険者か?」
私が声をかけても、そこにいた人達はあわてません。
「そんな所です」
「ここまで来るとは、よほど腕の立つ冒険者なのだな・・・」
そう言いながら、私を包囲するように、相手は陣形を展開します。
「私は、何か見てはいけないものを見てしまったのですか?」
「そう言うことだ」
そう言いながら、正面の男は斬りかかってきます。
「甘すぎですよ!」
私は、それを素早く交わして、距離をとります。包囲網がまだできていなかったので、その輪の外側まで一気に移動します。
「これは、予想以上に動けるものですね」
戦闘強化服のおかげで、通常よりもかなり早く移動できます。それだけでなく、筋力が上がっているので、こういう事も出来てしまいます。
「うりゃ!」
槍を薙ぎ払い、近くにいた騎士を吹き飛ばします。
「突き、突き、突きぃぃぃ!」
三連続で、突きを行います。筋力ががると言うことは、それだけ動けるという事で、3回の突きで、側にいた兵士3人が倒れました。
「ついでに、これも!」
背中の、コンバットナイフを、後ろに回ろうとしていた騎士に投げます。相手の急所に一撃で刺さり、命を奪います。
探査球のおかげで、周りの動きは把握できます。危険がある場合は、よんの予測で解るので、危険度の高い相手から、確実に排除します。
「隊長、そいつは異世界人です!」
「そうか・・・」
陣形の影で、こちらを監視していた男がそう言うと、隊長と呼ばれた男は気配を変えました。
「何処まで、お前たち異世界人は我々を苦しめれば気が済むのだ!」
怒りに任せた一撃が、襲い掛かってきます。
「そんな事を言われても、私をこの世界に呼び込んだのは、貴方たちではないですか?」
その一撃を、槍で受け止めます。
「我々が苦労して得た力を、お前たちは何の苦労も無く、手に入れて、我々を苦しめる!」
「それに関しては、少し申し訳ないと思うけど、敵対するなら、こちらも容赦はしません!」
素早く蹴り飛ばし、相手と距離をとります。隠し持っていた、もう一つのナイフを、隠れていた男に向けて投げます。
「ぐぎゃ・・・」
そのナイフは特性で、突き刺さった瞬間、電流が流れ意識を奪います。
「しろとら、そいつを確保!」
「がぅ」
人の目があるので、話せる事を隠すため、にいはあえて返事を”がぅ”としました。
「っち」
隊長と呼ばれた男は、しろとらが現れた事に驚いたが、すぐにこちらに視線を向けます。
「黒の、頼む!」
「・・・」
騎士団と別のグループは、最初包囲に加わっていましたが、今はこちらと距離をとっています。
「我々は、今現在世界人と争うつもりは無い」
「裏切るのか?」
「われらが盟主の命令は、ここにいれば魔王すら倒せる存在が生まれる。それの確認だ」
「だからこそ、それを手に入れる必要がある」
「それが、異世界人でも?」
「何だと?」
「そこにいるのは、異世界人ですよ。それに、あなた方は頼るのですか?」
「異世界人でも、こちらで制御できれば、ただの道具だ。元々、異世界人は我々の下僕。当然の事だ」
これは、図書館の歴史書には無かった出来事です。多分、間違った事を言っているのではいでしょう。
「その下僕に、部下を殺された貴方は、何なんでしょうね?」
私は槍を振り、血を掃います。
「五月蝿い!黒も裏切るなら、まとめてここで始末するだけだ!」
「出来ますか?」
「これでも、食らえ!」
隊長は、筒状の何かをこちらに投げました。
「手榴弾ですか。まさか、これが切り札ですか?」
私は、すぐにそれを槍で打ち返します。
「馬鹿な、これを知っているのか?」
「知らないと、思われたのが心外です」
打ち返された手榴弾は、隊長の背後で爆発します。これで、残っていた部下は全滅です。若干命がある人がいますが、手遅れでしょう。
「国王様からいただいた、破壊の道具が・・・」
「国王?賢者の国の国王は、異世界人なのか?」
「そんな事はない。国王様は・・・」
そこまで言いかけて、隊長は絶命した。後ろから、何者かに狙撃されたようだ。探査球によると、直線で500メートル先に、銃を構えた何者かがいるみたいです。
「無駄ですよ!」
「次の弾が、私めがけて襲ってきますが、それを槍で打ち落とします。戦闘強化服と、探査球のおかげで、そんな事が可能になっています。
「部下を信じていない、国王とは、最低ですね」
ここを監視していて都合が悪くなったので、部下を処分したのでしょう。近代兵器を持っていることを、恐らく黒の国に知られるのは不都合なはずです。
「投!!」
槍は突くだけでなく、投げても武器になります。レーザービームのように、意直線に狙撃主に向かい、貫きます。
「姿を見られたスナイパーは、すぐに隠れるか、逃げないと駄目ですよ」
物言わぬ屍に、言っても無駄なのですが、銃を回収するついでに、呟いてしまいました。
「さて、あなた方は、どうします?」
黒の国の傭兵は、総勢20人。
「異世界人に手を出すなと言うのは、絶対の命令だ。ここは、大人しく引き下がろう」
「その前に、何故ここに来たのか、教えてもらえますか?」
「盟主様が、ここに来れば、魔王を倒せるほどの力が手に入ると、言われたので、それを回収に来た」
「回収しろと言う命令でしたか?」
「そこに、行きなさいという命令だ」
生きて変える為に、団長は情報を提示しました。嘘を言う、質問に答えない、そう言う選択肢は、この場所に無い。それだけは、理屈抜きで解っていました。
「その盟主さんは、異世界人ですか?」
「盟主様は、この世界の人間です。ただ、部下に何名か異世界人がいます」
「そこの彼も?」
「否定はしません」
私が示した先には、1人の少年がいます。その少年は、先程から何かの魔法を使っています。伊藤さんの魔法事典に無いので、異世界人のオリジナルの魔法みたいです。
「準備できました」
「時間稼ぎでしたか・・・」
「まあ、死にたくないからな」
次の瞬間、光が辺りを包みます。巨大な転送魔法が完成しました。
「じゃぁな」
光が消えたとき、黒の国の傭兵は姿を消していました。勇気を閉じ込めた結界ごと、転移する予定だったと思います。ただ、この結界を甘く見ていたのでしょう。中からは、力しだいで破壊できます。
しかし、外からは、よほどの魔法使いでないと破壊するのも難しいでしょう。強度もありますが、空間を歪めているので、転送魔法で運ぼうとすると、失敗の可能性が高くなります。
「転移魔法対策、この方法は止めたほうがいいですね・・・」
転移魔法に失敗するとどうなるか。その一つの見本が目の前にあります。色々と、混ざり合った不気味な塊。回復するのは、恐らく無理でしょう。オリジナルの魔法もかかわっているので、時間がかかりますし、そもそも、助ける理由がありません。
その不気味な塊は、数秒後に消えてしました。恐らく、転移した先の場所に移動したのでしょう。
その先が、どんな風になったのか、少し気になりますが、それを確認する時間はありません。
結界の中から、恐ろしく不気味な力が溢れてきました。
「ここは、暗い・・・」
結界が、静かに消えていきます。
「ここは、寒い・・・」
黒いオーラを身にまとった、勇気が姿を現します。
「小父様、私を暖めてめぇぇえ!」
負のオーラを身にまとい、黒くなった勇気が、そう言いながら向かってきます。
「いいよ、思う存分、暖めてあげましょう!」
しろとらの隣に立ち、鞍から一本の刀を抜きます。
勇気がまとう負のオーラは、かなりの量です。勇気自身も、前にあったときよりも遙かに強力になっています。探査球からの警告は、危険領域になっています。
今の戦闘強化服では、こちらが負ける可能性があります。
奥の手を使います。
刀をかかげて、稲妻を集めます。
「武装、展開!!」
何処かで、鼓の音が聞こえます。大事な戦いの前ですが、遊び心は忘れません。心にいつも余裕を持ちたいです。
殺伐した殺し合いをするつもりはありません。
「さしずめ、剛炎とでも名乗りましょうか・・・」
赤く、燃え盛るような武者鎧を身にまとい、刀を構えます。
こうして、勇気との戦いが始まりました。
黒の国の盟主が言っていた、魔王を殺せるほどの力、確かめさせてもらいましょう。
3日に1度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投降しています。
オーバーラップWEB小説大賞に、応募してみました。




