殺戮の3日間 その7
目の前に、恐ろしい力が存在する。
それと戦うのは、冒険者の役目。私は、そう教えてきた。
聖王国のギルドに長年貢献してきたが、ミスをして辺境の地に左遷された。
かつては、闘将とも言われ恐れられていた私が、辺境のギルドのマスターと言うのは、馬鹿にされているとしか思えない。
ミスの賠償金として、長年溜めてきた資産は没収された。何とか、手柄を立てて、中央に戻れる方法を考えていた矢先、黒の国から接触があった。
機神を奪う計画に、協力して欲しいと言う内容だった。王国を裏切る行為なので、断って、逆にこれを材料に中央に戻る算段を取ろうとしたが、相手は一枚上手で、こちらの弱点に付け込んできた。
私の、色々な不正の記録を突きつけてきたのだ、これが明るみなれば、死罪は確実だろう。なので、仕方なく、連中に従った。その結果、乱入してきた異世界人によって、全てが壊れてしまった。
黒の国からは、作戦失敗の通達が来た。取引は、最初からなかった事にすると言われても、連中には私の弱点を握られている。
このままでは、連中の操り人形にされてしまう。
この状況を打開するために、目の前に、異世界人を利用しよう。こいつらは、色々と甘い部分がある。
現に、今も捕まえた冒険者を殺さずにいる。これは、利用できそうだ。
「まずは、その連中を解放してもらおう」
「引き返してもらえるのですか?」
「それは、後で決める。先に、その冒険者の安全を確保してからだ」
「話になりませんね・・・」
ギルドの責任者は、こちらが人質を殺さないと思っているのでしょうか?
「人質を取って交渉をするとは、冒険者としては失格だ。君も、その辺は理解しているのだろう?」
「わかりました。人質とするのは止めます」
私がそう言うと、ギルドマスターはにやりと笑いました。
「そうか」
「今殺されても、割り切るのですよね?」
「何の話だ?」
「死にたくないのでしたら、降参してください。そうすれば、命だけは、助けてあげます」
私は、立っている10人に問いかけます。
「チャンスは、一度だけです」
その結果、8人の冒険者が、降伏して、こちらの捕虜になることを同意しました。
「貴方たちは、死にたいのですね?」
「殺せるものなら、殺してみろ」
「Aランク冒険者を、簡単に殺せると思うなよ!」
残った二人は、自分の立場を理解していないようでした。堀に仕掛けられた電撃で気を失い、拘束された状態です。満足に身動きも取れないのに、この自信はどこから来るのでしょうか?
「Aランクと言うのは、この場合、何の役に立ちますか?」
「これくらいの、拘束など、われらには無意味だ!」
そう言って、腕に力を入れます。
「で?」
「・・・」
それで、拘束具を破壊できると思っていたのでしょうか?
「降伏した8人は、大人しく砦に入ってください。さん、後はよろしく願いします」
「了解しました」
砦の内部から、さんの声が聞こえます。
「貴方たちは、さようなら・・・」
流石に、戦車を使うわけにいかないので、レミントンを構えます。
「ま、待ってくれ、マスター、身代金は払う。助けてくれ!」
「仕方ないな・・・」
それを聞いて、ギルドマスターが動きます。
「異世界人よ、私と勝負しろ!」
「何故です?」
「私に勝てば、この土地の事は完全にお前のものだ。私が勝てば、この話はなかった事で、その戦車と言うものやこの砦全てを、ギルドが没収する」
「お断りします」
「ギルドの権限で、断る事は認めない」
「認めないと言われても、言う事が毎回変わるので、誰がこの勝負を保障してくれるのですか?」
「ギルドが、保障する」
「そのギルドが、信用できないのです。勝負と言っても、方法は?」
「ギルドの正式な勝負のための決闘だ。おい!」
「はっ」
ギルドマスターが目配せすると、部下の1人が何かを取り出しました。それは、あっという間に大きくなり、簡易的な闘技場が出現しました。
「この闘技場での、試合だ。殺さなくても場外に押し出せば、勝ちとなる。異世界人向けの優しい決闘上だ」
「戦うのは、貴方1人なのですか?」
「決闘とは、そう言うものだ」
「私が買った場合の、メリットがありませんね。最初から、3日間防衛すれば、この土地は私のもですよね?」
「この決闘が終らなければ、その話は、無かったこととする」
「話になりませんね。私が買った場合、次のルールを作ったりはしませんか?」
「それは、無い」
よほど、勝負に自信があるのでしょう。
「後ろにいる、冒険者は、どうなります?」
「どうなるとは?」
「私が買った場合、残った冒険者が襲ってくるとかはありませんか?」
「その心配は無い」
自分が勝つから、そんな心配なしないという事でしょう。
「それ以前に、勝負中に介入してきませんか?」
「それは、禁止している」
「・・・」
色々考えましたが、考えるだけ時間の無駄のような気がしてきました。
「ギルドマスターの次に、偉い人はいますか?」
「ここのいるのは、普通の冒険者だ。ランクの高いのは、そこのいる2人が一番高い」
「なるほど、立会人をお願いするのは、無理ですか?」
「仕方ないかな」
「な・・・」
闘技場の中央に、始穣香が立っています。その隣に那由他と、見知らぬ男性がいます。それらを見て、ギルドマスターが言葉を詰まらせます。
「そちらの方は?」
派手なマントを身にまとった、渋い男性です。
「予か?予は銀河帝国皇帝の、銀 銀河である」
「銀河帝国って、名前を奇異で不思議でしたが、皇帝が銀河さんでしたか」
「はっはっはっは、よく言われるよ。始穣香が、面白い奴がいると聞いたから着てみたが、いっそ、我が帝国に来ないか?」
「こちらのやる事が終ったら、一度伺うつもりでしたよ。貴方が、立会人になってくれますか?」
「そうだな、後の臣下の為に、人肌ぬぐいのも良いであろう」
「大罪人、銀河だ!お前たち、討ち取れ!」
聖王国や、賢者の国とって、銀河帝国は最大の敵国になります。その皇帝が目の前にいるということは、ギルドマスターにとっても、冒険者にとっても、予想外の出来事でしょう。
「動くな!」
始穣香の声が、この場所に響きます。それだけで、相手の全ての動きが止まります。
「僕たちは見てるから、速く勝負するかな」
「そうします。ギルドマスターさん、勝負を受けますから、来てください」
「・・・」
「始穣香、金縛りを、解いてあげないと」
「動いていいかな」
それだけで、止まっていた全ての動きが元に戻ります。
「あ、その前に、こいつらを始末しないといけませんね」
「あっ」
Aランクの冒険者二人に向けて、散弾を発射します。それだけで、あっけなく人は死んでしまう。
「勝負の条件に、あの二人は入っていませんからね」
こちらが、甘くない事を証明します。このギルドマスター、異世界人を甘く見すぎです。
「貴様、こんな事をして、許されると思っているのか?」
「誰が、許してくれますか?それより、勝負をしますよ、準備はいいですか?」
「良いだろう。かつて闘将と呼ばれた、このデイモス、貴様を殺す男の名前を、忘れるな!」
闘将で、デイモスですか、中々惜しい人物ですね。
「用意は、いいかな?」
なぜか、審判みたいな事を、始穣香がしています。
「ちょっと待ってください。この闘技場に、ごみがいますが、どうします?」
「どういう意味だ?」
「勝負は、一対一ですよね?」
「当たり前だ」
「では、この闘技場に我々以外の人がいるのはなぜですか?」
「何処、そんなのがいるというのだ?」
実際、この闘技場には、私とデイモス、始穣香の3人がいるように見えます。
「ごみは、最初に排除してもいいですか?」
「勝手にしろ」
「そうします」
私は、背後に向けて、散弾を打ち込みます。
「ぐぎゃ・・・」
次の瞬間、デイモスが移動して、その散弾全てを受け止めました。
「おやおや、総武が始まる前に、自分から負傷してくれたのですか?」
「・・・」
散弾は、すぐに体から押し出され、怪我があっという間に回復してきます。
「事前ポーションですか」
「そうだ。賢者の国から手に入れておいたが、役に立った」
散弾を防いだ防御力は、凄いものです。
「次は、動かないでくださいね」
違う方向に向け、レミントンをぶっ飛ばします。
「きゃぁぁぁ」
女性の悲鳴と、血飛沫が、何もない空間から飛び出します。
「ノノさんは、貴方が処刑したのでは?」
姿を現したのは、ギルドの受付さんです。
「よくも、ジーンを!」
「ジーン?」
「貴方が殺した、冒険者です!」
そう言って、ノノさんは襲い掛かってきます。図らずも、良い仕事をしてしまいました。
「2体1でもいいですよ、このまま、勝負を始めましょう」
「馬鹿にして!」
ノノさんは、姿を消してからの暗殺が得意の冒険者かもしれません。
「役立たずが!」
デイモスは、格闘を得意としているみたいで、素早い動きで迫ってきます。
「無駄です!」
ノノさんのナイフは、アンディの装甲を傷つける事はできませんでした。デイモスの正拳突きは、衝撃は少しありましたが、受け止める事ができました。パワーアーマー状態のアンディは。その性能を最初からかなり向上しています。
「場外なんて、甘い事はしませんよ」
デイモスに向けて、バズーカーを発射します。
「貴方は、使い道ありそうなので、取り合えず生かしておきましょう」
ノノさんに向けては、蹴りを放ちます。
「ぎゃぁぁぁ」
流石の事前ポーションも、体が爆散しては、意味がありません。
「勝負ありかな」
デイモスは、わずかな欠片を残しこの世から消えてしまいました。
「さて、皆さんはどうします?」
残っている冒険者に声をかけます。
「大罪人、銀河に手を貸すと言うのなら、たとえ死のうとも、我々は恐れはしい」
そう言って、残っていた半数が、命を落としました。
こちらを恐れ、動けなかった冒険者30人を、捕虜として確保しました。
こうして、長かった3日間は終わりました。
目の前の惨状を見て、自分自身が変わったこを実感します。
そんな私を、始穣香たちは、見守るように見つめています。変に先輩風を吹かさないでもらいたいものです。
ですが、今はそれがなんだか嬉しいです。
「さて、色々と聞きたいことがありますが、よろしいですか?」
「良いかな、砦の中に、入っても?」
「いいですよ」
「むぅ・・・」
「どうしました?」
「そこは、いいともって、言って欲しかったかな」
3日に1度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投降しています。
オーバーラップWEB小説大賞に、応募してみました。




