猫人と猫姫
そして、目が覚める。
「もふもふが無い・・・」
最初に感じたのは違和感。
寝る前は、猫三匹のいる幸せ空間だった。目が覚めると、その毛触りが無い。代わりに、何かやわらかくて小さいものが、私に寄り添っている。
覚悟を決めて、目を開けると、信じられない光景が、そこにあった。
「・・・」
じっと見ると、命の危険を感じそうだったので、そっと目を閉じる。
「そう言う趣味は?」
「流石に、無いですよ」
「なら、良かったにゃ」
頭の上のほうから聞こえてくる声。少し、怖い。
「ほら、貴方たちも、起きなさい」
十色の声を聞いて、寝ていた三姉妹が動き出す。
「刈谷さんは、そのままもう少し、寝ていてくださいね」
「了解」
気配で、三姉妹が部屋から出て行くのを確認する、その姿は、猫でなく人の子供だった。しかも、裸だった。
そっちの趣味は無いので、残念とは思わないけど、幼女と一緒に寝ていたと思うと、悪い事をしたという気持ちになってしまいます。暖かくて、ぐっすり眠れたのは、この眠りの棺の性能と思う事にしておきましょう。
「刈谷さん、こちらに来てください」
十色の呼ばれて、私は起きる事にしました。共同スペースに行くと、そこには見知らぬ女性と、子供が3人いました。
「えっと、十色でいいのかな?」
「はい」
にっこりと、猫耳の女の子が笑いながら返事をする。しっぽゆらゆらの、ご機嫌の様子が伝わってくる。
「こんなに早く、猫姫になれるとは、思いませんでした」
「猫姫?」
「猫人よりも、一つ上の存在です。私は、猫人になれればいいかなと思っていたのですが、一気に猫姫になれたにゃ!」
語尾のにゃも、復活したみたいです。
「管理者には、会いましたか?」
「声だけ聞いたにゃ」
やはり、十色にも接触しているみたいです。
「それよりも、良く見るにゃ!」
そう言いながら、十色はくるくる回る。人の姿であったときは、前髪が長くて顔は良く見ていませんでした。おぼろけな記憶にあるよりも、若干幼い感じがします。身長も、150ぐらいでしょう。
髪は長めで、銀髪になっています。尻尾の色も、白と言うよりは、銀色っぽいです。頭の上には、猫耳があります。人の耳は、無いようです。
白のワンピースを着ています。尻尾穴が大きくて、付けの部分とその周辺が見えてるので、肌色度合いが高いです。
「その辺は、あまり見てはいけないにゃ」
私の視線気づいた十色が、文句を言ってきます。
「男の人は、これだから嫌いだにゃ!」
この子は、魔眼の影響で色々と嫌な思いをしていた筈です。これは、私が悪いですね。
「でも、刈谷さんならいいにゃ、もっと見てもいいにゃよ?」
「・・・」
「私の服は、用意できていなかったから、急造にゃ。したぎゃ」
何かを言いかけたところで、私のチョップが炸裂しました。服の袖に手をつけ、めくろうとしていたので、危険回避能力が作動したのかもしれません。
「服は用意できなかったと言う割には、この子達の格好は?」
十色の足元にいる、恐らく三姉妹と思われる存在を見る。
「これは、私が猫人になったときのための服を、着せてみたにゃ」
「にぃです」
なぜか軍服を着ている少女が、照れながら挨拶をする。三姉妹は、身長100ぐらいの子供になっていました。を着て、白い軍服で、白い髪をしています。
「さんです」
さんは、巫女服です。赤の目立つ巫女服で、赤い髪になっていました。
「よんです」
よんは、拳法着です。チャイナドレスっぽい、黒い姿で、黒髪です。
「これを、十色は着るつもりだったのですか?」
「そうだにゃ、これを着て、刈谷さんを誘惑するつもりだったにゃ」
「誘惑されませんよ・・・」
三姉妹、物凄く可愛くなっていますが、誘惑されるとなると、無理ですね。子供がいたら、こんな感じだったのかと、思ってしまうほどです。
「だから、三姉妹は私たちの子供で、刈谷さんと、私が、お父さん、お母さんになるにゃ!!」
少しだけ、それでもいいかな?と思ってしまいましたが、それは出来ません。
「私は、子供に・・・」
そこまで言いかけて、言葉が止まる。何を言おうとしたのか。子供に殺しをさせたくない、危険な事はさせたくない、そんな事を言おうとしました。
しかし、元々彼女達をこの環境に追いやったのは私です。何の権利がると言うのでしょうか?
「難しい事は、考えないでもいいにゃ。まだ、これから、色々と話をするにゃ」
そう言って、十色が話し出す。十色が管理者から聞いたことは、私とほとんど同じでした。
「私は、守護獣と一体化することで、猫姫になったにゃ。猫人よりも上の存在で、人と混ざったから、この姿になったにゃ」
「猫の姿には、なれないのですか?」
「残念ながら、私はなれないにゃ」
「私たちは、なれます」
そう言って、にぃが猫の姿に変化する。軍服の山から抜け出し、にぃが姿を見せる。大きさは、前と変わらないようだった。この辺は、流石異世界と、言うことでしょう。
「猫にも、すぐなれます」
そう言って、人の姿に戻るにぃ。この子、元々人間だったはずだから、もう少し気をつけてもらいたいものです。
「猫姫の、尻尾は伸縮自在だにゃ!!」
あっという間に、十色の尻尾が私の目を塞ぎます。
「にぃも、女の子だから男の人の前で。裸にならないにゃ!」
「主任になら、見られても・・・」
「私が、まだ見せてないから駄目にゃ。その後なら、許可するにゃ」
「「「はい」」」
なぜか、三姉妹の嬉しそうな返事が聞こえます。
「私の意見は?」
「考えては、あげますよ?」
考えはするけど、受け入れるつもりはありませんと、その顔には書いてあるようでした。
「はぁ・・・」
ため息一つ。取りあえず、今は色々とやる事が山積みです。この辺の事は、色々な事が落ち着いてからでしょう。
「しかし、これだと、色々と作り直す必要がありますね」
「にぅ?」
「十色は、猫になれないのですよね?」
「徳を積めば、猫になれるかもしれませんが、今は無理だにゃ」
「そうなると、猫鎧と弐型、参型をどうしましょう?」
「にゃぅ・・・」
相談した結果、猫鎧は、三姉妹専用にカスタマイズして、しろとらはにぃ、くろとらはよんの専用になりました。参型の村雨は、同系機を作り、2機で運用。基本的に、参謀的な役割をするさんは、猫鎧までで、何かあれば新しく作る事にしました。
「この、体の奥にあるものが、御魂なのですね・・・」
一通り相談した後、自分自身のことを確認します。体の中心、肉体とは別の部分に、巨大な何かを感じます。
「解析、開始」
自分自身に、解析機を使います。今の状態を記録して、解析します。完了まで1年と出ています。恐ろしく陣間がかかる代物です。御魂を得た事で、解析機の予備が出来たので、これは助かります。
「さて、君は何がしたいのかな?」
解析機のある部屋に入ると、物陰に何者かが潜んでいました。存在をすっかり忘れていましたが、研究室の中には、支配の魔王メリアムがいました。
気絶して、強制的に眠らしておいたはずですが、私が進化している間に、研究室の機能が一時的に止まっていました。そのせいで、自由に動けたのでしょう。
「我願う、支配されよ」
そう彼女が告げると、私の体が硬直しました。
「我願う、死せよ」
「・・・」
「我願う!死せよ!」
「・・・」
彼女が何か言いますが、何も変わりません。
「それが、貴方の望みでしたか・・・」
「なぜ?」
「解析機で、貴方の過去を見ました。まさか、そこまで出来るとは、思いませんでした」
「・・・」
彼女の過去は、色々と興味深いものでした。
「貴方の境遇には、同情したのですよ。まさか、あんな裏があったとはね」
操り人形だと思っていた彼女は、実は操るほうの人間でした。聖王国のスパイで、ヤノツは既に彼女の操り人形でした。
「人の悪意は、ここまでできるものだと、逆に感心しましたよ」
「なぜ、貴様は私の魔法が通用しない?」
「突然変異の、可愛そうな魂。その体は、私が有効に使ってあげますよ」
「えっ!」
「安心してください。いやらしい意味ではありませんよ。そんな事をしたら、娘たちに嫌われますからね」
「娘じゃないにゃ、奥さんにゃ!」
「娘みたいなものですよ」
念のために、隠れていた十色が現れます。
「刈谷さんだと不安だから、私がやるにゃ」
十色が、右腕を掲げます。その手は、光輝き、猫の手のようなオーラが、包み込みます。
「殺されないだけ、感謝するにゃ!」
輝く肉球により、メリアムの意識は再び闇に飲まれていく。
「なぜ?」
「利用価値が、あるからにゃ。私たちが一緒に過ごすために、お前を利用するだけにゃ!」
「助かる」
「お礼は言いにゃ、仲間にゃ、家族にゃ」
「家族?」
「私は、家族が欲しかったにゃ・・・」
十色も、色々と抱えていたものがあったのだろう。
「私は、まだちょっと難しい」
人との付き合いに関して、私は色々と拗らせていた。その自覚はある。
「気長に、待つとするにゃ」
十色がそう言うと、部屋の済で気配意を消して隠れていた三姉妹が、一緒に頷いています。
この子達と一緒なら、上手くやっていけそうな、そんな気持ちになっていくのでした。
3日日に一度のペースで更新予定です。
ただ、次の更新は1日遅れそうです。
アルファポリスさんでも投稿しています。




