猫達の癒し
目的の魔物は、あっけなく討伐できました。
少し強いだけの獣では、今の私の相手ではありません。
この世界、魔力は全ての生き物が持っています。その魔力は、全てにおいて不公平で、さまざまな個人差が存在します。
獣も同じで、強い魔力と属性を持ち、生き残った存在が、徳を大量に得ると個別で進化してしまいます。 更に強力になった魔物が、地上に溢れ、人々を悩ませています。
それと戦うために、異世界人の知識と力を望んだのに、失敗して今の状況が出来ています。
荒れ果てた地上。
それを改善する一つの方針が、支配する獣の排除をすれば、その土地の権利を得られると言う物でした。
獣の縄張りを奪うのですから、後の維持もそれなり大変です。一つ穴があけば、そこを狙い、次の獣がやってきます。
私は、目的地の獣を、遠距離からの狙撃と言う方法で仕留めました。
無音ヘリを飛ばし、相手の位置を索敵します。発見したら、相手の間合いに入らず狙撃しました。
狙撃用のライフルは、演算機を使い、製作しました。
銃の製作は、倉庫にモデルガンが登録されていたので外見はすぐに出来ました。ただ、モデルガンではライフリングなどの技術は再現できないので、命中率の問題や、色々と限界がありました。
ご都合主義の塊のような、魔法という技術が、この世界にはあったのでそれを活用して、魔導ライフルを作成しました。
魔法がある世界なので、銃と言う物が存在していない。異世界人も、わざわざ銃を作るよりも、魔法を唱えたほうが、威力のある攻撃を簡単に出来るから、無理に作らなかった。
それでも、私は自分の為に魔導銃を作る事にしました。
引鉄を引くと、魔法が発動する仕組みにします。弾丸は、次の瞬間高速で回転して直進します。飛ぶ速度も設定してあるので、空気を切り裂く音を残し、高速の弾丸は飛び出します。
高度な魔法と違い、直進しかしないので、狙いをしっかり付ける必要があります。
遠距離スコープの精度は高く、無音ヘリとのデータリンクで、着弾は正確に巨大な狼を爆撒させました。
魔導銃、威力を上げるために弾丸に工夫がしてあります。
6mmと言う小さい弾丸ですが、重さが10Kgあります。魔法の恐ろしい出鱈目な効果を、この弾に込めてみました。
材料も、鉄ではなく石を使用しているので、価格的にも良心的です。
魔法陣を書きつめた一枚の紙の上に、砕いた石を載せ、魔力を流します。その結果、凝縮された特殊弾が完成します。
この世界、私がいた世界の物理法則は通用していません。質量を無視した重量の弾丸は、戦車砲並みの威力を発揮しました。
速度も、かなりの物でしたので、哀れな標的は爆撒してしまいました。
対人に使う際は、注意が必要です。テストと実践との結果の差に、今後のことを考えながら、後始末に入ります。
支配エリアの中心部に、アンディ搭載の小型ミサイルを撃ち込んで、空き地を作ります。かなり強引ですが、今日は色々と疲れたので、強攻策で終らせます。
空き地に、転移魔法陣を設置して、研究室に転移します。転移前に、無人の防衛装置を忘れずに行います。
センサーに対応して、機関銃を撃つ凶悪な装置です。ここに来るとしたら、魔物だけだと思うので、問題は無いでしょう。
「ただいま、戻りましたよ」
部屋に戻り、声をかけます。
「・・・」
「あれ?」
「十色様は、現在進化の準備中です」
猫部屋から、にいが慌てて出てきて、そう告げる。
「進化?」
「先程から、なんだか光に包まれてます。主任は、こちらに急いできてください」
にぃにつれられて、演習場へいくと、中心で何かが光っていました。
「これは?」
「十色様です。1時間ぐらい前から、この状態です」
そう言えば、十色はメリアムと戦って、勝利しています。大量の徳を得ていてもおかしくありません。
「にぃたちは、なんとも無いのか?」
「私たちも、何だかうずうずいています・・・」
この子達も、何かが起こるかもしれません。
「今日の所は、全員休む事にしましょう。研究室は、一時閉鎖します」
「解りました」
何が起こるかわかりません。起動中の解析機は止められませんが、他の機能は一時止めることにします。
「私も、少し疲れたので、休みます」
「警備は大丈夫でしょうか?」
「この中に、外から入る事はできません。外で活動中の無音ヘリやバギーも、一時的に収納していますから、大丈夫でしょう」
「解りました。主任は、何処で休みますか?」
「せっかくなので、眠りの棺で休みます。あそこなら、短時間で回復できますからね」
眠りの棺とは、1時間寝れば、8時間睡眠したのと同じ効果が得られる魔法の装置です。
自分で名づけておいて、ちょっと不吉な名前にしたのを若干公開していますが、効果は実証されています。
「よろしければ、ご一緒してもいいですか?」
「別に、問題ないよ」
猫と添い寝とは、中々出来る体験ではない。もとの世界では、猫好きでしたが、猫を飼ったことはありません。ここに来て、夢の一つが実現しそうです。
「にぃだけ、ずるい」
「さんとよんも、一緒でいいですよ」
「「ありがとうございます」」
と言うわけで、猫3姉妹と一緒に、眠りの棺に入ります。カプセルみたいな外見で、横になるとふかふかの布団に包まれたような、幸せな感触に包まれます。
「おやすみ」
「「「おやすみなさい」」」
ふかふかの毛触りを堪能しながら、私の意識は深い眠りに落ちていきました。
「寝ていますよね?」
「夢の中ですよ」
「そうですか・・・」
寝ているはずですが、意識がはっきりとした状態になっています。目の前には、光る何かが浮かんでいます。
「貴方は?」
声は、光から聞こえている感じがします。
「私は、守護獣だったものです」
「もしかして、召喚のときに犠牲になった?」
「そうです」
「私達を、恨んでいますか?」
「私に、恨まれる事を貴方はしましたか?」
「したと、思います」
昼間の事を、思い出します。こちらを殺しに来たのですが、この世界の人を虐殺しました。あれは戦闘と呼べる物ではありません。一方的な虐殺です。
「貴方は、反省しているのですか?」
「なるほど、こちらの考えている事が貴方には伝わるのですね」
守護獣さんは、少し怒っているみたいだった。私が考えた事は、反省でもありますが、一度は言って見たい台詞集の一つですからね。
「深層心理までは踏み込めません。表層の心理は伝わります」
「解りました。相手を殺した事は、受け入れます」
「では、何に苦しんでいるのですか?」
「可能性を、奪った事です・・・」
今日、襲ってきた騎士の1人は、実は知っている人物でした。図書館で見た事があります。何かを、一生懸命書いていたので、気になっていました。
「何か、物語を書いていたみたいなんですよね・・・」
彼等の死体は、見つからないように処分しました。その際、装備品を拝借したのですが、彼の持ち物に、小さな手帳がありました。
「この世界、マンガは無いですが小説は色々とありまして、彼は作家を目指していたみたいなんですよ・・・」
それでも、剣の才能があったので騎士に徴用されてしまいました。空いた時間で、少しずつ、話を考えていたみたいです。
「読んで見たら、それなりに面白かったのです・・・」
まだ未熟ですが、経験をつめば良作を生み出す作家さんになれたと思います。知らなければ、苦しまなかったかもしれませんが、知ってしまったので、なんとなく、つらいです。
「この世界で、生きると言う事は今後もこんな事が何回も続きますよ」
「そうでしょうね」
生きる為に、相手を殺す。ここは、そんな理不尽な事がある世界です。
私に力があれば、この世界を変えてみたいです。
「私が、ここにいる限り、同じ思いを繰り返すでしょう」
「それでも、貴方は、この世界にいますか?」
「いまさら、無責任なことは出来ません。私は。自分で退路を立ちました。諸々の事を、背負いながら進むつもりです」
「1人でですか?」
「ここにいる子達は、保護者として、面倒を見るつもりですよ」
「私は、保護されるだけじゃ嫌にゃ!」
「十色もいるのですか?」
「私は、最初からいたにゃ。この守護獣さんは、私と一心同体にゃ」
「そうだったのですね・・・」
色々と、十色はオーバースペックだと思っていましたが、そういう理由があれば納得です。
「私は、刈谷さんと一緒に過ごす覚悟はあるにゃ」
「・・・」
「大体、私だってまだ一緒に寝た事がないのに、何で三猫と一緒に寝ているにゃ!」
「別に、猫と一緒に寝るぐらい良いじゃないですか」
「目覚めてみても、その言葉が言えるのか、今から楽しみみゃ」
「?」
「とにかく、刈谷さんは、色々と覚悟を決めるにゃ!」
次の瞬間、辺りが暗くなり、夢のような場所は一瞬で消え去ります。
辺りは、不思議な暖かいものに包まれ、色々と考えていた事が溶けていきます。
「もふもふを、感じられないのは、なぜなんでしょう?」
途切れ行く意識の中、その理由は解らずに、深い眠りへと落ちるのでした。
3日に一度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投稿しています。




