この世に悪があるとすれば・・・
「ここまで、人は出来ると言う事か・・・」
気を失った少女を、取りあえず研究室に連れて行く。この扉を超えた以上、この子を元の世界には戻せない。
取りあえず、浄化石から得た情報を元に、能力を遮断する棺を作り上げた。この中に入れておけば、どのような能力も封印される。しかも、棺の中は適温に保たれ、遮音に優れ、この中で1時間寝れば、8時間睡眠に匹敵すると言う、何処かで聞いた効果のあるものが出来てしまった。
仮死状態のまま、眠りの棺と名づけたそこに、そっと入れる。その後で、包帯を回収して、解析機にかけてみた。
その結果が、最初の嘆きです。
この包帯、魔方陣が刻み込んであり、何かの封印かと思っていましたが、違いました。これは、プログラムコードです。
何度も、重ねる事で、効果を増幅する仕組みで、巻いた回数で、威力が上昇します。内容は、合図を受けた後、能力を発動して、相手を支配しろという命令。
逆らう事は出来ず、ただ力を使うだけ。本人の意思を塗りつぶし、機械とする。この子の能力に支配されると、この子のいうことに逆らえなくなる。その後で、どういう命令を出すのかと言う事まで、書き込んである。
今回の場合は、私を能力で支配した後、事前ポーションを量産するだけの存在にするように、命令されていた。
この子の怖いところは、あいまいな命令でも、可能性があればそれを達成するところまで導いてしまうと言う事だろう。
この場合、欠損部位を再生するポーションを量産できるところまで、無理やり私を引き上げて実行させる力がある。
にぃ達の話だと、過去の事例で、100人単位の兵士に命令して、魔物の群れを殲滅させた事もあるらしい。もっとも、その100人は限界を超えて戦った影響で死んでしまったとの事。死ぬのを前提で、能力のテストと言う事だが、そんな命令を、この子にさせていたのだ。
「この国の連中が、馬鹿で助かったよ・・・」
今回、私が助かったのは、運が良かったといってもいい。この包帯、ある程度定型文で出来ている。命令する事は、魔方陣を発動した後、言葉で刻む。包帯の魔方陣は、個人の個性を消し、操るための物。
一度作れば、更新する必要はほとんど無い。だけど、人は成長する。
最初にこの包帯を作ったのは、この子が生まれてすぐだった。成長すれば、頭も大きくなる。包帯は、そのまま使っていたので、政党により巻く回数でのずれが大きくなった。上手く重なることで、威力が増大していたのだが、少しずれてきて、威力が落ちていたのだ。
もっとも、効果が薄れたので彼女の個性が生まれ、人知れず苦しむ事になっていた。
彼女の能力は、かなりの希少価値のあるものだ。その真価をこの国の連中は知らない。その力の為に、彼女の知力はかなり高く、知らないところで、いろいろと学習していた。
ただの操り人形に慣れなかっただけ、彼女は悲惨だった。
「メリアムちゃんは、水の塔で、軟禁状態でした」
「世話役が、鼠使いさんで、名目上彼の妹と言う扱いになっていました」
「仲の良い、兄妹に見えましたが、メリアムちゃんは、無意識に能力を発動しますから、見せ掛けの兄妹だったのか、証明できないのです」
「私たちは、接触した事はありませんが、諜報部の2代前の主因が、裏切り行為をしたということで、彼女の能力の実験材料にされました」
三姉妹の話だと、隠し事を全部白状させられ、逆に相手罠にはめるために利用され、スパイもろとも処刑されたらしい。一連の出来事で、危険指定され、監視は厳しくなり、水の塔に押し込められて、必要なときだけ、外に連れ出され、非人道的行為を、強制させられていた。
「この世界で、これは当たり前のことなのですか?」
「危険指定された能力の持ち主は、似た境遇の人が多いです」
「どんな能力が、危険指定されています?」
三姉妹の情報で、色々とわかった事がある。
・精神系の能力の持ち主
・鑑定能力の持ち主
・空間転移系の能力の持ち主
・召喚能力者
・魔王
これに該当する人物は、危険扱いされる。この場合、魅惑の魔眼の持ち主だった十色は、危険指定された恐れがある。
研究室に、解析機のある私も、鑑定能力者として危険指定される恐れがある。
「空間と、召喚は、危険なのですか?」
「空間転移は、戦力を好きなところに送れる恐ろしい能力です。過去の異世界人が、爆弾を国王の足元に転移させ、爆発させた事により、危険指定されました。その異世界人は、今も存在していて、魔王のひとりとなっています」
「魔王?」
「特別な力を持つ8人の存在を、そう呼んでいます。異世界人で、自由気ままに過ごしている恐ろしい存在です」
「召喚能力も、魔王の1人が恐ろしい機械の兵士を召喚することから、危険指定されています」
「それらを防ぐ方法は、研究しているのですか?」
「空間転移に関しては、魔法陣で防ぐことが出来るようになりました。機械の兵士は、普通に戦うしか方法はありません」
「この国が、魔王と敵対する可能性はありますか?」
「禁止されている、異世界人の召喚をしているので、それが判明したら、敵対する可能性は高いです」
「私たちと、協力する事はできそうですか?」
「魔王は、個性的な人が多いので、可能性はゼロではありません」
ここに来て、魔王著言う存在が出てきました。
この国の連中とは、正直手を取り合う気持ちはありません。何処かで、接触する必要はありそうです。
「この子は、どうするつもりかにゃ?」
「取りあえず、解析機にかけてみて、能力をどうにかできないか試してみます」
「どうにかできたら。どうするにゃ?」
「見殺しには、出来ませんね・・・」
「この子は、猫にはできないにゃ」
「このまま、ここの助手にしましょう」
「・・・」
「もしかして、私がこの子に手を出すとでも?」
「可能性は、否定しないにゃ」
「私は、ロリコンではないと思いますけどね」
「それはそれで、困るにゃ」
「・・・」
「そのこを、ここにおく事には、取りあえず、賛成するにゃ。ただ、外の事はどうするにゃ?」
「死んだ事にしておきましょう。わざとらしいかも知れませんが、一芝居やって見せますよ」
取りあえず、図書室が使える事を報告して、そこに行く事にする。その途中で、アイさんに報告する事にします。
どの道、最初から監視はされている。外に出れば嫌でも顔を見る事になるだろう。
「刈谷様?」
アイさんは、不思議そうな顔で、私の名を呼んだ。まさか、すぐに出てくるとは思っていなかったみたいだ。
「アイさん、ちょうど良かったです」
私は、極普通に話しかける。
「先程の罪人ですが、代わりはいますか?」
「代わりですか?」
「えぇ、試しに手元の薬を飲ませたら、死んでしまったので、追加できるか、確認して欲しいのですが?」
「死んだ?」
「はい、最初に言ったと思いますが、この世界の人と、私たちとに差があった場合、死亡するリスクはありますと」
「そうですが・・・」
アイさんは、私が支配されて、操り人形になったと思っていたはずだ。その場合、主であるメリアムに危害は加えられない。
「本当に、彼女は死んだのですか?」
「はい、脈は無く、体も冷たくなってしまいましたよ」
「こちらで、回収します」
「それは、お断りします。死体でも、投薬実験できますし、実験材料としては使えます」
「何ですって!」
アイさんは、怒りをこちらに向ける。
「罪人で、こちらの自由にしてもいいと、言われましたよね?」
「死者の肉体を、侮辱する事は、許しません」
「有効活用するだけですよ。それに、追加の件は、どうでしょう?」
「これ以上は、人材を派遣する事はできません」
「ポーションを開発しろと命じたのは、この国の大臣ですが?」
「あなたのような、悪魔と取引は出来ません」
「そうですか、私が悪魔ですか・・・」
「人の命を、何だと思っているのです?」
「それを、あなたが言いますか・・・」
「えっ?」
「あの罪人を使って、何かしようとしていましたよね?」
ここに来て、彼女は自分のミスに気づいたようです。彼女が怒るのは、実はメリアムとそれなりに親しい関係だったから。今の私の状態を、まず疑わなければいけなかったのに、自分の感情を優先してしまった。
「何をするつもりか、結果的に解りませんでしたが、私に何をするつもりでした?」
白々しく問い詰める。
「・・・」
「まぁ、いいでしょう。取りあえず、ポーションの開発は進めます。人一人が犠牲になっていますからね」
アイさんは、何も言い返さない。
アイさんの使命には、異世界人に支配の効果があるか野確認もあった。もし、支配できない場合の対処法も決められていた。だが、彼女の心の中は、憎しみに支配されつつあった。だから、この場では何も言わない。
この目の前にいる人物に、どうやったら復讐できるのだろう?
以前、爆発した研究所にいた5人は、彼女の同僚だった。将来を使った相手もそこにいた。彼のためにした行為が、最悪の結果を招いていた。
図書館に行くといって、異世界人は去っていった。
そう言えば、あの異世界人と仲のいい人物がいたはずだ。能力的に、有益だったが、私の為に、役に立ってもらおう。あの異世界jんだって、この世界の人間を実験動物扱いしたのだ。だから、私は悪くない。
狂気漂う彼女を、こっそりと覗き見している一匹の猫。
「はぁ・・・異世界はもっと楽しい物だと思っていたのにゃ・・・」
人の心の闇を見て、げんなりとする。こんなとき、遊んだゲームの台詞を思い出す。
「人の心か・・・」
今は猫だからと、気持ちを切り替え、一緒にいたいと思った人に向かい、歩き出すのだった。
3日に一度のペースで更新予定です。
アルファポリスさんでも投稿してみました。




