VS 鼠使い その2
鼠使いは、死んでいた。容疑者が真っ先に死んでいるなんて、推理小説にありがちな展開なのかもしれない。
「何とかして、死因とか確認できないかな?」
「髪の毛を回収できれば、調査できるかもしれません」
「注意しながら、回収してくれ」
「了解しました」
無音ヘリを操作しているにぃに、お願いする。遠くから見ていると、塔の中の人たちは、鼠使いの死体を部屋から運び出した。部屋の中は、無人になるが、何かおかしい。
「にぃ、髪の毛の回収は中止。このまま様子を見てくれ」
しばらくすると、神官のような格好をした人物がやってきて、何か魔法を唱えた。
「これは?」
「浄化の魔法です。塔の人も、何が原因で鼠使いが死亡したのか、理解しているのでしょう」
「流行病が原因として、感染源はどこかな?」
「この辺りは、聖獣と呼ばれる守護する存在がいました。あのお方がいる間は、この様な出来事は無かったはずです」
「その言い方だと、今はいないのか?」
「異世界人召喚の為に、使われたと聞いています」
三姉妹は、諜報部で結構重要な場所にいたのかもしれない。これは、機密事項ではないだろうか?
「そのことは、どれくらいの人が知っている?」
「今は、それほど。ただ、命令で少しずつ情報を広めるように言われていました」
「病気が広まった場合、聖獣との関係を疑う人は、出てくる可能性は高いかな?」
「そうなる様に、広めるよう支持がありました」
「その結果、異世界人への悪感情が増える可能性があるか・・・」
この国の連中は、何がしたいのだろうか?
私たちから、技術が欲しいと言うなら、こんなことをする必要は無い。今では解らない、目的があるはずだ。
こうなると、病気が広まる前に、何かしなければこちらの立場が悪くなりそうだ。
「吉良さんには、感謝しないといけませんね」
ここに来て、切り札ともいえる存在が手元にある。昨日もらった浄化石だ。
魔力が切れていて今過ぎには使えないが、内包していた情報が秀逸だった。
奇跡的とも言える、高密度の魔方陣。バランスや構成、指示の仕方など、私では出来ない高度な技術がふんだんに使われていた。
嬉しいことに、これを解析した結果、演算機がバージョンアップしたのだった。効率の上昇、今まで出来なかった魔方陣の作成が可能になり、悪ふざけで新型猫鎧参型を製作することが出来た。
参型は、後でテストするとして、浄化石を量産して配置する必要がある。
浄化石を、演算機で形を変える。小石のままでは、気づいてもらえない。おそらく、これを作ったのは聖獣だ。この世界に生きていた、守護する存在。それを使ってまで、異世界人を召喚する必要はあるのだろうか?
そんなことを考えながら、形を変える。その姿は、眠る猫。モデルは十色だった。元々、十色は自爆した後、この猫に乗り移った。本人が言うには、魂が融合したらしい。これは、この猫が持っていた能力で、聖獣の子供だった。
この世界の危機に、力の無い聖獣の子供は、十色にと出会い、協力を頼んだ。それを受け入れた十色は、精霊猫となったらしい。
「これを、町中に配るのですか?」
「この石造の効果範囲は広いから、目立たない場所に設置する」
「目立たない?」
「今は、まだそれでいい。病気が広まるのは、これで防げるはずだ」
「既に広まっているのは?」
「それは、ある程度目処が立った」
「助けるのですか?」
「手段があるなら、見捨てるのは少しつらい」
「そうですか・・・」
にぃは、少し嬉しそうだった。
「その為には、協力者が必要だ。そっちの方はどうだ?」
「今の居場所は、食堂です」
さんにお願いして、伊藤さんと言う子を探してもらっていた。出来れば、仲間に引き込みたい。
「では、少し出かけてくるよ」
「いってらっしゃい」
猫たちに見送られ、研究室から出る。部屋の中には誰もいない。さんとよんが来てからは、この部屋の中には、誰かが来たと言う形跡は無い。こちらへの監視が、緩んでいるみたいだ。
「伊藤さんですよね?」
「はい?」
食堂で一人、ボーとしている彼女を見つけた。
「ほかの人は、いないのですか?」
「あの二人は、ちょっと・・・」
伊藤さんは赤面していて、なんだか、少し言い難そうだ。
「そうですか、今は少しお時間ありますか?」
「ナンパですか?」
「こんなおじさんが、いまさら女子高生をナンパなんてしませんよ」
「そう?確かに、もっと子供をナンパした人だと、範囲外かな、私は」
「人聞きの悪いことは、言わないでもらいたいですね」
「あんな可愛い子を手なずけるなんて、凄いと思いますよ」
「趣味が一致しただけです」
「それが、羨ましいのです。 私では、到達できない場所に、貴方はいます」
「どんな場所ですか?」
「ガイアや天馬について行かなかったのは、せめてもの救いです」
「ガイア?」
「大地と書いて、ガイア。あの子、特撮マニアだから、助かったわ」
「もう一人は、ペガサスではないんだね」
「えぇ、あっちはてんま。美少女ゲーム好きだけど、ロリコンではないらしいわ」
「ホモではないよね?」
「そっちの系統ではないわよ。今だって、部屋にって、これ以上は言えません」
そういえば、売店に風俗系のサービスチケットがあった気がする。確かに、これは言えないし気まずい。
「えっと、私に何か、用でしょうか?」
「一応、名乗っておく。私の名前は、刈谷正義。伊藤さんにお願いしたいことがあります」
相手が女子高生なので、正直どうやって協力を頼もうか悩んでしまう。
「今の時間は暇だから、内容次第で手伝いましょう」
「よろしいのですか?」
「一つ、頼みを聞いてくれるなら」
「何でしょう?」
「その、後ろに隠してあるもの、私に見せてもらえませんか?」
「・・・」
「こう見えて、私結構チートなんですよ」
伊藤さんは、自分で自分のことをチートだという。魔力が多いだけではないらしい。
「はぁ、ここでは見せられませんよ。私の部屋に来ますか?」
「現時点で、それはやめておきましょう。あの二人が、変な誤解すると後がややっこしいことになります」
「仲いいの?」
「それなりに、男女の関係はありませんよ」
「そんな関係なら、今の状況は無いですよね」
「っ!!!」
「これに関しては、後で説明しましょう。手伝ってもらっても、いいですか?」
「何をすればいいのですか?」
「これに、魔力を注いで欲しい」
魔法の籠手から、薬のビンを取り出す。
「これは?」
「魔法薬の、試作品」
彼女は、私の後ろにあるラジコンの存在に気づいていた。気配を消し、姿を隠す魔法で、普通の人は気づかないと思っていた。
自動的に私を追尾して、周りの情報を記録する。何か見落としが無いか、一人では気づかないので、にい達に確認してもらっている。
「危険な薬ですか?」
「流行病の特効薬になるはずだ」
「流行病?」
「ここに猫たちが、教えてくれんだよ」
「この猫、しゃべるのですか?」
「異世界だからね」
「流石、異世界です。猫の薬ですか?」
「猫にも効く、薬かな?」
「そういうことなら、協力します」
「助かるよ」
そう言って、次々と、薬のビンを取り出す。その数の多さに、伊藤さんは若干青い顔になるのだった。
3日ごとに更新予定です。
アルファポリスさんにも、投稿してみました。




