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灰色の冒険者  作者: 水室二人
23/102

VS 鼠使い その1

 猫達の死亡事件の容疑者、鼠使い。

 諜報部に所属している事は、三姉妹からの情報で判明した。

 流行病の可能性もあるので、調査は慎重に行いたい。

「この国は、疫病とかの流行は無かったのですか?」

「記録ですと、ここ数十年はありません」

「この国の今の状況は?」

「首都で、若干病気で死亡と思われる事例が、報告されています」

「首都以外は?」

「情報がありません」

「バギーを、周辺の町へ送って、状況を確認してくれ」

「了解しました」

 にぃ達三姉妹に、調査を依頼する。元諜報部だけあって、色々と調べるのが上手だ。バギーの機能も、ある程度使いこなしている。

「私は、何をすればいいのかにゃ?」

「十色は、高校生3人組を探してきてくれないか?」

「外を歩くのは、いいのかにゃ?」

「そのための、猫鎧だろ」

「新型のほうかにゃ?、暑苦しいから苦手だにゃ」

「その辺の、改良も考えるよ」

「お願いするにゃ」

 十色の存在は、色々と切り札になるので、この国の連中に把握されたくない。それを誤魔化すために、猫の鎧を作り上げた。

 それを纏った十色は、外見は虎になる。小型の百個に見えるきぐるみの様な、凶悪な鎧。それが新型猫鎧である。初代の猫鎧は、そのまま猫に鎧を着せると言うものだった。十色の認識を隠蔽するための、試作品だ。

 新型は、外見を偽る事も可能になった。外装をパージすることで、戦闘向けの初期猫鎧になる。防御力だけでなく、尻尾に刃を持たせ、両腰に簡単な射撃武器を取り付けた、なかなかの物になっている。

 角をつける案もあったけど、十色に却下された。

「刈谷さんは、慎重ですにゃ」

「鼠と侮って、酷い思いをしたくないからね」

「鼠は、嫌いかにゃ?」

「たかが鼠でも、愉快な仲間が集まれば、鼬を倒す可能性もあるかなれ」

「にゃるほど。なら、ふざけた鼠どものどくろを映す夕日になりますにゃ」

「では、3人を探すのを宜しく頼む」

「にゃ!」

 十色は、早速新型猫鎧を身にまとい、外に出て行く。街に虎がいると驚く人が多いかもしれないが、果て無き迷宮内なら、別に不思議ではない。隠密効果もついているし、十色なら上手くやるだろう。

 その間に、私もやるべき事をしておこう。

 鼠使いTがいると言うのは、水の塔という場所になる。結界の類が無いのは確認できた。石を投げ入れたり、バギーをギリギリまで接近させたりと、慎重に行っている。

 ラジコンヘリを改良して、空中から偵察できる道具も作成した。無音ヘリと言う凶悪なものができてしまった。動力を魔力に変えた結果、モーターの音が消えたのだった。大きさも、かなり小型にしたのに、性能は劣化していない。手乗りサイズの無音ヘリで、カメラとマイクが搭載されている。

 それを使い、水の塔の内部を調査する。

 調査の結果、鼠使いの姿は確認できなかった。建物的に、確認できない空間が何箇所かあった。

 塔の見取り図は出来たので、細かいことは、後で検討することにする。

 塔の中は、研究施設のようで、動物を使役するスキルを持った人物が何人か確認できた。

「犬とスライムと、ゴブリンなのか?」

 確認できたのは、その3種類。鳥がいないのは、正直助かる。どうやら、戦闘用として確保しているみたいで、諜報に使っている形跡は無い。それぞれ、5匹確認できた。使役する生き物には、限度があるのかもしれない。

 ここに、鼠が加わるのだろう。ただ、塔の中に鼠の存在は確認できなかった。いたような形跡はある。だが、その姿は、確認できなかった。


「戻ったにゃ」

「おかえりなさい。どうでした?」

「一度、会って話をしたいと言うことにゃ」

「ご苦労様」

「あの三人、結構危険かも」

「どういう意味で、危険なのかな?」

「大地と、伝馬という二人組み、ストライクにゃ!!」

「・・・」

「伊藤さんと言う子が、魔力の高い子だけど、女の子そっちのけで、二人の世界を作っているのにゃ」

「二人とも、かなりの戦闘力を持っているにゃ。お互いが、背中を預けられる関係だと、言っていたにゃ」

 十色のテンションが、今まで無いぐらい高い。あえてスルーしたが、中央腐敗を目指すと言っていたのは、やっぱりミスではなく、こっちの事だったのか・・・。

「後、吉良さんがあいたいと言っているにゃ」

「吉良さんとも接触したのか?」

「部屋の外にいたにゃ。私のことは内緒なので、こっそり手紙を渡したにゃ」

「ありがとう」

 そう言えば、事前ポーションの甘口を渡す約束が会った。色々と作ったので、渡しに行こう。

「少し、出てくる」

「にゃ」

 十色達に一言かけて、研究室から外に出る。そして部屋から出てみると、吉良さんが立っていた。

「どうかしましたか?」

 吉良さんは、驚いた感じで固まっていた。

「あ、すみません。巨大な猫が、ここにいたような気がしたので・・・」

「巨大な猫ですか?」

「私の見間違いでしょう。猫というよりも、虎みたいでしたし、そんな生き物がいるとは思えません」

「猫なら、結構たくさん言いますよ」

「それは知っています。刈谷さんの部屋にも、出入りしてますよね?」

「知っていましたか」

「館の中を、色々と調べたので」

「何のためにですか?」

「生き残るためです。正直、私は死にたくないです」

「それは、当たり前です」

「生き残るために、人を殺した私が言うのは、変でしょうか?」

 この子は、少し追い込まれているのかもしれない。

「私も、この世界に来て人を殺したかもしれません。それでも、死にたくは無いですよ」

「・・・」

「外で話すのも、何ですから、私の部屋に入りますか?」

「やめておきます」

 そう言って、吉良さんは視線をずらす。その先には、誰かの影が見える。

「解りました。取りあえず、これを渡しておきましょう」

「これは?」

「特性事前ポーションです。リクエストどおり甘口の強化版ですよ」

「試しに、飲んでもいいですか?」

「どうぞ」

 吉良さんは、甘口ポーションをくいっと飲む。

「甘いです・・・」

「甘口ですからね」

「これ以上、甘く出来ますか?」

「えっ?」

「おかしくないですか?甘いだけのコーヒーは卒業って、甘いだけのコーヒーがあっても良いじゃないですか!」

「そ、それに関しては、同意しよう」

「これ、魔法を使って甘くしていますよね?」

「解るのか?」

「この国の調味料ではここまでの甘さは、再現できません。理不尽な魔法という存在ある世界です。可能性はそれしかありません」

「その通りだよ」

「では、もっと甘いのを、作ってもらえないでしょうか?カロリーを気にしないで、甘いものを飲んでみたいのです」

「了解した。ただ、そのためには魔力が必要なのだが・・・」

「刈谷さんは、魔力少なかったのですか?」

「あぁ」

「私も、魔力は多くないですからね。何か、手伝えることがあればいいのですが・・・」

「それなら、果て無き迷宮で何か面白い物が見つかったら、譲ってもらえないかな?」

「それくらいなら、良いですよ。今まで見つかって、何に使うか解らないガラクタも多いので、譲りましょうか?」

「ガラクタを?」

「私がわからないだけで、刈谷さんなら使えるかもしれませんよ」

 そう言われ、吉良さんから色々と道具を譲り受ける。

「後、これも渡しますね」

 魔法の籠手から、小さな石を取り出す。

「これは?」

「中庭で見つけたものです。なんとなく、気になって拾ったのですが、刈谷さんに渡したほうがいいと思ったので、渡します」

 それがけ言うと、彼女は立ち去った。私は、研究室に戻ると、もらったものを解析機にかける。

「彼女のなんとなくは、スキルなのかな・・・」

 最後にもっらた小石は、浄化石という物だった。魔力が切れていて、効果が抜けていた。下水や、野生動物についている雑菌を消毒する効果があるという優れものだ。

 この石には、守護獣と呼ばれる存在が、魔力を供給していたらしい。今は、その守護獣はいないらしい。

 その結果、疫病が流行りだしたのかもしれない。

「主任、大変です」

 にぃ達が、揃ってやって来た。

「どうした?」

「周辺の町では、既に病気が広まりかけています」

「それと、水の塔で、何か異変があったみたいです」

「本当か?」

「慌しく、動いている気配があります」

 そういわれ、無音ヘリを操作して、中の様子を確認する。

「これって・・・」

「はい、鼠使いです」

 そこには、部屋の中で死んでいる、鼠使いの姿があった。

「死後、数日はたっていそうです」

 しいがそう告げる。格闘を極めた彼女は、その姿を見るだけで、相手の状態を見抜くという特技がある。

「何か見落としているのかな?」

 犯人だと思っていた人物は、既に死んでいた。もう一度、最初からやり直すことにしよう。次に見つかるのが、私の死体にならないために・・・。



 3日に一回のペースで更新予定です。


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