戻れない道
倉庫の中に、懐かしいものを見つけた。
子供の頃に流行っていたラジコンの車。バギータイプで、苦労して作った思い出がある。
ただ、充電時間が長くて、稼働時間が短いと言う欠点があり、あまり熱中できなかった。バッテリーをたくさん用意することも出来ず、遊ぶことも無くなり、埃をかぶり、消えてしまったもの。
それが、再生出来るようになっていた。
演算機で、データを構築する。そこに、スマホからとったカメラ機能を搭載、ほかにもデジカメのデータにあった望遠機能を加える。ほかにも、ボイスレコーダーの機能を加える。操縦に関しては、プロポも作成。手元のモニターで、リアルタイムで映像を見れる優れものが出来た。
魔力電池を搭載していて、稼働時間は補給なしで3日は稼動可能。行動範囲は、大陸全土移動しても大丈夫と言う恐ろしいもので、地下は確認できていないので、これから確認する必要がある。
透明化と、気配遮断、軽量化の魔法自陣が刻んであり、見つけるのには苦労するだろう。
追加で、ワイヤー射出機能をつけてあるので、悪路だけでなく、天井方向に登ることも出来る。
探索型ラジコンバギーを、先日の迷宮探索のときにばら撒いておいた。8個の球体の中には、これらが入っていた。
一台を見つかりにくい場所を探して固定して、それを基点に地図を作りながら迷宮をこっそり調べていく。ただし、一台だけすぐに地上に出られる場所を探して、迷宮から出すことにした。
「上手く行きました」
「了解」
サポートしてくれているのは、つーだった。基本バギーはプログラムした法則にのっとって動いている。
全自動と言うのは無理だから、簡単な命令を作っておいた。緊急時は、こちらで操縦出るようにしてある。
「場所は、解りそうか?」
「見つけました。これより、確認します」
つーは、プロポを操縦して、バギーを走らす。ほぼ無音で走る、それに気づく人はいない。
迷宮の小さな換気口から外に出たバギーは、館以外の外の景色を見せてくれた。
中世のヨーロッパのような町並みなのは、異世界お約束なのだろうか?
匂いまではわからないが、下水はあるみたいで、意外と清潔ではある。中途半端な異世界の知識は、ある程度取り入られているのだろう。
「見つけました」
「ありがとう」
私が探していたのは、この国の研究室だった。昨日の迷宮探索のとき、アイさんは札の魔方陣を見ていた。監視役wしているなら、記憶力に関しての能力を持っているかもしれない。もしくは、カメラの役割をする魔道具があるのかもしれない。
魔方陣は、正確に複製すれば同じ効果が出る。逆に、少しでも違うと暴走する危険があ。私が作る魔方陣は、文面に仕掛けがあり、そのまま作ると罠が作動するようになっている。正式な手順で作らなければいけない。簡単に言えば、複製機で作成しないと、駄目になっている。例外で、肉球魔法でスタンプされたものは、普通に使える。
アイさんが記録したものは、何処かで再現されるだろう。そう予想して、それっぽい場所を探していた。
街外れの塔のような場所に、魔方陣の反応があった。カメラの特殊機能で、ゼッフル君を視認できる機能をつけておいた。そのおかげで、ゼッフル君が塔からあふれ出しているのが見える。
そのままだと危険なので、魔力を流してゼッフル君を全てその塔の中に押し込める。つーが操作して、私が魔力を調整する。このバギー、色々と詰め込みすぎたけど、今の所いい感じに仕上がっている。
「これだと、助からないですよね?」
「知り合いがいたのか?」
「妹たちが・・・」
どうやら、つーの妹が塔の中にいるらしい。
「すまない・・・」
今からでは、間に合わないだろう。どうにかする手段が、何も浮かばない。
「そうですか・・・」
それは、つーにも解っている。元々、精霊猫になった時点で、元の生活には戻れない。
「あっ・・・」
等の中から、炎が出た。それはゆっくりと広がって、最後は爆発を起こした。器用に塔だけを、炎は燃やし尽くした。中にいた人は、誰も助からない。後かたっも無く消えてしまった。
一瞬の出来事だが、これは私が行ったこと。異世界ではじめての人殺しと言う事になる。
なんともいえない、不思議な気持ちが、体の中を支配する。
「五人か・・・」
この世界は、殺した相手から徳と言うものを奪うシステムがある。RPGゲームの経験値みたいなもので、集めると強くなるらしい。先日の果て無き迷宮の探索時も、徳を魔物から奪ったが、私自身の強さは変わらなかった。その代わり、研究室の昨日は上昇して、色々とできる事が増えていた。
「はい?」
「塔の中にいた人の数。5人分の徳を、得たみたいだ・・・」
離れていても、効果があるらしい。しかも、直接攻撃したわけではない」
「狩人が、罠を仕掛けた場合に、徳が入ると聞いたことがあります」
「そうか」
「それと、あの塔には7人いたはずです」
「解るのか?」
「諜報部の塔です。通常9人在籍していて、一人は私、もう一人は十色様のときに死亡しています」
「アイさんが、あそこにいたのか?」
「あの人は、別の部署の人です」
「外出中だったのかな?」
「それは無いと思います」
「そうなると、助かった人がいるのか?」
カメラ越しに見る景色では、生存者はいないと思う。爆発に気づいて、多くの人が集まっているが、塔の残骸中から、人が出てくる気配は無い。
「ふぎゃぁぁ、ひどい目にあったにゃ!!」
突然、背後から十色の声が聞こえた。彼女は、先日作った国威の鎧を参考に、完全に中の存在をごまかすことに成功した、猫鎧のテストをしていたはずだった。
「何があったんだ?」
「もう少しで、優秀な人材を失うところだったにゃ」
十色は、猫鎧のテストのついでに、人で不足を解消すると言っていた。
「人材は見つかったのか?」
「ふっふっふ、こんなこともあろうかと、準備しておいて盛会だったにゃ」
「まさか・・・」
十色の後ろから、二匹の猫が姿を現す。三毛猫と、白猫。
「「お姉ちゃん!」」
2匹の猫は、そう叫びながら、つーに抱きつく。二人足りなかったのは、既にそこにいなかったから。
「説明していたら、危うく撒きこまれる所だったにゃ」
「もしかして、あの塔とこの館は近いのか?」
「そうにゃ。この館の周りに、4つの塔があるにゃ」
十色の話では、つーの妹が塔にいる事を聞いていたらしい。人で不足を解消するために、スカウトに出てみれば、あの爆発。問答無用で、猫魔法を使い、妹さんを猫にして、説明をしていた最中の出来事らしい。
元々、諜報部に批判的だったので、十色の話を受け入れて、ここに来たとの事。
最悪の事態は免れたと思う。ただ、私の判断では、この子達を見捨てるしかなかった。
一人では、駄目なんだろう。十色に頼まれたことは、私のこと優先していたのでほとんど進んでいない。
私は、この手を血で塗らした。もう、戻れない。これ以上悪くなる道を、十色は変えてくれた。
これは、仲間の大切さと、情報をしっかりと把握する必要性を、再認識する出来事だった。
嬉しそうにじゃれあう3匹の猫。元々、この世界の人間だ。私たちの都合で、猫に姿を変えられた、少女たち。
私の罪は、思ったよりも深いのだろう。戻れない道を進む決意を、心に決めたのだった。
1週間に2話の予定で更新します。




