不自然な魔物
勇気とアイさんと3人で、果て無き迷宮へとやって来た。
過去に召喚された、異世界人が作った迷宮。
最初は、訓練のために作られた場所だったらしい。その後、異世界人が暴走して、巨大な迷宮へと変化した。大陸全土を埋め尽くし、足元全てが迷宮になっていると言われるほどだった。
中は魔物が徘徊していてる。魔物は地上に出ることは無いが、貴重な魔石を持っているので、それを目当てに人は迷宮へと挑んでいる。
ちなみに、地上にも魔物はいる。だが、その力は強大で、戦うためには魔石を利用した武器が有効だった。迷宮は、宝箱という謎の存在もあり、それをめぐって地下世界で人同士の争いもある。
そんな危険な場所に、3人だけと言うのは正直心もとない。上の階は、訓練場の跡という事なので、比較的安全らしい。
私は、自分も持ち物を念のために確認する。果て無き迷宮を探索する場合、国から支援物資が色々ともらえた。
魔法の籠手と言う魔道具が、もっとも重要な物だろう。空間収納と言う、便利な機能のついた魔道具だ。容量は、学校の体育館ぐらいの広さらしい。重さは無制限で、時間の経過は普通にある。生き物を入れることは不可能との事。
もっとも、果て無き迷宮の魔物は、魔石しか残さないので、容量はあまり意味が無い。
中には、回復ポーションが幾つか入っている。
武器は、取りあえず普通の剣を持っている。訓練用のものらしい。いい武器は、自分で働いて買う必要がある。魔石は、売店で売れるので、そこから買うらしい。もっとも、事前ポーションの販売である程度資金があるので、上級の武器を買うこともできたのだが、今回は見送った。今回の目的は、剣よりも魔法。魔方陣を使った札のテストが目的だった。
「小父様、先輩の言うことは聞いてくださいね」
テンション高く、勇気が横で笑う。
「戦うのは、怖くないの?」
「この辺は、平気だよ。ここは、ちょっと変っているからね」
ちなみに、勇気の武器は拳だった。魔力を纏った拳で、戦う近接戦闘に特化していた。
「せいっ!!」
小さい体ながら、見事な一撃でスライムを消し飛ばす。このあたりは、スライムしかないらしい。
某DのつくRPGのような丸々したスライムだった。物理攻撃無効とかいう、凶悪な魔物ではない。攻撃も、体当たりだけと言う、最弱に分類されるスライムだった。
「これで、50個か・・・」
魔石を拾いながら、確認する。魔法の籠手に収納すると、中に何が入っているのか、簡単に確認できる。
「小父様、その荷物は入れないのですか?」
「これは、すぐに使うかもしれないからね」
ここまで、私は大きなリュックサックを背負っていた。中には、自作した道具が色々と入っている。札用の魔力電池は、ここに隠してある。魔法の籠手に入れてもいいが、籠手に何か仕掛けがある可能性もあるから、迂闊なことはできない。
「あちらに、スライムが10匹ほどいます」
「ありがとう、次は試したいことがあるから、私にやらせてくれ」
「はい」
アイさんは、サポート役だった。魔物を探す能力を持っているみたいで、事前に見つけて教えてくれる。
「炎の矢!」
札を取り出し使用する。札から浮かび上がった炎は、スライムめがけて襲いかかる。
「爆破!!」
私がそう唱えると、炎の矢は威力を増し、スライムを全て焼きつくす。
「凄いです!!」
「・・・」
はしゃぐ勇気と、冷静なアイさん。アイさんは先程札を見せて欲しいと言ってきたので、見せることにした。何かの能力を発動させていたが、気にしないことにする。
「こっちのテストも、なかなかだな」
実は、今の魔法には裏がある。迷宮と言う閉鎖した空間での戦闘。迷宮内は風通しが良く、酸欠になることは無いらしい。階層によって、広さが変り、特殊な地形も多いと聞く。無差別に攻撃できないので、何かいい考えはないかと考えていたときに、思い出したものがあった。
上手く作れないかと試してみたら、意外と簡単に作れてしまった。
素材は空気。解析機で、空気だけを解析して成分を確立する。そこに手を加えて、可燃性の気体を作ることに成功した。後は、魔方陣にプログラムを組み込み、魔力を込めることでイメージした場所に散布できるようする。名づけて、ぜっふる君が完成した。名前が、かなり危険な物になっているので、駄目なら後で変えるかもしれない。
アイさんが発見したスライムの周りに、予めゼッフル君を散布する。炎の矢とほぼ同時に散布したので、アイさんは気づかなかったみたいだ。
威力の調整も出来るので、迷宮での貴重な戦力になるだろう。
そして、もう一つの目的を果たすことにする。大きな爆発が起きたことで、アイさんの意識は完全にそこに向いている。
私は、リュックサックの中から、幾つかの球体をばら撒いた。直径10cmほど球体は、地面に落ちると、すぐに姿を消してしまう。それは、全部で8個。見えないだけで、すぐ側にいる。
「二人とも、気をつけてください」
「どうかしたの?」
「強い魔石を持った魔物が近づいています」
アイさんが、通路の奥を見ながら、警告してくる。
(そっちで確認できるか?)
(確認しました。大きなスライムが、出現しました)
(最初からいたのではないのか?)
(そこの女性が言った後で、出現しています)
(なるほど)
足元の球体から、つーの声がする。正確には、足元の球体からのメッセージをテレパシーのような物で受け取っている。トランシーバーの応用で、通信機を作ることに成功している。8個の球体は、偵察用の魔道具で、色々と便利な機能を取り揃えている。
「こいつも、私がやろう」
ゼッフル君を散布して、炎の矢を放つ。その一撃で、大きなスライムは消し飛んでしまった。
「見掛け倒しだったな」
「その様ですね・・・」
残された魔石を拾いながら、私はつぶやく。
この迷宮の魔物、賢者の国の人間はある程度操れるのかもしれない。何の為に、こんなことをしているのか、まだわからない。
目的が解るまで、慎重に行動しなければいけないだろう。
ただ、この辺りのスライムでは、正直色々と物足りない。
次の準備は出来た。
生き延びるために、この世界を知るために、行動を始めよう。
1週間に2話ぐらいのペースで更新予定です。




