黒衣の騎士もどき
ここ数日、研究室にこもって開発を続けていた。
事前ポーションは、性能を見込まれ販売が開始された。
通常のポーションより若干高めだが、保険と言う考えから、結構売れ行きがいいらしい。
館の外の世界は、いまだに謎が多いので、うかつなことが出来ない。
そろそろ、館の外の情報が欲しい。十色経由で、猫の世界の情報は色々と入ってくる、だが、人間の世界の話となると、微妙に違うので、自分の目で確かめたいところだ。
外の世界を調べるにあたって、問題になるのは毒針の存在だろう。あれには、私の居場所を知らせる機能がある。これを何とかしないと、外にこっそり出ると言うのは、無理だった。
だが、今の私たちには、その問題を解決する方法がある。
つーの中にあったビーコンは、毒針とほぼ同じ物だった。それを、解析機に使ってみると、今まで以上に詳しいデータが取れた。
録画機能に似た物まであったので驚いたが、それを改ざんする方法などが解ったので、それようの偽データを作ることにしてある。
「主任、これをどうすればいいのでしょう?」
「これは、いっそ十色の自爆に巻き込まれたことにしよう」
若干時間に誤差が出るが、つーの記録を改ざんして、十色の自爆に巻き込まれて、死亡したことに偽装している。
「大丈夫でしょうか?」
「あの部屋は、かなり酷い事になっていたんだろ?」
「そうですにゃ。何もかも木っ端微塵にゃ」
「でも、私が主任の部屋に来たときと、十色様が転生されたときの時差があります」
「その辺は、誤魔化せなくても良いのかもしれない」
「何故ですか?」
「この国の連中の情報解析は、そこまで高くない。何か、ちぐはぐなんだ。異世界人の技術が、中途半端すぎる」
「そうでしょうか?」
「つーが理解できていないのも仕方ない。この辺の技術を確認するためにも、この偽データを仕上げよう」
「解りました」
研究室から出せないつーは、時間があるのでこちらの知識を色々と仕込んでいる。精霊猫の特質もあり、高い技術を吸収していた。
「次は、これを仕上げるか・・・」
私は。迷宮探索用の鎧を作成している。毒針の位置情報の発信を、特殊な魔法陣を書き込むことで、妨害することが出来た。私の外見を偽るためにも、全身鎧にした。勇気と一緒にいた騎士の鎧を参考に、デザインはしてある。西洋風の鎧になっている。それを着込むと、全体的に一回り大きく見える。
迷宮探索用に、気配を薄くする魔方陣や、体力や筋力を増加する魔方陣が刻んである。
魔力電池をセットすることで、それらは効果を出し、長時間の活動が可能となった。地下での活動がメインなので、全身は真っ黒になっている。武器は、大剣。黒い刀身の、身長と同じくらいの大剣だ。
迷宮で戦うには、向いていない感じだが、その狙いもある。相手の視線を、無意識に集める魔方陣が仕掛けてある。
「魂砕き?」
「ついでに、その機能もつけてみるか・・・」
ある程度、意識して作ったので、相手の生命力を奪う魔方陣を刻み込む。柄の部分に魔力電池を差し込んで、手元のスイッチで作動するように作り上げる。
「仮面をつけて、顔を誤魔化すかな」
「これはどうです?」
「そっちのほうが、いいかもしれないな・・・」
つーが示したのは、火傷風の傷を偽造する仮面だった。怪しい仮面をつけるよりも、目立つ傷を作り、そこに一色を集めたほうがいい。その上で、ちょっと怪しい仮面をかぶれば二重の偽装になる。
完成した鎧を身にまとい、動きをチェックする。元々、剣術なんかしたことは無い。戦闘行為の経験も無い。素人が、いきなり戦うなんて出来るはずがない。訓練は、必要だ。
「我ながら、ここまで酷いとは・・・」
剣を振りながら、我ながら戦闘に向いていない事に絶望していた。
「いっそ、動きをプログラムするにゃ?」
「それも、良いかも知れないな・・・」
いい年下おじさんには、戦闘は厳しすぎるということが判明した。一見鎧だが、パワードスーツになってしまった。
剣で戦うときは、一定の動きをアシストしてくれる。前回作った札とあわせて、魔法中心での戦闘を心がけよう。経験をつむことで、自身がパワーアップするかもしれない。
「せいっ!!」
大剣を振るう。ターゲットを破壊することが出来た。
「やっーー!」
横薙ぎから、袈裟切りへと動いてみる。こちらの意思を読み取って、鎧が動く。正直、後で筋肉痛になるのだが、事前ポーションを飲んでいるので、すぐに回復できる。
「な、何とか形になったな」
時間はかかったが、鎧は完成した。黒の鎧と名づけて、いつでも出撃できるようにしてある。
他にも、魔法陣の刻んだ投げナイフを用意したり、偵察用のメカを作ったりと、準備をする。
研究室がレベルアップしたことにより、新たに追加機能があった。非常口の設置が可能になったのだ。
外に出る必要があるので、勇気に頼んで果て無き迷宮に行くことにする。
今回は、札だけを持っていく。非常口をこっそりと設置するのが目的だ。
「小父様、よろしくお願いします」
「こちらこそ」
果て無き迷宮は、上の階層ほど安全指数が高いらしい。なので、浅い階を探検するだけなので、いつも一緒の騎士はいないらしい。その代わり、想定外の人物が一緒に行くことになった。
「よろしくお願いします」
それは、メイドのアイさんだった。監視役なので、出来れば一緒にいて欲しくない相手だ。
「では、行きましょう」
勇気は、嬉しそうに手を握ってくる。
こうして、はじめての迷宮探索が始まったのだった。
1週間に2話ぐらいのペースで更新中。




