正義とは?
あくまで、個人の考えです。
談話室に、気まずい雰囲気が漂う。どうした物かと悩んでいると、足元に猫たちがやってきた。
「にゃっ!」
その仲の一匹が、光る肉球を私に押し付ける。
「これは、凄いな・・・」
光が消えると、先程穴のあいてしまった服が、元に戻った。
「にゃ~~~」
すりすりと、頭をこちらに押し付けてくる。
「おりがとうございます」
そう言いながら、ポケットから煮干を取り出す。十色から、猫たちの好物を聞いておいたのだった。さすがに、大事にされる存在だけあって、売店には猫に関連する物が充実していた。
「凄い猫さんですね」
「異世界の猫は、魔法使えるのね」
「そうみたいだな、煮干を持っていて正解だった」
気まずい雰囲気が、少し解消された。
「あのお兄さんたち、躊躇わないで小父様を攻撃したよね?」
「そうだな、元の世界でも、あんな感じなのか?」
「いくらなんでも、人をさすような人ではありません。私関係で、絡んでくることは多いけど、乱暴者ではなかったはずです」
「となると、ここに来たのが、原因か・・・」
取りあえず、二人に色々と気になることを聞いてみた。お互い、能力に関しては色々と隠している。その慎重さは嫌いではない。
果て無き迷宮に関して、実際あったことを聞いてみた。その結果、若干わかったことがある。
魔物の状態や強さ、戦闘方法、などは、ある程度予想できた。
気になるのは、迷宮は大陸全土に広がっていて、sの資源を求め、地下世界で領土問題が発生しているということだろう。
迷宮の中には、貴重な鉱物資源があり、宝箱という存在から出る貴重品も含め、早い者勝ちなので日々奪い合いが何処かで起きているらしい。
「二人は、大丈夫だった?」
奪い合いということは、人同士で殺しあうということだ。
「私は、騎士の人がいたから、何も無かったよ」
「私たちは。冒険者と言う人に狙われて、撃退しました」
「それは、吉良さんが?」
「3人で、協力して、撃退しました」
「相手は?」
「・・・」
「吉良さん?」
「多分、全員死んでいます。でも、何で私それを覚えていないのかな?」
多分、気づかなければ記憶に残らない出来事。気づいてしまえば、解ける魔法。
「割り切れる?」
「少し、無理です。手の感触が、今になって・・・」
「大丈夫?」
勇気も、吉良さんの変化に気づいて、心配する。
「大丈夫ではないと言いたいのですが、不思議ですね、恐ろしい感じですが、大丈夫なのです」
「でも・・・」
「この世界のルールにのっとった行為です。私が悪いとも、相手が悪いとも思えません。それに、撃退しなければ、私が死んでいました。今はまだ、死にたくありません」
精神的に、私たちに何かの呪縛がかかっている。殺人に対しての禁忌は、その呪縛によって抑えられているみたいだった。
「勇気ちゃん、迷宮に行くのは、やめられないの?」
「多分、無理。私の能力を騎士の人は多分気づいた。私も、死にたくないから、逆らうとどうなるか、不安」
「結構、色々と考えているんだな」
「子供を馬鹿にしないでください。勇者とか英雄は、ろくな目にあわないと言うのが、今の常識ですよ」
「何処の常識だよ・・・」
「お父さんの持っている本の中の常識です」
「勇気ちゃんのお父さん、本好きなの?」
「大好きですよ、お前にはまだ早いと言って、隠し本棚の薄い本は見せてもらえませんが、漫画とか小説とか、たくさん読みました。そう言えば・・・」
改めて聞くと、凄いお父さんだな。勇気は吉良さんをじっと見つめて、何か考えている。、
「吉良先生の書いた本も、読みましたよ」
「みゅぎにゃ!!」
「吉良先生?」
「ずっと気になっていたの。思い出しました。鳥居さんの一仕事と言う家康の家臣の小説かいてますよね?」
「あはは・・・」
「もしかして、吉良大和先生?」
「はい」
ペンネームが、それでいいの?と思わず別の誰かを連想するが、若手の時代小説家として、脚光を浴びている人物だ、
「時代小説書いている人だから、男の人だと持っていました」
「私も。でも、本屋さんでサイン会やった時に、見ました」
「あれは、お父さんが代理で表に出ていたはずですよ」
「あそこは、家なので、裏事情をしりました」
「え、勇気ちゃん、幸せ書房の家の子なの?」
「はい」
「えっと、その本屋は、駅の近くの書店ですか?」
お互いのことを確認すると、意外と全員ご近所さんだったということが判明した。
「元の世界には、私の作品を待っている読者がいます。だから、ここで死ぬわけには行きません」
それが、彼女の理由みたいだ。
「歴史小説家書いているのは、やっぱり名前から?」
「そうです。私のお父さんが、ひねってつけた名前ですが、気になって調べたら同じ名前の人がいて、それを追求した結果、歴史が好きになりました」
「そこまで知っていて、あの二人と一緒にいてもいいのですか?」
「たまたま、似た名前の人が集まっただけです。過去の歴史と、今は違います」
「確かにそうだな」
「小父様、吉良先生と、さっきの二人の関係って、危険なの?」
「歴史的に見ると、浅野、大石と吉良だから、忠臣蔵の組み合わせですよね」
「はい。でも、吉良様は悪くないと言う話もありますよ」
「悪くないのに、討ち入られたの?」
「詳しく調べると、謎の多い出来事ですからね。私の夢は、義周視点で物語を書くことです」
「義周?」
「吉良義周、赤穂浪士の討ち入りの犠牲者の一人だよ。あまり名前の出ない人だから、知らない人のほうが多いかな」
「そうですね、私の友達も、知らない人が多かったです」
「私は、はじめて聞いた」
「私の場合は、正義について考えていたときに知りましたね」
「正義ですか?」
「私の名前が正義ですからね。子供のころは、からかわれたものです」
「勇気は、今でもからかわれるよ」
「とにかく、正義ってなんだろうと、結構考えた物です」
「考えて、結論は出たのですか?」
「少なくとも、宇宙さえも恐れない、心に宿る物ではないということですね」
「じゃぁ、私は星よりも光る瞳だね」
「勇気はいったい幾つですか・・・」
「そんなネタを振る小父様が、年寄りなのです」
「すぐに解る、勇気ちゃんのが凄いと思うわ」
「確かかに、勇気が色々とネタを知っているのは助かるな。小さな子と話すのは、少し緊張していたんですよ」
「あははは」
私みたいなおじさんが、子供と話しているだけで下手をすれば捕まる時代ですからね。
「刈谷さんは、赤穂浪士嫌いなのですか?」
「そうですね、嫌いですよ。私も小さいころは忠臣で、立派な人物だと思っていましたが、今では間逆の考えです」
「立派ではないと?」
「今の考えで、過去の出来事を考えるのは間違っているのは、承知していますが、勘違いテロリストと言うのが今の評価です」
「凄い考えですね」
「悪い人たちだったの?」
「善か悪かという考えでは、悪なんでしょう。でも、当時の人から見れば、忠義の人になります」
「今でも、忠義の人と思っている人のが多いですけどね」
「残念ながら、私もそう思います」
「なんで?」
「物語の完成度が、高いからでしょう。あの物語を作った人は、天才だと思いますよ」
「そうですね、私の目標は、赤穂浪士が悪役の忠臣蔵を書くことですが、なかなか上手く行きません」
「私も、色々と考えたことはありますよ。この話は、ゆっくりと二人でしませんか?」
「ナンパですか?」
「勇気が、暇そうですからね」
「むう」
赤穂談義になってから、ついてこれない勇気の頬は膨れていた。
「ふふ、今度は違う話を色々としましょうね」
「ほんと?」
「はい、それでは失礼しますね」
「私も、部屋に戻るね」
そう言って、二人は立ち去る。
残された私は、足元に群がっている猫たちに、残りの煮干を配ることにする。
「二人とも、凄い呪いだらけだにゃ」
「そうみたいだな・・・」
隠れていた十色が姿を現す。
「気づいた以上、何とかしたいよな」
私の中に、保護慾とでも言うべきものがあったのに驚いている。それに気づいた以上、何もしないのは後味が悪い。もう一度、できることを考える必要がありそうだった。
ちなみに、大石良金の幼名が松之丞。
この辺は、後ほど登場予定です。
1週間で、2話ぐらいのペースで更新する予定です。




