人を超え、獣を超え、いでよ猫の戦士?
「と、言うわけですにゃ」
突然しゃべりだした猫。その正体は、ニートと言っていた一色十色さんだという。
「ちょっと、確認させてもらうよ」
私たちは、研究室の中にいる。外で話していると、誰が聞いているのかわからない。
私以外の存在が、研究所に入れるかを試すいい機会でもあった。これに関しては、入室の際に私が認証すれ大丈夫だった。逆に、許可ない者が入ろうとすると、入り口で弾かれてしまう。
扉を開けた瞬間に入り込もうとした猫は、見えない壁にぶつかって弾かれていた。
解析機に猫を入れて、解析する。
名前 十色 年齢 0歳
種族 精霊猫
体力 普通 魔力 膨大
能力 肉球魔法 肉球格闘術
状態 健康
という結果になった。
いろいろと、気になることがある。
「一色さんは、自爆したの?」
「そうですにゃ」
「なぜ?」
「執事が、体を狙ってきました。あんな連中に、私の純潔を奪われるのは、ごめんです」
「それで、自爆したの?」
「もともと、消え去りたいとか、生まれ変わりたいと思っていました。こんなチャンス、二度とありません」
「元に戻れなくてもいいの?」
「当然です。あそこで、刈谷さんに会えたのは、ラッキーでした」
「そうかもね」
この、研究室の中なら、こんな会話をしていても、盗聴の恐れはない。
「ここの連中が、私に手を出すのはもっと後だと思っていました」
「襲ってきた相手はどうなったの?」
「わかりません。道具屋で、私の体力を上昇させる効果のある物を購入して装備していましたから、ただでは済まないかと・・・」
「やる気、高かったみたいだね」
「同じ効果か、わかりませんけどね。ただ、3・2・1と、カウントダウンが見えたのには驚きでした」
「この世界の、スキルは理解不能な部分が多すぎる」
「曖昧なんですよ」
「?」
「この世界は、曖昧なんです。異世界とつながった結果、いろいろな事が起こり、あやふやになった世界。異世界人の召喚は、安定のために必要不可欠なんです」
「巻き込まれた人の都合は?」
「知りません。一方的な悪意です」
「それは、猫の意識か?」
「そうですにゃ、この精霊猫と、異世界人が混ざり合った結果、十色という存在になりましたにゃ」
「彼女は、死んだということか?」
「生きてますよ。それが私。人を超え、獣を超えた存在。精霊猫とでも呼んでくださいにゃ」
「語尾ににゃをつけるのは?」
「淑女のたしなみですにゃ。時々抜けているのは、ご愛敬」
「そういうものなのか?」
「そう言うものですにゃ。ところで、刈谷さんは、どんな能力を持っているのですにゃ?」
「秘密というのは?」
「仲間に、隠し事はいけませんにゃ」
「仲間だったのか?」
「今なりました。一蓮托生ですにゃ。せっかく生まれ変わったのに、すぐに猫生が終わるのは嫌ですにゃ」
「そうだな、私も仲間が欲しいと思っていたところだ」
「何の仲間ですか?」
「この世界で、生き残るために、必要な仲間だよ」
それから、私は十色といろいろな情報を交換した。研究室の機能を紹介して、協力できることを相談する。
「十色が、魔力の供給を手伝いますよ」
「それは助かる」
倉庫の中にあって、魔力不足で実体化できないものを、幾つか実体化させる。
「おぉぉ、これにゃ!!」
「うん?」
「ぜひ、これを見せて欲しいにゃ」
十色がせがんでいるのは、DVDのラインナップ。私が購入した物だけでなく、レンタルした物も含まれていた。
この辺の仕組みはまだわからない。
「これが見たいの?」
「ぜひ!最終回の、師匠が弟子の胸に抱かれて絶命する感動のシーンを、もう一度見たいのです!」
「それ、最終回じゃない・・・」
「私の中では、あそこで終ってますにゃ!」
「十色の世代で、Gとか知っているの珍しくないか?」
「お母さんの影響にゃ、家には、Wの薄い本が大量にありました。Gはそういう目で見ていたわけじゃにゃいですが、普通にすきでしたにゃ」
「十色は、婦女子だったのか?
「どちらかと言うと、そうですにゃ・・・」
そっち系の、作品の小説やアニメがたくさんリストに増えていた。
勇気といい、この子の親の影響を受け継いでいるみたいだった。
「だから、この肉球格闘術と、肉球魔法を使って、中央腐敗を目指します。キングオフニャーとです」
二本足で立ちあがり、こぶし?を振り上げる白い猫。掲げた拳が、魔方陣を描きながら真っ赤に燃えていた。
「とりあえず、よろしく頼むよ」
「はいですにゃ」
十色が落ち着くまで待ってから、握手をする。ぷにぷにの肉球の手触りは最高だった。
ちなみに、こちらの事情は全部伝えてある。体の中に、毒針があることも伝えてある。
肉球魔法で、消滅できる可能性もあるけど、それはあえて残してある。確実ではないということと、国の連中に、毒針がなくなったことを疑問に思われるのを防ぐためだ。
「刈谷さんは、何をしたいのですか?」
全部説明した後に、彼女が聞いてきたこと。この研究室があれば、魔力の入手があれば、いろいろとできることがあると思う。だから、私が何をしたいのか、気になるらしい。ちなみに、十色は猫たちをまとめ上げるのが、最初の目的らしい。この世界の猫は、今とてつもない危機に遭遇しているので、それを何とかしたいらしい。
「私は、まだ何もしない。行動するには、知らないことが多すぎます」
「慎重なんですね」
「臆病なだけですよ」
そう、私は臆病者だ。だから、次は情報収集を始めよう。
必要な仲間は、まず一人?見つかった。
1週間に2話ぐらいのペースで更新予定です。




