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灰色の冒険者  作者: 水室二人
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建国 その2

 交渉の使者と言うのは、実は危険な仕事です。

 相手を怒らせた結果、死体で送り返されると言うのは、実際あったらしいです。

 戦国時代の話だったと思うのですが、危険な仕事です。

 組織のトップが、直接交渉に行くと言うのは、無理がありますが、最高戦力である私が行くのが効率がいいのです。

 ミラージュで、いきなり行くのは、流石に止めました。相手を刺激する必要はありません。

 それでも、それなりに力を誇示する必要もあるので、ハリアーで聖王国の城に乗り込みました。


「国として、認めろと言うのですか?」

 そして現在、聖王国の会議室で、交渉中です。

 突然やって来た戦闘ヘリに対して、聖王国の対応は甘かったです。

 城の庭に着陸するまで、あたふたするだけで、これと言って対抗する人がいませんでした。

 何人もの異世界人がいる国なのに、その対応は不思議でしたが、ここで話を聞いて、色々と納得しました。

 現在、聖王国は内戦中です。

 王家を支持する人たちと、勇者を支持する人たちで、対立していました。

 ちなみに、勇者とは異世界人のことで、東西南北4人の勇者を中心として、対立しているそうです。

「機神の事は、ご存知ですか?」

「もちろんです。そろそろ、やって来る時期と言うのも、知っております」

「機神と戦うつもりですが、現状では色々と問題があるので、独立しようかと思いまして・・・」

 交渉しているのは、聖王国の宰相ラーッセルと言う人です。

 この場所には、国王と、宰相、軍部のトップと、北の勇者がいます。

 ちなみに、北の勇者は女の子で子供でした。ただし、仮面をつけているので、顔は見えません。それでも、不思議と女の子と理解できるのが不思議です。

「今のままで戦えるなら、国を作る必要は無いのでは?」

「私達の保有する戦力は、正直過剰気味です。新しい混乱の原因になります」

 機神と戦う前に、私達を取り込むために別の争いが産まれるでしょう。出来れば、それは避けたいです。攻撃された場合、私は容赦しません。

「それで、わが国に何を求める?」

「同盟国として、認めて欲しいです」

「見返りは?」

「この子ではいけませんか?」

 後ろに控えさせていた、シーリアを見てみる。

「我が娘か、生きていたのだな」

「はい」

 シーリアは、娘と言っても、王位継承権も無く地位も低い。一部の貴族に騙され、歪んだ思想を植えつけられていたので、国王は死んだと聞かされたときに、何も感じなかった。

「これが、見返りとして、意味があるか?」

「この子は、一応王家の血筋ですよね?」

「そうだ」

「なら、私が保護して、一族に迎えましょう。私も、同じ家族がいる国と、事を構えるつもりはありません。家族が窮地なら、救援を出しても良いです」

「なるほど・・・」

 使えないと思った人材が、ここで役に立つなら、有効に使うべきだろう。国王は、そう考える事にしたみたいです。

 血縁による同盟は、昔からよくあることです。

「あの、私の扱い、これって、艦長のお嫁さんになると言う事ですか?」

「戦略結婚と言う奴ですよ」

「その、私まだ子供だから、速いのじゃ・・・」

「籍を入れるだけですよ。手は出す予定は無いから、安心してください」

「むぅ」

 それを聞いて、膨れるシーリア。ハムスターみたいに膨れる姿はかわいいものです。

 その後、何か色々と想像しているのか、1人百面相をしています。

「窮地になったら、助けると言うなら、今のこの国の状況を変える事は出来るのか?」

「手伝いはします。私達、メトロ・ギアを、国として認めてくれますか?」

「聖王国の国王として、認めよう」

「ありがとうございます」


 その後、色々と細かい事を打ち合わせました。

 領土に関しては、私達が開発した場所と言う事で、認められました。

 聖王国、銀河帝国、冒険ギルドに認められた事で、正式に国として樹立です。

 実際問題、独立宣言するだけなら、誰でも可能です。

 それを認めさせ、守り抜く事が出来なければ意味がありません。

 負ければ、終わりです。

 国として認められても、戦争に負ければ消滅します。不利になれば、見捨てられます。

 血縁関係で同盟を結んでも、同じ事がいえます。道を間違えば、親兄弟で殺しあった時代も存在します。

 建前は必要ですが、それだけではいけません。


 同盟を結んだ以上、この国の問題を解決する必要があります。

 国王達は、会見後会議のため別の部屋へと行きました。

 この場所には、茹蛸になっているシーリアと、北の勇者しかいません。

「良いのですか?」

「何が?」

「そのこ、真っ赤になって、もじもじしていて、ちょっと引きます」

「この子は、色々と複雑な事情があったからね。人並みの思考に強制したけど、色々と間違えたかもしれません」

 貴族主義者みたいだったので、色々と平民感覚を学ばせ、色々と娯楽を与えた結果、シーリアは普通の女の子になっていました。少女マンガが好きで、それにかなり影響されたので、自分が結婚するという現実に、色々とショックを受けているみたいです。

 この子を、利用すると言うのは正直、心が痛み・・・ませんね?

 私の良心は、何処かにいってしまったみたいです。ロリコンではないと、断言できない状況になっていますが、十色や三姉妹の手前、この子に手を出すつもりはありません。

「私の話を、聞いてくれますか?」

 そう言いながら、北の勇者は仮面を外します。

「なっ!」

 その顔を見て、私は驚きました。

「他愛も無いです・・・」

 北の勇者は、そう呟きます。

「ここまでが、あの国王のシナリオですか?」

「え?」

 私の問いに、北の勇者が驚きの声を上げます。

「一応、私は強化人間とでも言おうかな?人のカテゴリーから外れているので、精神系の攻撃は通用しませんよ」

「っく!」

 仮面を外した北の勇者は、十色と瓜二つでした。最初に出会った時の十色です。

 宇宙は広く、可能性としては同じように進化した同一の時代の別の星があっても不思議ではありません。

 なら、同じような能力を持った子がいても不思議ではないです。もっとも、能力は同じでも、中身は違うのでしょう。

 十色は、自分の魅力の多さに嫌気がさしていました。この北の勇者は、それを利用しています。

「この国は、貴方が支配しているのですか?」

「違う・・・」

「貴方の目的は?」

「元の世界に返りたい。ここは、嫌」

 自分の能力が通じないと知った時、彼女はこちらに降伏しました。

 私を洗脳しようとしたのは、もとの世界への手がかりを得るためとの事です。

 嘘かもしれませんが、話を聞く事にしました。


 その結果、色々と判明しました。

 彼女達は、集団でこの世界にやって来た。

 混乱して、仲間同士で殺し合いにまで発展した。

 ギルドに保護されたり、国に保護されたりと、バラバラになった。

 聖王国に保護されてからは、中の良い友達と一緒だった。

 預言者と呼ばれた友達が、色々と手を尽くし、今の状態を作り上げた。

 グループごとにまとめて、バランスを取る事で、崩壊を防いでいた。

 元の世界への手がかりを、ずっと探していた。

 北の勇者と祭り上げられ、カリスマで人をまとめ、預言者の指示で過ごしていた。

 この世界は、色々と刺激的だけど、やっぱりもとの世界に戻りたかった。

 その預言者が、先日死んだ。

 原因は、自殺。


 遺言は、知ってはいけない事を、知ってしまった。十色、ごめんなさい。


 北の勇者の名前は、一色十色。名前まで同じだった。確認すると、一緒に異世界に来た人で、私達と同じ名前の人物はいなかった。

「名前が一緒だと、ややっこしいですね」

「パラレルワールドですか?なら、姿も同じでは?」

 話をしている間に、この十色とはだいぶ打ち解けました。

「私達の仲間の十色は、今は猫人ですからね」

 彼女に説明すると、うらやましがられました。こっちの十色も、魅了の能力で苦労しているみたいです。

「この辺は、みんなで相談しましょう」

 勝手に、色々と決めてしまうと、後で大変です。ちなみに、シーリアとの政略結婚は、相談済で了承済です。こんな事を、勝手に決めたら、恐ろしい事です。

 しかし、その預言者ということが気になります。既に遺体は荼毘にされ、埋葬も終っているそうです。

 大石君がいれば、記憶を辿る事も可能だったでしょう。

 いない人に、頼る事は出来ません。

 少しでも、手がかりが得れればいいのですが、試してみましょう。

「私の能力を、試してもいいですか?」

 彼女の許可を得て、私は彼女を解析します。なんとなく、予感はありました。

 預言者は、彼女と同じで元の世界に返りたいと言っていたそうです。

 それを頼りに、彼女の事を調べます。

 そして、予想通りだったと、残念ながら知ってしまうのでした。


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