強制と命令と説得とお願い
「で、何を撮影するんですか?」
「福田くんの生活?」
「絶対にイヤです。お帰りください」
私生活を丸々撮影されるってイヤに決まってるだろ!
「まぁ、そこは反対されると思ってたよ」
「思ってたなら言わないでください」
「ワンチャンあるかも?と思ってね」
「ある訳無いでしょ!」
「だろうねぇ。で、代案なんだけど、まずは従魔を紹介するので行こうかなと」
「従魔の紹介ですか?」
「そう。良くも悪くも福田くんの事はある程度知られてるからね。
その使徒の従魔ってのは興味をそそられると思うんだ」
「ストップ。チョット待って。
良くも悪くも知られてるって何? 俺、有名なの?
って言うか、悪評があるの? 何で?」
俺が神様達の間で有名? 山程居る使徒の一人だろ?
有名になる理由が判らない。しかも悪評もあるらしいし。
「使徒の中でも、福田くん程、加護を持ってるのなんかいないよ。
まだまだ増えそうだしね」
「笑いながら言う事じゃないんですけど。個人的にはもう結構なんですけど」
「無理無理。興味持たれてるから。
で、悪評だったね。一部の神からは怖がられてるんだよ」
「えっ?! 何で?!」
「会うにはこの世界に来なきゃいけない。
でもこの世界に来てしまうと、福田くんの『混沌』が通用する。そうなると神だからと偉そうに出来ない。
だから『井の中の蛙』だとか『神に暴力を振るう愚か者』とか言われてるね」
「いや、この世界から許可無く出れないし、出たくても出る方法知らないし。井の中の蛙って言われても……。
後、神に暴力なんか振るった事、無いですけど?」
「ミズウミ君にしてたでしょ?」
あ~、閻魔様の子供ね。
でもあれは教育だよ? しつけですよ。
「まぁ、本人はそれによって矯正されたと言ってるから問題無いんだけど。
揚げ足を取りたい輩は、そういう話の一部だけを抜粋するからね。
気にしない、気にしない」
「いや、まぁ、知りたくても知れない世界の話だから良いんですけどね……」
地球で考えるなら、俺の評判がドイツ辺りで流れているようなものだ。
日本人の一般人なら、それを知る事はほぼ無いだろう。
ただ、知ってしまうと気にはなるけども。
「そういうのも含めて、従魔紹介だよ。
特に福田くんは強制的に従わせたりしてないでしょ?」
「……そうですね。はい、そうです。強制してません。ええ、してません」
「あれっ?! 動揺してる?!」
「してません。動揺なんか、してません」
「あ~、命令してるから、とか気にしてる? それくらいは普通だからね?」
「……どういう事ですか?」
「強制してるってのはね、苦痛を与える首輪を装着させてるとか、即死するように脳に何かを埋め込んでるとか。
そういうのだよ。そんな事はしてないでしょ?」
「なにそれ、怖い」
「福田くんの場合、運が作用してるってのもあるんだろうけど。
従魔だからって唯々諾々と従う訳じゃないんだ。なんせ自我があるからね。イヤな事はしたくないさ」
相手の意見を無視して苦痛や即死で脅して強制的に従わせてるのか。
俺は……どうだろ?
一応最初は頼むなぁ。で断られたら説得する。納得してもらえたら行動、かな?
途中で脅迫のような事を言う場合もあるけど。いや、違う、お願いしてるの間違いです。ええ、そうです。
でもさすがに、毒状態にさせて解除して欲しければ従え、みたいな事はしないぞ。
前に毒を使った時は、戦闘だったからね。
えっ? それがトラウマである意味強制になってる? ははは、気の所為だよ。
「動物物は評判が良いからね。好感度もあがると思うんだ」
「判りました。それで行きましょうか」
「じゃあまずは四天王から撮影しましょう!」
「うおっ! ビックリした! 何で参加してんの、ナグラさん?」
「ナグラさんには第三者的な立場で見てもらう為にお願いしたんだよ」
「任せてください! 入院中にネットでよく動画は見てましたから!」
心強い、のか?
どっちかと言えば不安でしかないんだけども……。
こうして俺達3人は、四天王の元へと向かった。




