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ルシファーさんの頼み事

ある日、唐突にルシファーさんがやってきた。日本製のビデオカメラを持って。


「福田くん、撮影するよ!」

「え~と、ルシファーさん。まず落ち着こうか。

 さっぱり理解出来ないんで、最初から説明してください。

 まさか『新しいビデオカメラ買ったから撮影したい!』なんてしょうもない理由じゃないでしょうね?

 そうだったら怒りますよ」


まぁ俺が怒ったからって、ルシファーさんは痛くも痒くもないのだろうが。


「違うよ~。ちゃんと理由があります!」

「うん、それを最初から言って欲しかった。で、理由って?」

「まず、神の世界の事を説明します」

「え? 何?」

「それ言わないと理解してもらえないから」

「あっ、そうなの? じゃあお願いします」


ビデオの話が神の世界の話になった。

意味不明だが、聞かないと理解出来ないそうだから、しょうがなく聞く事にしよう。

実は今、業務中なんだけどな……。

すみませんね、ヌマタさんにネモトさん。


「今の神の世界ではね、福田くんなら判ると思うけどVRがもっと発展したのが主流になってます。

 具体的に言うなら、ラノベにあるVRMMORPG物みたいな感じ」

「本当に俺にしか判らないネタですね!」


仮想現実の世界にダイブするようなやつって事ね。


「でもね、それが生まれて100年以上。

 結局皆飽きちゃったんだよね」

「それに変わる新技術は生まれてないんですか?」

「いや、あるんだけど……聞きたい?」

「まぁ、教えてもらえるなら」

「仮想で転生して、新たな人生を実際に体験する、っていうの」

「…………えええっ?! じゃ、じゃあ、この世界にも来てるんですか?!」

「いやいや、行く世界はゼロから作ってるよ。

 ちなみにその世界は、石器時代バージョンと中世バージョン、地球で言う20世紀バージョンがあります」

「作った?! しかも3つも?! そ、その世界の人達は全員が神?」

「いやいや、ちゃんとその世界で育った人達ばかりだよ。1%くらいが体験中の人かな?」


うわ~、娯楽の為に天地創造してるよ……。

そんなの倫理的に許されるのかなぁ。許されてるんだろうなぁ。

その世界には生まれたくないな。


「ま、それは置いといてだね。

 結局、それにも飽きるんだよね。そこでビデオカメラさ!」

「え~と、全く理解が追いつきません」

「原点回帰! これだよ! 今、2Dが流行ってるんだ!」


なるほど。

つまりP○4やXB○XONEの時代に、ファミコンをプレイしたらハマった。こんな感じか?


「で? だから撮りに来たって訳ですか? お帰りください」

「違うって! 遊びじゃないんだって!」

「じゃあなんですか?」

「CMだよ!」

「CM?」

「そう。この星。スフィアを紹介する動画を撮影に来たんだ」

「……なんでCMするんですか?」

「神だってね、遊びで世界を作ってるんじゃないんだよ。

 良い物を作ってますって披露する必要もあるんだよ。

 誰にも見向きもされない世界、または荒廃した世界、こんなのは削除対象になるよ」

「さ、撮影しましょうか」


なんと恐ろしい話だ!

興味を持ってもらえないと、世界は滅びる?!

シャレにならん!!


「しかし、何で俺の所に来たんです? あちこちを勝手に撮影すれば良いじゃないですか?」

「いやいやいやいや。福田くん、使徒だよね?

 この世界の管理者でもあるんだよ? 許可を取るのは当然でしょ。

 それに適当に撮影して、つまらない物が出来ても納得出来る?」


むむ、確かに。

最悪の例えだが、各家のトイレを撮影して編集したものを流されてつまらないって言われても困る。

農家が黙々と農作業してる動画でも視聴率?は上がらないだろう。

後、この世界の倫理的な部分に抵触するようなのも困る。

ビデオカメラを知らない世界だから撮影しててもバレないからと、盗撮するのもNGだ。


「理解出来ました。じゃあ許可しますけど、この世界の倫理には準拠してくださいね?」

「当然だよ」

「で、紹介ビデオらしいんですけど、何を撮影します?

 絶景ですか? それとも日々の人々の生活風景? 各国家の運営?」

「はははは、そんなのは意味無いよ。だいたいどこの世界も似たような事になってるからね」

「あっ、そうなんですか。じゃあ、何を?」

「使徒さ」

「…………はい?」

「その世界の使徒を撮影して紹介するんだよ。それが一番その世界を反映してるからね」

「…………って事は」

「そう、福田くんを撮影しに来たのさ!」


俺かよっ!

今日からYoutu○erってか?!

後2話続きます。

次話は1週間以内に投稿……出来たら良いなぁ。

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