今日のアサイさん
どうも、こんにちは。アサイです。
今日は、仕事中の私の密かな楽しみをお教えしますね。
現在、三途の川での日本人受付窓口は3つが稼働しています。
その内の1つが私の担当。何故か夜間担当ですが。
まぁ、そこはイイクラに直談判しているので、昼間担当に戻れるでしょう。
窓口に来る人は、日本での寿命を終えた方。
当然ながら年寄りが多いです。
でもどなたもシャンとしておられます。
魂には年齢は関係ないですからね。
死亡時の状態で来られても困りますし。
さてさて、楽しみですけども。
たま~に、15~25歳くらいで寿命を終えた方が来られるんですよ。
その中にですね、三途の川で興奮される方が少数いらっしゃるんです!
そうです。ラノベの読者なんですよ。
もう本当に大興奮です。警備の鬼がたまにやってくるくらい。
そういう方は、私の所に来るようになっています。
これは私の頼みでそうなりました。
おやっ? そのせいで夜間に? いやいや、偶然です。
あっ、ほら、今日も1人居ますね。
早速呼びましょうか。
「ようこそ、三途の川へ!」
「やっぱり死んだら神様関連の所に来るんだ!」
あ~、話を聞いてくれない……。
少しは落ち着いて。
「この度担当になりました、アサイと申します。
短い時間ですが、よろしくお願いしますね~」
「はい! 俺はカツジです!」
「はい、カツジさんですね。
では早速ですが、このタブレットに手のひらを乗せてください」
「タブレット! これで良いですか?!」
「はい、結構です。離さないで下さいね」
出ました出ました。じゃあ、個人情報を見ましょうか。
ほうほう、やはり読書が趣味と。
読書と言っても読むのは、ラノベとマンガですか。
他は……やはりアニメ鑑賞もありますね。
インターネットもそういう小説サイトばかりですね。
うんうん、予想通りです。
「カツジさんは異世界転生に興味が?」
「やっぱり心が読めるんですね!!」
「いえ、タブレットに表示されるんですよ。心の声なんか聞こえる訳無いじゃないですか。
もし聞こえるなら、うるさくて困ります」
「えっ?! そうなんですか?!」
「だってこの場に何人受付待ちしてます? 全員の声が聞こえる事になりますよ?」
「意識を向けたらその人の声だけ聞こえるとか……」
「それにしたって、無理です。
それに、そんなに万能ならこうやって会う必要もありませんよ。
これから貴方が言う事も分かるでしょうし、貴方に洗脳・誘導をかけて、こちらの思い通りに出来ます」
ふふふっ。少しガッカリしましたね。
そうです。最近の私の楽しみ。
それは『異世界転生を期待して来た若者を失意のどん底に落とす!』というもの!
これがクセになるんですよね~。
「さて、どんな世界に行きたいですか?」
「え?! あっ、そうですね!!
やっぱり剣と魔法! 世界観は中世ヨーロッパ風で!」
「中世ヨーロッパ風ですと、宗教が強いですよ? 大丈夫ですか?」
「大丈夫ですよ! 不条理な事をやられたらやり返しますって!」
いやいや、国教だっての。いや世界教か?
日本人から見てどんなに不条理でも、それが当然の世界。
テロ国家の国に旅行に行って、持ち物没収されたからって個人で国に喧嘩売るのと同じ。
チートがあってもダメでしょ。そんなんで脅せば世界中から指名手配になるわ。
「剣と魔法、どちらを習得したいですか?」
「そりゃやっぱり魔法でしょ! 剣は自分で鍛えます!」
「魔法ですね」
「はい! あっ、勿論生活魔法全般でお願いしますね!」
はっはっは。魔法の使える世界のほとんどが、生活魔法主体なんですけどね。
それの延長線上に攻撃魔法があるだけで。
多分、生活魔法しか使えないとバカにされる、みたいな話を読んだのでしょう。
魔法が使える世界で、生活に魔法を使わない理由って何ですか? バカしか居ないんですか?
生活魔法が使えない魔法使いの方がバカにされますよ。と言うか使えなかったら魔法全て使えませんし。
しかし全般とは?
あぁ、個人の資質で使える魔法に区分があると。水と火属性だけ、みたいな。
そういう話は多いですもんね。
「ポンプとか作って儲けたいですね~」
一人で矛盾した事言ってますね。
さっき生活魔法使うって言ってたじゃないですか。
魔法で水が作り出せるのに、井戸?
水道捻れば水が出る世界で井戸水を汲みたい?
しかもその為の設備で儲ける?
一部の好事家には売れるかもしれませんが。
ついでに言えば、魔法を入れておける魔法道具のような物を作って自動で汲む方が良いと思います。
ま、多くの世界で既に開発されてますけど。
「お金儲けて、魔法も使えて……後はモテたいです! あっ、勝手にモテモテになるか!」
その程度の人はゴロゴロ居ますよ。
それでモテるなら苦労しませんよ。
モテるのは個人の資質です。後、容姿。
私なんかどちらもクリアしているのにモテません! 世の中そんなに甘くないんです!
ん? どうやらハーレムを作りたいようですね……。
行く世界が一夫多妻制なのを希望っと。
ちなみに貴方に独占欲があるように、女性にもありますからね?
今までそんなにモテてない人が、多数の女性の独占欲を上手く捌けるとは思えませんけど。
相手の女性の一人に後ろから刺される、なんて事でここに戻って来ないようにね。
「あっ、そうそう。気楽な貴族の次男か三男に生まれたいです」
貴族の次男か三男が気楽?
中世ヨーロッパだと、次男は長男に何かがあった時用の予備ですよ?
教育されますし、長男に何も無ければ一生“飼い殺し”状態ですけど。
三男以降は予備にもなれないので、兵士に放り込まれるか、少ない金を渡されて放逐。
長男が死ぬのを喜ぶ者も居る世界。気楽?
「さて、貴方の要望は聞きましたので、抽選しましょうか」
「抽選? ああ、貰えるスキルとかチートを決めるんですね」
「……貴方の持っているポイントは2ポイントです。2回引いて下さい」
「はい!」
結果は、どちらもハズレ。
これは見せない。見せない方が面白いから。
「はい。決定しました!」
「どうですか?!」
「貴方の希望する世界に行けそうですね」
「やった! マジですか! ヤバいぜ!」
「じゃあ案内の者を呼びますね~」
ここで警備の鬼を呼びます。
絶対にこの後、暴れるから。
「その世界で、頑張って生きてくださいね~」
「ありがとうございます!」
「まぁ、日本からここまでの意識・知識は全部消えますけど」
「……へ?」
「当たり前じゃないですか。日本で生活していた時、転生したー!って思いましたか?
魂を調べれば、貴方は過去に362回ほど転生していますよ?」
「…………え?!」
「ちなみに貴方の前世はイカみたいな姿の生物でした。ラノベで言う所の亜人でしょうか?
モテモテでしたよ。良かったですね」
予想通り、行かないと暴れだしましたが、鬼に連れて行かれました。
ふふ、あのガッカリした顔! 爆笑モノでした!
後ろで見学してた福田
「外道が居る! 閻魔様~~!!」




