孤児院をプロデュース
遅くなり申し訳ございません。
「基本的に孤児院は、国営か教会運営のどちらかですよね?」
「国民救済の意味だからね」
「王様が答えるんかい。まぁいいけど。でも別に民営があっても良いでしょ?」
「良いが、利益が無ければ誰もやらないだろ?」
「冒険者の場合は利益がありますよ。
万が一があった場合、家族が助かる冒険者組合と路頭に迷う冒険者組合、どちらに所属したいですか?」
「そりゃ助かる方だろうが。だが、そんな考えの者は冒険者にはならないと思うぞ」
「まぁ、その日暮らしのような職種ですからねぇ。でも家族が居る人だって居るでしょ?」
「そりゃそうだ」
「そういう人は困った時はどうしてます?」
「ま、子供は教会の孤児院に入れるだろうな。親は働きに出る」
「そう言っても、母親なんてそんなに簡単に働く所なんて見つからないでしょ?」
「それこそ冒険者になるか、娼館に行くか……」
「娼館も誰でもOKじゃないですよね?」
「まぁ、そりゃな」
ラノベじゃないんだから、主人公が助ける人は美人ばかりじゃないのだ。
娼館も年齢いった人を雇用しないだろう。
まぁ、そういうフェチな人も居るだろうが、少数だろうし。
「おっ、そうだ。教会が受け入れるってのもあるぞ」
「ああ、出家して修道士になる、みたいな?」
「そうだ」
それも悪くないだろうけどさ、結局同じだと思うんだよね。
「でも、それって教会の負担でしょ。救済を謳ってるから受け入れない訳にもいかないだろうし」
「確かに」
「そうするとさ、孤児は増えるし修道士も増える。お金が必要になってくる。
……そういえば、教会の収入源って何?」
「祝福や葬儀のお布施、墓の管理代、寄付金、これくらいか?」
つまり、子供が生まれたとか結婚式とかのお祝い料金、日本の寺のような墓管理の料金が主な収入源ね。後寄付金。
「安定した収入は墓の管理代だけ。なのに負担が増えればどうなります?」
「どう、とは?」
「出費を抑える為に食費を減らしたり、建物の修理をしなくなったり、最悪受け入れなくなる可能性も」
「むむむ……」
「もっと悪い方向に進めば、法スレスレの金儲けに走ったりするかも。孤児の人身売買で収入を増やそうとしたり……」
「……」
あっ、沈黙した。どうやら心当たりがあるらしい。
まぁ、この世界はダヒュテムというクソ神を祀ってた教会があるからね。
そことの問題もあったと思う。
「子供や母親を守ろうという教会の考えは良い事でしょうけど、収入が一定なら受け入れる人数には限りがあります。
で、ここまで教会の事を言いましたけど、国営はどうです?」
「国営は、主に兵士の妻子が多い。つまり国に仕えてる者の家族限定だな」
国営だから、利用出来る人は国に仕えている人限定か。
「各地にあります?」
「いや、王都にしかない。地方の者は年に一度、連れてくる事になっている」
「住んでた家とかは?」
「基本的に国に仕えている者には住まいが貸し与えられている」
へ~、寮とか宿舎があるんだ。
基本的にっていうのは? ……ああ、貴族か。そういう人達は実家から通うよな。
「過去とは生活も変わったでしょ? 来る人は減ったんじゃないですか?」
「……そうだな。確かに利用者は減ったと思う」
サイラム国もダヒュテムも、間接的に俺が潰した感じになってるからね。
少なくとも戦争は無くなったはずだ。
「じゃあ、冒険者の妻子を受け入れますか?」
「……難しいな」
「理由は?」
「国の命令で危険な地に行くから、残る妻子の面倒は見るというのが決まりだ。
自己責任でダンジョンへ行き、死んだ者の妻子を受け入れれば必ず問題になる」
特に貴族が煩そうだよね~。
庶民と同じ所に入れるとは何事だ!とか言いそう。
イジメとかも発生するだろうな。
「ここまで言えば、冒険者内で孤児院経営をした方が良い理由が分かりますよね」
「「「確かに」」」
全員の賛同を得られた。
納得してもらえたようだ。
初期費用は必要(孤児院建設とか)だけど。
だが、なぜかそこは国と俺で費用を持つ事になった……。
「何で俺まで?」
「言い出したのは福田くんだろ?」
「そうだけど! 一般人ですけど!」
「使徒様が始めた事と知れれば、誰も文句は言わない。それどころか、友好的に思われるだろう。
入居する妻子を蔑む者もいないだろう。居ても排除されるだろう。
加入しなければならない冒険者からも苦情は出ないだろう」
「そこはなぜ?」
「使徒様のする事に苦情言ってみろ。最悪、儲け先のダンジョンが封鎖される可能性があるだろ。
そんな冒険者は同業者から嫌われ、ヒドければ路頭に迷う事になるだろうな」
……確かにダンジョンを作るとか消すとか、進言は出来ると思う。実際に作ったし。
だからってやらないよ?!
ラノベの孤児院の扱いが気になっただけなのに、大事になってしまった……。
費用の半分で、どれくらいなんだろう……。




