団長の相談(後)
「結局の所、自身はどうしたいんですか?
やっぱり前の奥さんに操を立てて、婚約破棄?ですか?」
「しかし、弟の手前……どうしたものかと…………」
「前に聞いた事あるんですけど、2択の時に人に相談するって、実は決めてる事が多いそうです。
AとB、どっちにしようかと言っているけど、実はAを選んでる、みたいな。
で、相談するのは、無意識にそれを肯定してもらいたいそうです。
だからAと言ってあげればすぐに納得するけど、Bと言われれば『そうかな?』と聞き返すんだとか」
「そ、そうなのか?」
「らしいですよ。だから自身がどうしたいかは、既に決めているはずです。
それをしがらみとか関係無く言って下さい。それからどうするかを考えましょうよ」
「う、うむ……」
そう言うとムカイさんは考え出した。
自分と向き合っているのだろう。
ちなみにこの考え。女性には当てはまらない事が多いので注意が必要。
「Aの服とBの服、どっちが似合うと思う」って聞かれた場合、非常に危険である。
この法則だと、どちらかが当たりなのだが、実は隠されたCという選択肢がある場合がある。
これを見抜けずにどちらかを選ぶとOUT。
本当に2択の場合でもハズレを選んでもOUT。
だからといって「店員さんに選んでもらったら?」などと言うのは大OUT!
見抜く洞察力を身につける事が大切です。
ちなみに選んだのを購入し着てくれる可能性もあるけど、貴方とのデートの時だけかもしれませんよ。
自宅では「こんなダサいの他の時には着られないわ~」とグチってるかも。
いや、本当に気に入っている事もありますけどね?
信じるも信じないも貴方次第……。
おっと、変な事を考えていたら結論が出たようだ。
「私も貴族だ。弟の為にも婚約しようと思う」
「おおっ! そうですか」
「でもどんな人か知らないんでしょう? 大丈夫なの?」
「それも考えた。考えた上での結論だよ」
「あっ、良い方法がありますよ」
「何かね、福田君」
「神様に聞いてみたらどうでしょう?」
「…………は? な、何を言っているんだ?!」
「いや、神様なら全人類の性格が分かると思うんですよ。
それを聞いてみて、判断材料にしたら良いんじゃないですかね?
最悪な相手なら止めれば良い。なんせ神様の情報ですからね、ウソや間違いがありませんし」
「そ、それはそうだろうが……そんな事を神に頼んで良いものか?」
「大丈夫です! 貸しが沢山あるので!」
女性陣も頷いている。どうやら俺の案に賛成のようだ。
これほど確実な情報は無いでしょ。
ムカイさんは……悩んでるな。
いいや、今の内に呼んじゃえ。来てしまったら諦めるだろ。
「って、事でイイクラさんを呼んでみました~」
「緊急の案件と言うから来たのですけど……」
「緊急ですよ。一人の人生がかかってますから」
「いえ、そういう問題では無いと思いますが」
「今後のこの世界での活動に支障が出るかもしれない案件です」
「本当ですか~?」
「ええ。それに沢山貸しがあるじゃないですか。この辺で1つくらい返してくださいよ」
「借り? ありましたっけ?」
「色々な神様に迷惑をかけられてますけど」
「それは各々に言って下さい。もしくは上司の閻魔様に。私ではどうにもならないです」
「じゃあアサイさんに迷惑を……」
「それは私も同じです。何度尻拭いをした事か!」
「え~?! 協力してくださいよ~」
「…………はぁ。分かりましたよ。では代わりに私のお願いも聞いてくださいね」
「えっ?! な、内容は?!」
「そちらの件が終わるまで秘密です」
「ズルい!」
「では今回の件は無かった事にします?」
それを言われるとなぁ……。
さすがアサイさんの上司! 一筋縄ではいかないな。
「分かりましたよ! じゃあそれで!」
「了解です。では調べましょうか」
そう言うとイイクラさんはスマホを取り出して操作し始めた。
えっと、名前とか何も言ってないけど大丈夫なのかな?
「ああ、これですね。
相手の女性の情報でしたね? 詳しくは話せませんが、大丈夫ですね」
「大丈夫とは?」
「問題無いという事です」
「え~、さすがにそれでは納得できませんよ。もう少し情報を下さいよ!」
「では少しだけ。
容姿は人によって好みが違うので何とも言えませんが、この世界の、すれ違った男性の10人中5人は振り返るでしょう」
「おおっ! 他には?」
「ムカイさんでしたね? 貴方とは面識がありますね」
「マジで?! ムカイさん、知ってました?」
「い、いや……初耳だ」
「3年前にサイラス国近くで小競り合いを収めていた時に、助けた人達が居たでしょう?
その時に助けられた人の中に居ました」
「あの時?」
「それ以来、貴方を好きになってしまったようですね」
おおっと、まさかの展開!
と言うか、王道じゃね? 助けられた女性が助けた男性を好きになるってのは。
「どうやら政略結婚とか身分目当てじゃないようですね。安心出来ましたか?」
「う、うむ。会ってみようと思う」
「良かったです」
これで解決かな。
結婚して幸せな家庭を作ってもらいたい。
「終わったって顔をしないで下さい。まだ私の件がありますよ?」
「えっ?! イイクラさん、今ですか?!」
「はい。今です。面倒な案件を思い出したので」
マジかよっ!
夏は暑くて筆が進みません…。
外仕事にはツラい季節になりました。




