酒
ヒヨはまた宰相の元へ戻っていった。
第2ラウンド開始のようだ。
そうなると俺と王様はヒマになる訳で。
「うむ。使徒様。お茶でもどうですかな?」
「おっと、使徒様は無し。俺は福田って言うんだ」
「そうか。では福田殿」
「ありがとう。でもコッチの方はどうだい?」
俺はこっそり買っていた、地球産の酒を出す。
あっちの世界で飲んでると、神様の誰かが嗅ぎつけてきて全部飲んでしまうんだよなぁ。
多分、加護を通して覗いてるに違いない。
今回は異世界なので、バレないだろと持って来たのだ。
「それは?」
「俺の世界の酒だよ」
「ほほう、神の世界の酒か。頂こう!」
「あっ、神の世界じゃなくて、俺が住んでる世界ね」
「ん? 違うのか? むむっ?! これは美味いな!」
「美味いだろ! えっと、俺は違う世界の住人で、何故か神の眷属になったんだ。
で、何かあるとこうやって使われるんだよ……」
「福田殿も苦労してるのだな……」
「おおっ! 判ってくれるか! よし! 今日は飲もう! ジャンジャン酒を出すぞ!」
「飲むか! 私も王をしていると、気兼ねなく飲む機会なんか無いからな……」
「飲もう飲もう!」
「そうだな! 飲もう!!」
王様と意気投合してしまった。
じゃあ交渉はヒヨと宰相さんにお任せで。
俺達は、王様と飲み会してきます。
「よし! まずはツマミが居るな! 調理場に突入するか!」
「良いねぇ! 行こう行こう!」
……結果、城に泊まってしまった。
う~ん、途中から記憶がない。
あちこちに迷惑をかけてないだろうか?
ん? このマクラ温かいな……ってヒヨ?! 俺はヒヨをマクラにしてたのか?
「ヒドいですにゃ。頑張って交渉してたのに楽しく飲み会してるなんて、にゃ」
「ゴメンゴメン」
「しかも報告に帰ってきたら、無理やり飲まされて……最後にはマクラ扱い、にゃ」
「ゴメンって。今度極上の猫缶を買ってあげるから」
「猫じゃないんですけどにゃ。でもその約束、忘れないで下さいね!!」
語尾の「にゃ」が無くなるくらい喜んでるじゃないか。
ふっ、所詮、ヒョウも猫なのだよ。
どうやら交渉は上手く行ったらしい。
なので状況を進めても良いそうだ。
じゃ、早速異世界人を見つけに行きますか。
タブレットを出してマップを見る。
おっ! 二手に別れてるけど、集まってるな。丁度良い。
これも運のなせる技かね。とりあえず多い方に行くか。
いや、そちらはヒヨに任せるか。多人数への説明は面倒と思った訳じゃ無いけど。
タローを護衛として行かせよう。
そうそう、タローだけど、城の庭でくつろいでた。
ほったらかしだったので、酒を渡したらメチャクチャ喜んでた。
龍とかドラゴンってやっぱ酒が好きなのかな?
須佐之男命に退治されるぞ。
あれは大蛇か。まぁ似たような物だろ。
さて、俺は二人で居る方に行くか。
ここからそんなに離れた所にいないし、ガーに乗っていけば良いだろ。
到着した場所は、崖の壁。
マップではこの中を示してるけど、洞窟も無いんだが。
ま、まさか、生き埋め?! いや死んでたら表示されないはず。
あっ、もしかして『隠蔽』みたいな魔法とかで隠れてるのかも。
あ~、でも解除の仕方が判らない。
って事で壁もすり抜けられるチョロに行ってもらう事にした。
本当に生き埋めだったら、掘り出さないと行けないからね。




