真の知識チート
王様は援助を断った。
それよりもこちらが払わなくてはと言い出したので、それは他に使って下さいと。
今は王様の私室に移動して、打ち合わせだ。
と言っても友好的なのは王様だけで、他に居る宰相と将軍(?)は機嫌が悪い。
「この度は、どの様なご用件でこちらに?」
話すのも宰相。
将軍は何時でも斬りかかれるように腰を落としている。
すげー怖い。しかしどこから剣を用意したのだろうか?
こちらも防衛&交渉準備をしよう。
って事で、ガーとチョロとヒヨを呼び出す。
それを見た将軍は切り捨てようとしたけど、すぐガーに押さえつけられた。
「これらは私の従魔です。自身の身を守る為に出しました。
先に言えば良かったですね……すみません」
「……いえ。こちらも短気でした。お詫び申し上げます」
良かった。判ってもらえた。
ただ単に、敵わないと思っただけかもしれないけど。
「それでですね、話なんですけど、それはこちらの猫のヒヨがします」
「よろしくにゃ」
「……よ、よろしくおねがいします」
ヒヨと宰相との舌戦が始まった。
その間に、俺は王様とでも話そうか。
「王様、よろしいですか?」
「敬語はおやめ下さいますか?」
「では止めるので、そちらも好きに話して下さい」
「分かった。これで良いかな?」
「俺もこれで良いか?」
お互いに笑い合う。
「それで、今回は何しに?」
「今ヒヨが話してると思うけど、この国に神に連れてこられた人間が居るんだ」
「何っ?! 本当か?」
「ああ。しかも過酷な環境に落とされている」
「何故だ?!」
「その神の暇つぶしみたいな物だよ」
「……なんとひどい事だ」
「ああ。その神は捕まった。だからもう大丈夫なんだが」
「捕まった? 神にもそのような事があるのか?」
「神だって万能じゃないし、一杯居る。
人の世界と変わらないよ」
「…………そうなのか」
「で、だ。神の干渉は無くなったけど、こちらの世界で生きるには辛い。
そこで、王国で保護して貰えないかと。そういう提案をしに来たんだ」
「なるほど」
「あぁ、保護って言っても、匿うとかじゃないから。
身分を保証するとか、商売がしたいなら少しだけ資金援助してくれるとか。その程度で良いんだけど」
「だから援助とか先程言われたのか」
「そう。何も渡さずに『お金出してね』って言われても困るだろ?」
「そういう事か」
「そう。そこはヒヨが今話してると思うんだけど……白熱してるな」
「……そうだな。おい! どうなっている!」
王様は宰相を呼んで、経緯を聞いている。
俺もヒヨに聞いておこうか。
「どうなった?」
「今は資金援助の話にゃ。
日本円で500万までは譲渡、5000万までは無担保で無利子で貸付、そこまで決めたにゃ」
「優秀!」
「その代わり、こちらからは知識を渡す事になってるにゃ」
「ああ、いわゆる知識チートか」
「そうにゃ。と言ってもポンプとかじゃないにゃ」
「えっ? そうなの? じゃあ、何を?」
「小中高で習う事を教えるにゃ」
「学校で習った事? それで大丈夫か?」
「仕組みを理解出来ても、理屈が判らなければダメにゃ。
ポンプなら『ベルヌーイの定理』を知るべきにゃ。
会計なら『複式簿記』を教えた方が良いにゃ」
な~るほどね。
確かにそういうのは学校で習ったわ。
ほとんど覚えて無いけどな。
パスカルの原理とかもあったな。名前しか記憶に無いけど。
しかし、ヒヨは『ベルヌーイの定理』とか『複式簿記』とか、良く知ってたなぁ。
「でも、俺みたいに名前しか覚えてない可能性もあるぞ?」
「大丈夫にゃ。そういうのがあるって教えるだけでも良いにゃ」
「あ~、後は実験でもして実証すれば良いのか」
「そうにゃ。もし大学まで行ってたら、更に深い知識があるかもしれないにゃ。
最悪、ゲームの話でも良いにゃ」
「ゲームの話?」
「例えば三国志をプレイしてたら、孔明のした作戦とか知ってると思うにゃ」
「それを話すのか」
「戦術はいくらあっても良いにゃ。
こういうのが本当の知識チートにゃ」
そうですか。
勉強になります。




