光の筋
光の筋は人を傷つける事無く、兵士の武器や防具だけを破壊した。
屋上限定では無かったので、城に居る全ての人に当たったんだと思う。
ドン引きです。
タローと一緒にドン引きです。
高性能だけどさ!
そこまでしなくても良くない?!
兵士の人達もオロオロしてるので、落ち着かせる意味でも何か言わないと。
「ど、どうだ! 強制的に武装解除してもらったぞ!」
「煽ってるだけに聞こえますけど?」
「タロー、うるさい。黙ってて」
確かに兵士達は、今度は素手で攻撃しようとしてるけど。
まぁ、タローの姿にビビってるから来る事は無い。
それでも殴る気なのか。根性すげーな。
俺なら撤退の2文字だ。
その様を見てたら、突然兵士が2つに割れた。
と言っても兵士が右半分と左半分に、とか、上半身と下半身に割れた訳じゃないよ。
人垣がサッと分かれたんだ。
モーセの十戒で海が割れたみたい。
そう言えば、あれってそのエピソードしか知らないわ。
何で海を割ったんだろうか?
おっと、そんな事を考えてたら、人垣が割れた所から人が歩いてきた。
冠被ってるから、もしかしなくても王様か?
「神の使いである、使徒様。どうか無礼をお許し下さい。
私の命を差し出しますので、他の者は許して頂けないでしょうか?」
「いやいや、神の使いですから! それじゃあ悪魔か破壊神みたいじゃないですか!」
「福田さん、破壊神は神じゃないですか?」
「細かい所をツッコむなよ!」
「お許し頂けますか?」
「許すも何も、いきなり来たのはコッチですから。
しかし、よくこの場に来ましたね。止められませんでしたか?」
「止められるどころか、宰相に推奨されましたよ」
は? 危険と思われる所に行けって?
その宰相、大丈夫?
「判っておられて、この時に来られたのですよね?
助かりました。感謝致します」
「え? うん……そうね。はは、良かった良かった」
「福田さん。判ってないでしょう?」
「シッ! 黙れ!」
何の事かさっぱり判らないが、タイミングが良かったみたいだ。
しかし事情が判らないのは困る。
どうにか教えてもらいたいが…………タローを利用するか。
「ここに居るドラゴンはタローというのですが、事情を知りません。
私が教えても良いのですが、それでは勉強にならないので、そちらから話してもらえますか。
私も確認の為に聞きたいですし。いかがでしょう」
「判りました。お話させていただきます」
「私が頭が悪いみたいに聞こえるじゃないですか……」
タローの事は放っておいてだな。
聞いた話は簡単。
丁度謁見中だったらしい。
謁見してた者は実は暗殺者で、武器を隠し持ち王を殺そうとしていたそうな。
そこにドラゴン乱入。
騒ぎに応じて暗殺をしようとしてきたが、光の筋で武器が破壊された。
殺さずに捕まえる事が出来、背後関係も調べやすくなった。と。
うん。全くの偶然だね。
いや、多分だけど、俺の運が作動したか星の援助じゃないかな?
どっちにしろ、その事で好意を持ってくれたみたいなので、悪いけど利用させてもらおう。
「間に合って良かったです。
所で頼み事があって来たのですけど、良いですかね?」
「神の使いであられる貴方様の頼みですか?
私に出来る事であれば、何でも仰って下さい」
おおっ! 話が早い!
これで召喚された人達への援助が頼めるな。
ん? 援助? お金大丈夫か?
さっき城に居る人達全員の武器と防具を破壊しましたけど。
赤字にならないかな?
「え~と、その前に援助要ります?
ドラゴンの鱗とかでお金は足りますかね?」
「何を考えたか知りませんけど、私の鱗を剥ぐ話は止めて下さい!!」
「だって、人間の毛みたいにまた生えるでしょ?」
「ムダ毛みたいに言うのは止めて下さい!」
ダメか。じゃあ何が換金出来るだろうか?
そんなに物を持ってきて無いんだけどな。




