欲求
「では皆さん、アイデアを出してください」
「はい!」
「はい、ナグラさん」
「楽しいダンジョンが良いと思います!」
「例えば?」
「ゲームのようなダンジョンだと、楽しくない?」
「まぁ、そうかな? で、具体的には?」
「緑の四足歩行のモンスターが出て、近づくと爆発」
「アウト~! それ、アウト~!!」
「他には蜘蛛とかガイコツとかゾン……」
「はい! そこまで! それ以上は言わせません!」
まんまマイ○ラじゃないか!
あんなの実際にあったら攻略しようなんて考える訳無いだろ!
「では私が」
「はい、ネモト卿。どうぞ」
「人を惹きつけるには、やはり人の欲望を刺激する事だと思います」
「例えば?」
「ダンブル、ダンジョンギャンブルではお金ですよね。
スイーツダンジョンは女性冒険者に人気です」
「なるほど」
「これ以外で何か惹きつける物をドロップするようにすれば人気になるかと」
「人の持つ欲望を刺激する訳ですね?」
「そういう事です」
欲望か。
人間には3大欲望があったね。
え~と、なんだったっけ? 食欲・睡眠・性欲だったっけ?
違ったっけ? まぁいいや。そういう事にしておこう。
「じゃあ、食欲・睡眠・性欲の欲求を解消出来るダンジョンを目指すって事ですね」
「食欲はスイーツダンジョンで既にあります。
男性の場合は、そうですねぇ……お酒でしょうかね」
確かに。
島のダンジョンの9~10階で、嗜好品としてビールがドロップする。
それを目当てに潜ってたわ。
良い案かもしれないな。
「しかし、それでは本末転倒なのでは?」
「ん? キジマさん、どういう事?」
「そもそもダンジョンに冒険者を呼びたい理由は、『かん水』等のドロップ品を持って帰って欲しいから。
ドロップ品を変更してはダメじゃないかと」
「むっ、確かに!」
ラーメン屋が無くなってしまうじゃないか!
それだけは避けなくてはならない!
「違う階でドロップすれば良くないっスか?」
「その場合、お酒欲しさにその階を目指すでしょうね。
荷物になる低層階のドロップ品は捨てられるようになるわ」
「あ~、自分もそうだったっス。お金にならない物は捨ててたっス」
儲けたいし、お酒も欲しい。
そうなったら、かん水なんか無視して進むだろうなぁ。
「では、睡眠は?」
「睡眠なんてどうやるのよ……」
「え~、潜るとレイが速やかに寝かしてくれる」
「その後はモンスターに襲われるって?! 危険過ぎて誰も来ないわよ!」
「冗談冗談」
「……いや、悪くないぞ」
「えっ?! ヌマタ卿、冗談ですよ?」
「そうではなくてだな。
ダンジョンで安全な場所と言えば、次の階層に進む為の階段だ」
「そうですね」
「そこに宿屋を作るのはどうだ?」
「宿、ですか?」
「あぁ。ダンジョンでは常に緊張している。
だが、安全に、なおかつ快適に休憩が出来るとなれば、安心出来る」
あ~、2階毎にセーブポイントがあるような感じか。
「先程の欲求の話にもあったが、そこに娼館も作れば良いだろう」
「なるほど。性欲も解消される訳ですね。
綺麗どころを揃えてれば、やってくる男も多いでしょうね」
あれ? 女性陣がドン引きしてる。
と言うか、俺を白い目で見てる。
……意見を出したのはヌマタ卿ですよ?
俺はそれに乗って話しただけなのに!
…………確かにちょっと、ノリノリで話したけどさ。
「そんな低俗な話してないでさ、私の意見はどなったのよ!」
「えっ? あぁ、楽しいダンジョンだったっけ? で、ゲーム化するってんだろ?」
「そう。さっきのは冗談。
本当はゲームみたいに、負けても死なずにセーブポイントに戻されるってのはどう?って事」
「あぁ。それなら楽しめそうだ……」
「却下!!」
「うわぁ、ビックリした! 何だよタロー」
「そんな事をしたら次々に私の所に冒険者が来てしまうじゃないか!」
「良いじゃないか。相手すれば」
「めんどくさ、いや、それに私は倒せない。
そんなチートな存在の所に挑むのは無駄じゃないかな~と」
「今、めんどくさいって言ったよな?」
「いいえ?」
まぁ、確かに倒せないラスボスが出るゲームなんか、誰も買わないしプレイしないよな。
ところで、何でタローはチートとか知ってるんだろうか?
「でもさ、このダンジョンってドラゴンが居るって知られてる訳じゃない?
だったら、居るのかな~って存在じゃなく、もっと表に出た方が良いと思うの」
「そりゃね。歯型はあるけど、見た事ある人はほとんどいないだろうし」
「見たって人も、福田さんの仕事で空を飛んでるタローだけじゃない?」
「そうかも。ヘタクソな飛び方だったけどな」
「今は上手くなってる! 練習したもん!」
「したもん、とか言うな」
「まぁまぁ。タローも落ち着いて。
そ・こ・で! 芝居よ!!」
またナグラさんが変な事を言いだしたぞ。




