物価
「宣伝とは一体?」
「このダンジョンの宣伝です」
「えっと、もっと詳しく言ってもらえますか?」
「えっ? 全てを把握されているのでは無いのですか?」
「い、いや、知ってますけど、確認の為に詳しく言ってください」
「そういう事ですか、判りました」
全知全能じゃないんだから、知らないって。
コンピューターは把握してるだろうけど、あいつも情報を出さないんだよ。
あ~、某骨の人の気持ちが判った。超越者も大変ですね。
俺にもデミえもん下さい。
「まず、大森林が開放されました。
それに付け加えて、カジノの町でダンジョンを使ったギャンブルもあります」
「そうですね。それで?」
「冒険者達はそれらに興味を持ってしまい、この町のダンジョンに行かなくなったのです」
「は、はぁ。そうですか」
「実はこれ、大問題なんですよ!
この町の郷土料理と言えばラーメン。それを作る為の『かん水』はダンジョン産なんです!」
そう言えばそうだったな。
タローが封鎖した時も販売出来なくなってたもん。
「この町に限らず、特産品がダンジョンに頼ってる場所は、どこも困っています」
「特産品ですか?」
「ええ。良い塩が出るダンジョン、貴重な鉱石の取れるダンジョン、その他にも色々あります。
あぁ、薬の出るダンジョンは別です。あそこは冒険者ではなく、騎士が行きますから」
ふ~ん、薬のダンジョンってあるんだ。
で、騎士が行くって事は国営か。
まあ薬が供給されなくなったら国がヤバいからね。
安定供給の為にも国が主体となって、騎士が行くんだろう。
その方が価格も安定するしな。
「実は物価も徐々にですが、上昇しているのです。供給不足気味ですからね」
「国や教会には報告しなかったんですか?」
「ええ。戻ってくると思ってましたし。
それに一度に居なくなったのではなく、徐々に減っていったので……」
なるほどね~。
そりゃ確かに大変だわ。
……って、他人事みたいに考えてるけど、どっちも俺関係じゃないか!
丁度カンキジコンビが帰ってきたので、話を聞いてみる。
「おかえり。ちょっと聞きたいんだけど、ラーメンの値段って上がってた?」
「えっと、そうですね。少しでしたが値上がりしてたと思います。
と言っても5~10円くらいですけど」
少額だけど、繰り返したら結構な値上がりになるな。
ラーメン1杯1000円とかになったら食べようって気にならないわ。
うん、問題だ。
「そろそろ国や教会に行こうと思っていたところに、福田さん登場です!」
「あ~、そうですね」
「お願いです! 宣伝してください! 冒険者が来るようにしてください!」
「え~と、はい。何か考えます」
とりあえず現場を見てみない事には判らない。
ダンジョンに行ってみよう。
う~ん、観光地としては人が居るなぁ。
ドラゴンの歯型があるんだもん。タローの虫歯のやつだけどさ。
冒険者は……うん、確かに前に見た時よりも少ないかも。
中に入って居るのかな? 行ってみるか。
ダンジョンに入った瞬間、タローが現れた。
おい! 1階だぞ! いきなりラスボス登場って!
「福田さん、どうしたのですか? 普通に入り口から来るなんて!」
「普通に来ちゃいけないのかよ」
「いけませんね」
「何でだよ!」
「普通に入って来られたという事は、ダンジョン攻略ですよね?
徐々に自分に近づいてくる。この恐怖!! 地獄です。やめて下さい」
「……ヒドい言われようだ。
判ったよ、俺じゃなくてカンダさんやナグラさんが入るよ」
「一緒じゃないですか! 傷つけられる武器を持ってるんですよ?!
それに福田さんが運を使うんでしょう?! 確実に来て怪我させられるじゃないですか!!」
「……誰なら良いんだよ」
「そうですねぇ……ミミちゃんならOKです」
「意味ねぇ! それに今ミミちゃんはお前の足元で遊んでるじゃないか。
遊び相手が欲しいだけか?」
「違いますよ。でも、私を初見から怖がらない人は初めてなもので。
可愛がっても良いじゃないですか?」
まぁ、どこに行くにも付いてくるからね。
王様、四天王、果てには神様にも会ってる。
今更何を怖がるのだろうか。
ちなみに、ミミちゃんは何処に行っても人気者だ。
理由はタローと同じ。普通に接してくれるから、らしい。
「とにかく何の用ですか? 早く済まして帰って下さい」
「宣伝したい」
「…………はぁ?!」




